転生者の相棒〜転生者には常識がない!〜

くろこん

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ケイアポリス王国編

転生者の姫は覚悟する

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sideアル『ガルラ村』

 「なんか捕まえた~」
 「人を、か?」
「そうみてーだな」
 「アシュレイ、俺はもう突っ込むのに疲れた。村に戻って休むぞ。どうして風魔法で人を捕縛できるんだ!?」

 高台の上から久しぶりに降りてきたと思ったら、シルがなんでも無いようにそう言うから驚いた。

 オカマさんは寝込みかけている、事実寝込んだ。仕方ない、オカマさんと私は正直ギリギリ人(エルフ)の範疇だからな。なんだよ魔獣を大剣でミンチにする元冒険者とか、2歳で風魔法で台風起こせる奴とか。

 風魔法とは一体?

 見れば見る程ではあるが、この化け物達は酷すぎる。

 「てかよ、シル、いつの間に捕縛術なんて風を通して出来るようになったんだ?」

 師匠が、シルに向かって不思議そうに聞いてくる。

 そりゃそうだろう、シルフィールドの魔法は風魔法だ。風でできることと言えば戦闘では強烈なかまいたちを産み出して敵を切り裂いたり、強風で視界を塞ぐなどと言うのが関の山だ。

 文献で見た風魔法の情報すらそうなのだから、実際はもっと酷いのだろう。といつのが私の判断だ。

『アァ?ゲームじゃ風魔法は最強だぞ??』

 試しにそう聞いてみたところ、シルから返って来た返事がこれだった、実際規格外なので異論は存在しない。

 実際、どうやって人を捕まえたのかと言うと

「風で無理やりアルが害獣用に作った落とし穴に落とした」

 というのだから始末が悪い、というか、落とし穴を作ったのは害獣対策だ。

 害獣対策の罠とはどういうものか?できるだけ魔物に察知されないように丁寧に作られたそれは、穴の底に罠が多数張り巡らされている。

 ということはだ、 回収しに行くの私じゃん。

 さて、何人生き残ってるかな?

 













「全員王国からの刺客かよ、、、」

 全員王国からの刺客だった。

 アシュレイおじさんが1人1人ボコボコにして情報を聞き出した結果、普通に追っ手の兵士であることが発覚した。

「まぁ、この森に入ったらバカ息子の風魔法で落とし穴にぶち込まれて終わりだ。この村にこもってる限り負けることは無い」
「問題は、勝てないことですね。外を塞がれてしまっているのは拙いです、レミーア様もいずれは王都に向かわなくてはいけないことは理解しているそうですし」

 そう、この戦略は前提として勝ちは無いということだ、王都に行かねばならないが、シルに賊なのかそうでは無いかという違いは理解できない。

 今回の賊はどー考えても騎士風の格好をした一個小隊だった。だから問答無用で落とし穴にブチ込めたのだが、これがベテランの暗殺者だったらどうだろうか?

 シルの風魔法『台風の繭カゼノマユ

 知覚できない微風をできるだけ遠くまで飛ばし、風によって異常を探知する。範囲は探知魔法並み、弱点としてはシルの周辺にある台風の目では知覚が行えないことと、探知魔法ほどには相手の詳しい情報はわからないということだ。

 話を戻すと、そんな能力であるシルの台風の繭の警戒ラインをかいくぐり、レミーア様を殺す凄腕の暗殺者がいないとも限らない。世界は広いのだ。

「嬢ちゃんが、それについて計画の準備をしているらしい。受け身も性に合わないし、とっとと終わらせて消えなきゃいけないしな。」
「師匠、消えるつもりですか?」
「まぁそりゃそーだな、これが終わったら嬢ちゃんは俺を表舞台に引き戻しそうなもんだが、俺が望んでんのはアリアとの平穏な毎日だ。村のみんなにも迷惑をかけちまったし、どっかの国に移動するさ。」

 ある意味当然の話だが、師匠は最強だ。この年齢になってまでまだAランクモンスターと戦える実力を持っている。恐らくあと2.3年まともに冒険者を続けてたら普通にSランク冒険者になれていたのではないだろうか。

 だが、それでも師匠が望んでいるのは平穏な日々だ。そもそも野心があったならこんな田舎に引きこもって無いだらう。

「止めはしません、どちらにせよ今後のことを考えるのは終わった後にして下さい。」
「へいへい、お前とバカ息子はどうするのかな」

 ひらひらと手を振りながら、アシュレイはそう呟く

 私、私は、、、、


sideアル『ガルラ村・夜』

「以上です、細かい行動に関しては皆様に任せます。」
「これが最善の道なのか?」
「勿論ですアシュレイ、シル君のことも知れました。これが最善の道で間違い無いですとも。」

 えっへん、と胸を張って言うレミーア様の前で護衛の冒険者達が続いて頷く。

 明日、王都へと出発する。

メンバーはガルラ村からは師匠、父とシルフィールド、そして私だ。あとはレミーア様と冒険者達か、総勢30名にも満たない数で王都へと行く。

 作戦内容も伝えられた、できるだけ王都を破壊しないように、民衆を傷つけないように。

 ーー標的のみを殺す。

 彼女が考えられる全ての案の中で、最も最善な道をとった。それに文句を言う人間は誰もいない。

 だが姫自身は、その結論に納得していないようだった。

「これで作戦に関する事柄は終了です、最後に皆様。今回の戦闘は、報酬があるとは言え全て私たち王族全体の失態です。貴方達の命を危険に晒すのは、私の責任なのです。」
「ひ、レミーア様!!」
「事実です、オカマ。」
「何を馬鹿なことを言ってやがる、反乱が起きたのは王の責任だ、王が腐ってるなら家臣も腐ってる。家臣が腐ってるなら国が腐ってるってこった。責任は全て王のせいだ、それは歴史が証明してるわ。」

 唐突に、謝罪を始めたレミーア様に、異論を唱えたのは師匠だった。

 誰もが驚いた、王族が頭を下げるなどあってはならないことだ。それにも驚いたが、それを叱りつける師匠にも驚いた。
「いいか小娘、俺がお前に協力するのはお前が俺を脅したからだ。バカ息子は冒険者になりてぇのに俺に手を貸してくれている。アルゴスはお前に何か含むものがあって参加してるが、この村でこんな王族のゴタゴタに手を貸そうなんて思ってた奴はいねーんだよ。お前が、お前が押し付けたことだ。」

 アルゴスとは、私の父のことだ。

「はい、その通りです。ですが」
「ですがじゃねぇ、お前が俺達を巻き込んだ。それは、それだけは事実だ。反乱が起きた、貴族は頼りになりません。だから知り合いで力を貸してくれそうな俺を頼んだ。村を人質にしてな。」

 手厳しい

 そうとしかいいようのないような事実に、無礼と咎める人もいない。オカマさんでさえ下を向いて俯いている。それが正論だからだ。

 「だが、、そりゃ間違っちゃいねぇ。」
「へ?」

 ぽかん、とした声でレミーア様が答える、泣きそうになっていた顔が少し驚きの表情へと変化した。

 師匠の言葉は続く。

「あんたはまだガキだ、光姫?王族?そんなの関係無いないね。俺の息子を見ろ、ご存知の通り魔法を除けばタダのバカだ。だからな、、、、大人に頼れ、ふんぞり返って指示でも出してろ。お前はそれでいい」

 決して許したのでは無かった、事実師匠は巻き込まれた側の人間だ。冒険者アシュレイとしての師匠は既に死んでいる、今こうして巻き込まれているのは逃れられない俗世のしがらみと言っても過言では無い。

 それに対して師匠は言及することは無かった、幼い子供と自分に言い聞かせて。

 だが、それでもレミーア様は師匠や、村のみんなに謝罪をした。だからこそ師匠はレミーア様に対して厳しくあたったのだ。

「っ!はい、当日はお任せ下さい。この国最期の王族として、できうる限りのことをさせて頂きます。」

 これは、それと同時に転生者として、未来を見てきた彼女に、王族としての自覚が出てきた瞬間であった。血塗られた道かも知れない、外道となるかも知れない。

 そんな彼女自身を彼女は、どこか俯瞰した目で見ていた。王となるかも知れない自分を、どこか達観した、まるでゲームのキャラクターを見ているような目で見ていたのだ。

 それが、今ようやく、溶けた。

「アシュレイ、、ありがとう。」
「へーへーどういたしまして。報酬増額で頼むわ。」
「これ以上絞り取る気なのか親父!?アンタいくらもらう気なんだよ?」
「馬鹿野郎!金はいくらあっても足りねぇんだよ!!」

 その言葉は、聞きたく無かったかな。師匠






アルフィリオン=ファラサールの精神状態

ふつう

(この前の肥溜めでちょっと笑ってる)
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