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第一話
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強烈な轟音が響き渡り、鳥たちが一斉に飛び立った。
ルロ村の小さな家々は、まるで藁でできているかのように揺れ、人々の悲鳴が空にこだました。
村人たちは地面に倒れ、抱き合う者、泣き崩れる者、そして多くが命乞いをしながら天に祈った。
誰もが西の空を見つめた。そこには、太陽を覆い隠すほどの巨大な影が、地平線に重なるようにして存在していた。
影の正体は――
ルロ村を囲む美しい花畑の中央で、神が如き咆哮を放った。
咆哮の勢いは台風のような風を生み、木々を揺らし、花びらを吹き飛ばし、大地を巻き上げ、石同士を激しくぶつけ合った。
紫色の光が尾を引くように空を覆い、竜巻のように塵が舞い散った。
その存在は、ゆっくりと翼をたたみ、村の正面にある小さな丘の上に身を横たえた。
それは黒き竜——人々が『神獣』と畏れる存在だった
人々からは畏れ敬われ、同時に深く恐れられる存在。
五日前、突如として現れたその竜に、前兆など一切なかった。
理由もなく現れたその存在に、ルロ村が未だに残っているというのは――
奇跡以外の何物でもなかった。
なぜ?
それが村人たちの抱える最大の疑問だった。
その竜は、ただ一息でこの小さな村を消し去るほどの力を持っていた。
誰もがそれを理解していた。
その咆哮が地震のように地面を揺らすたびに、それを痛感した。
それなのに、何も起こらない。
気まぐれなのか?
まるで人間の無力さを嘲笑うかのように、神と死神の役を同時に演じ、命を手のひらで弄ぶようだった。
村人一人ひとりの命を――
いや、ルロ村だけではない、この大陸全土の命すら、その爪の一振りで消せる力を持っていた。
その力をどう使うかを判断できる知恵すら、あの竜にはあった。
人間など、価値もない虫けら。
助ける価値など微塵もない。
せいぜい遊び道具になる程度。
それが、あの竜の考えだった。
それが、竜という存在だった。
――しかし、その日は違った。
恐怖で震える村の人々の心に、小さな希望の炎が灯っていた。
古来、竜は絶対的な存在だった。
触れることも、抗うこともできない王。
だが――時代は変わった。
なぜか?
答えは簡単だった。
魔法は、竜だけのものではない。
それこそが、村人の希望。
たとえ一瞬の灯火でも、その可能性に賭けた。
彼らは救援を求め、そしてその願いは届いた。
彼女が来たのだ。
「うわー、でっか」
ふわりと花畑に現れた一人の少女。
その足取りは静かで軽やか。
白銀の髪が風に揺れ、恐怖ではなく、ただ眠そうな表情を浮かべていた。
尖った耳をくすぐるように掻きながら、辺りの混乱をぼんやりと見回す。
「ずいぶん派手にやったなぁ…」
赤くなった鼻をすすりながらつぶやいた。
「はぁ、ハンカチ持ってくるんだった」
花粉と土埃が混じった空気が、針のように鼻を刺激する。
そう、彼女は珍しいことに――花粉症のエルフだった。
「へっくしゅっ!…うぅ、最悪」
くしゃみのあと、また鼻をすする。
それでも少女は立ち止まらず、丘の上にいる莫大な魔力の塊へ向かって歩を進めた。
「これが神獣ランクの魔物ってやつかぁ…ふーん」
魔法の杖を小脇に抱え、腕を組みながら立ち止まる。
「本で読んだときはすごそうだったけど、うーん…そんなでもないな」
その気配に気づいた竜は、ゆっくりと目を開き、口を開いた。
「エルフ、か。内に圧縮された魔力の量…なかなかのものだな」
その巨体を持ち上げ、花畑に影を落としながら続けた。
「どれほど鍛えたら、そこまでになる?」
その声は重く、威圧的で、まるで目の前の少女を虫けら扱いするような口ぶりだった。
「わっ、びっくりした…いきなり話しかけないでよ」
少女は無表情のまま欠伸を一つ。
「でも、しゃべれるのね。なら話が早い」
エルフの少女――まだ百年にも満たぬ若さの彼女は、魔法の杖を竜の頭へ向けて構えた。
「この村からどいてくれる? なんか迷惑かけてるみたいで、冒険者ギルドに依頼が来たの」
「…冒険者、か」
竜はくぐもった笑いを漏らした。
かつて「冒険者ギルド」なる組織の話を聞いたことがあったが、それはまだ概念にすぎず、竜が食らった人間たちの記憶に過ぎなかった。
今のギルドとは別物。
よって、ギルドが人を派遣したという重大さが、竜には理解できていなかった。
なぜなら、自らの力――巨体と魔力、そして圧倒的な暴力性を過信していたから。
彼にとって、目の前の少女など、蟻か石ころ程度。脅威にもならぬ存在。
だから、笑った。
「報告によれば、ここ一週間ほど咆哮で威嚇したり、地面を揺らしたりしてるらしいけど…まだ誰も殺してないんだよね? 何が目的?」
少女は興味なさげに尋ねた。まるでよくある話のように。
「楽しいからだ」
竜は答えた。
「お前たち、下等な存在が恐れに震える姿を見るのがたまらなく面白い。命の危機、無力感、手足の震え――そういった負の感情が空気中のマナに混ざると、最高の前菜になるのだ」
「…つまり、ただの嫌がらせね」
少女は眠たげな目を見開き、眉をひそめた。
竜を睨むその目に、ようやく気配が宿る。
「アハハハハハッ!」
竜は翼を広げ、巨大な牙を見せながら、舌をねぶる
ように動かした。
少女はため息をひとつ。
杖を掲げて宣言した。
「仕方ないなぁ、めんどくさいけど…力ずくで追い払うか…へっくしゅっ!」
また鼻をすする。
あまりに妙なその態度に、竜は面白がって言った。
「貴様、なかなか面白いエルフだな。名を覚えてやろう」
少女は鬱陶しそうに鼻をすすりながら答えた。
「Sランク冒険者、メイア」
簡潔に、淡々と。
それに応じて、竜も名乗ろうとした。
「我が名は――」
だが、その言葉を遮るようにメイヤが尋ねた。
「で、帰るの? トカゲくん?」
次の瞬間だった。
無数のささやき声が響き、エルフが立っていた場所を、巨大な火球が焼き払った――
その獣は、ほんの少しの慈悲も見せずに襲いかかり、火と煙に包まれたクレーターをじっと見つめながら、誇らしげに羽ばたいた。
──自分の気分ひとつで、誰の命だって奪える。そう思った。
しかし――
「ちょっと危なかったんじゃない?」
ぼんやりとした声が聞こえた。
火災の広がる真上で静止していた竜が、首を右に向ける。その目が見開かれ、翼を広げて威嚇するように羽ばたいた。
「避けたか」
岩の上に、血ひとつついていない真っ白な服を着た少女が立っていた。
エルフのメイアは胸まで伸びた髪を払って、再び杖を構え、竜に向けた。
「汚れるとこだったんだけど、トカゲくん」
あらゆる者を震え上がらせる威容を持つ竜に対して、彼女はまるで動じる様子もない。それどころか、騒がしい状況の中で文句を言う余裕すらあった。
竜にとって、それは前代未聞の出来事だった。
初めて、軽く見られたのだ。
その事実に、竜は苛立った。
「エルフよ……己の幸運を呪うがいい」
再び、囁くような声の合唱が空気を震わせた。あらゆる精霊たちが呪文を唱え、竜の口の中に複雑な魔法陣が浮かび上がる。
「消え失せろォ!」
竜が初めて怒声を上げた。全身の怒りを込めた、まさに地獄のごとき一撃だった。
だが、メイアの表情は変わらない。
ふわりと足元が離れ、軽い浮遊魔法で宙に浮かぶ。
当然、攻撃は空を切った。
だがその一撃は、すべてを飲み込むほどの破壊力だった。遠くの山が一つ吹き飛び、空が赤く染まった。
メイアは少し距離を取って離れる。
「逃げ足の早いエルフめ……」
竜は上昇する。メヤへの苛立ちから、ついには丸呑
みにしてやろうと追いかける。
メイアは素早かったが、空は竜のホーム。
支配力に、圧倒的な差があった。
まるで機関銃のように、竜の口から火球が連射される。
この世界の住人は呪文の詠唱が必要だが、竜は違う。精霊の声を借りることで、その詠唱時間を限りなくゼロにできる。
これが、竜――特に古の竜が恐れられる大きな理由のひとつだ。
「うわっ……」
火球がメイアの頬をかすめる。熱と痛みで左目を閉じ、前髪が視界を邪魔して動きが鈍る。
猛禽のように、メイアは低くたれこめる雲に飛び込み、距離を取る。
竜は両翼でブレーキをかけ、必死に目を走らせる。
どこだ?
姿を見失った。
――バン!
何かが顔面で炸裂した。
激痛が鼻面に走る。
竜は悲鳴を上げ、右目が見えなくなったことに気づく。
血の匂いが混ざる。
不覚だった。右目が、潰されていた。
「クソガキがあああああああッ!!」
雲の中から、白い光がにじみ出す。夕陽に照らされ、風が吹き荒れ、竜の鱗がざわめく。
本能が告げる。
危険だ、と。
竜はその光の方を睨んだ。
「まぁ……」
どこか気だるげな声が耳に届く。
雲が勢いよく裂けて、空に円を描く。
「……今度は、こっちの番かな」
白い光に包まれたメイアは、高く杖を掲げて微笑む。
そして、その腕を振り下ろした。
数十……いや、数百の白い光球が冬の雹のように降り注ぐ。
「なっ……!?」
バン! バン! バン!!
一発、二発、三発、四発……数える意味がない。
巨体であるがゆえ、避けることもままならない。
竜はバランスを崩し、痛みと衝撃で地面へと叩き落とされた。
鋭く大地を引っ掻き、内臓こそ守ったが、背中の鱗が裂けていた。
メイアは無駄な動きをせず、地上近くまで降下する。地面には立たず、ふわりと浮いたまま、挑発的にじっと見つめていた。
「もう終わり?」
竜は唸りながら睨みつけ、牙を噛みしめ、全身に紫電をまとい始める。
それに対して、メイアは手で「おいで」と煽る仕草をする。
それが、決定打だった。
「身の程を思い知らせてやるぞ、クソエルフ!!!」
光の速度に勝るものはない。
それは、事実だった。
一瞬。まばたきする間もない。雷光が枝のように四方に広がり、メイアを飲み込む。
岩が砕け、風が暴れ回る。
夕焼け色だった空が、雷の紫に染まる夜へと変貌する。
雷、雷、また雷。止むことなく放たれる。
竜は全力で魔力を流し続けた。
その姿に、勝利を確信していた。
やっと、あの小娘を叩き潰せたのだと。
そう思った、だが――
「まぶし……」
メイアは手で目を覆いながら、ぼそりとつぶやく。
「ば、ばかな……!呪文の詠唱なんてしている暇はなかったはず!」
竜が叫ぶ。
だがそこにいたメイアの体は、白い光の障壁に守られていた。
怒りに任せた雷撃の嵐は、まったく届いていなかった。
「……気づいてないんだね?」
どこか楽しげに、メイアが言った。
翼を持つ爬虫類は、エルフの瞳を見つめた。彼女は
どこか尊大な笑みを浮かべ、すぐに口元をへの字に曲げ、眉をひそめた。
「詠唱なんてしなくても、魔法は使えるのよ」
何の感情も込められていない、ただの一言。それだけで、竜の背筋に冷たいものが走った。
「詠唱…しなくても…だと…?」
魔法を使うには、詠唱が絶対に必要だった。詠唱なしでは魔法は成立しない。神話級の魔獣ですら例外ではない、不変のルール。そんな当たり前を――覆すエルフが、現れた?
あり得ない。そんなの、あるわけない。存在してはならない。
鱗に覆われた巨体が、戦いを一刻も早く終わらせたくなるのを感じた。認めざるを得なかった。
――この少女、自分と同等の力を持っている。
だが、竜は思い出した。そもそもこのエルフが現れた理由を。
勝機は、まだある。
竜は咆哮をやめ、踵を返した。
低空を弾丸のように飛び、村――ルロを目指して一直線に突っ込む!
「チッ…」
メイアは舌打ちして、すぐさま追いかけた。
その異形が村の上空に広がったとき、村人たちは恐怖に凍りついた。
竜は、その姿を見て快感を得た。――恐れられる、
それが力だ。そうでなくてはならない。
だが、その秩序を壊す“何か”がいた。
それが、鬱陶しかった。
「人間どもよ…」巨大な声が村中に響き渡る。「貴様らが不幸を呪うなら、その原因である…身の程知らずのエルフを恨むがいい。そして――死ね」
そして、空に地獄が現れた。
凄まじい魔力が一点に集まり、太陽のように熱い火球が形成される。
それは膨張し、燃え盛り、やがて――
眩しすぎる光に村人たちは目を覆い、熱風から身を守ろうとした。
泣いても涙が蒸発する。これは、本物の地獄。
そして、沈黙の一秒。
その球体は、村へと放たれた。
誰もが終わりを感じた。焼き尽くされ、全てが無に
帰る、終焉。
竜の勝利か?
――違う。
「ったく…余計な仕事させやがって!」
メイアが光をまといながら村を駆け抜け、地獄の前
に立ちはだかる。
両手で杖を握りしめ、村を包むようにバリアを展開した。時間はなかった。完璧には程遠い、それでも
全力で張った。
竜の魔炎がバリアに激突。
周囲の森は吹き飛び、山が砕けた。
空は狂ったように色を変え、魔力の炎が燃え広がる。燃料をぶちまけた森林火災のように。
まるで世界の終わり。――いや、この小さな村にとっては、本当に“世界の終わり”だった。
「くっ…!」
メイアは歯を食いしばり、眉をひそめる。
前に突き出した杖を握る手が悲鳴を上げる。髪は荒れ狂い、頬は焼かれ、服も一部が燃え始めていた。
「クアッハッハッハッ!!」
竜は狂気の笑みを浮かべた。
「たとえ無詠唱で魔法を使えようと、あれは防げまい! 貴様はここで――死ぬのだァ!!」
竜は勝利を確信した。
そして、世界が弾けた。
黒煙が視界を覆い、音も消えた。
炎は燃え、鳥は鳴かず、風も止まった。
勝った。そう思った。
――だが、その身体が軋んだ。
「な、なんだこの魔力はッ!?!?」
恐怖。
その感情を、竜は初めて知った。鱗が剥がれ落ちるような痛み、空中にとどまるのもやっとなほどの圧。
感覚がおかしい? いや、これは――
「はぁ~あ…集中切れちゃったじゃん…」
こんな魔力…
「もう、手加減なんてできないよ…」
黒煙の中から、あくびをしながらエルフが現れた。
あり得ない魔力。理不尽。まるで――
――神。
竜は、苦笑するしかなかった。
「最初から…手加減してたってのか…」
彼の目に映ったのは、メイアの頭上に浮かぶ、白く輝く巨大な球体。
それは、さっき竜が放った魔炎と――まったく同じ構造だった。
「消えなよ、トカゲ」
そして、沈黙だけが残った。
竜は完全に消え去った。音も、痕跡も、何一つ残さず。
勝者は、メイア。
ようやく力を抜いた彼女は、空からふわりと降り立つ。
辿り着いたのは、まだ草花の残る村の入り口。
「ふぅ、いい運動だった」
深く息をついた瞬間、彼女の周囲が一変した。
村人たちが号泣しながら彼女に群がり、感謝と賞賛の言葉を浴びせた。
「うわ、ちょ、そんなに揺らさないでよぉ…!」
小柄な体が何度も持ち上げられ、歓声が鳴り止まなかった。
風が花を揺らす中、メイアの鼻がむずむずした。
「へっくしゅん!!」
その瞬間、魔力が暴走。
凄まじい突風となり、ルロの家々を吹き飛ばした。
木材、わら、石、土、動物たちまでもが、空へと舞った。
一瞬で村は、瓦礫の平原と化した。
村人たちは呆然と立ち尽くす。
その一方、メイアは――
滝のように流れる鼻水をすする。
村の惨状など気にもせず、ぼーっとしていた彼女は、
「…あっ」
ぽかんと口を開けて、ぽつりと言った。
「やっぱ、ハンカチ持ってくるべきだったなぁ…」
ルロ村の小さな家々は、まるで藁でできているかのように揺れ、人々の悲鳴が空にこだました。
村人たちは地面に倒れ、抱き合う者、泣き崩れる者、そして多くが命乞いをしながら天に祈った。
誰もが西の空を見つめた。そこには、太陽を覆い隠すほどの巨大な影が、地平線に重なるようにして存在していた。
影の正体は――
ルロ村を囲む美しい花畑の中央で、神が如き咆哮を放った。
咆哮の勢いは台風のような風を生み、木々を揺らし、花びらを吹き飛ばし、大地を巻き上げ、石同士を激しくぶつけ合った。
紫色の光が尾を引くように空を覆い、竜巻のように塵が舞い散った。
その存在は、ゆっくりと翼をたたみ、村の正面にある小さな丘の上に身を横たえた。
それは黒き竜——人々が『神獣』と畏れる存在だった
人々からは畏れ敬われ、同時に深く恐れられる存在。
五日前、突如として現れたその竜に、前兆など一切なかった。
理由もなく現れたその存在に、ルロ村が未だに残っているというのは――
奇跡以外の何物でもなかった。
なぜ?
それが村人たちの抱える最大の疑問だった。
その竜は、ただ一息でこの小さな村を消し去るほどの力を持っていた。
誰もがそれを理解していた。
その咆哮が地震のように地面を揺らすたびに、それを痛感した。
それなのに、何も起こらない。
気まぐれなのか?
まるで人間の無力さを嘲笑うかのように、神と死神の役を同時に演じ、命を手のひらで弄ぶようだった。
村人一人ひとりの命を――
いや、ルロ村だけではない、この大陸全土の命すら、その爪の一振りで消せる力を持っていた。
その力をどう使うかを判断できる知恵すら、あの竜にはあった。
人間など、価値もない虫けら。
助ける価値など微塵もない。
せいぜい遊び道具になる程度。
それが、あの竜の考えだった。
それが、竜という存在だった。
――しかし、その日は違った。
恐怖で震える村の人々の心に、小さな希望の炎が灯っていた。
古来、竜は絶対的な存在だった。
触れることも、抗うこともできない王。
だが――時代は変わった。
なぜか?
答えは簡単だった。
魔法は、竜だけのものではない。
それこそが、村人の希望。
たとえ一瞬の灯火でも、その可能性に賭けた。
彼らは救援を求め、そしてその願いは届いた。
彼女が来たのだ。
「うわー、でっか」
ふわりと花畑に現れた一人の少女。
その足取りは静かで軽やか。
白銀の髪が風に揺れ、恐怖ではなく、ただ眠そうな表情を浮かべていた。
尖った耳をくすぐるように掻きながら、辺りの混乱をぼんやりと見回す。
「ずいぶん派手にやったなぁ…」
赤くなった鼻をすすりながらつぶやいた。
「はぁ、ハンカチ持ってくるんだった」
花粉と土埃が混じった空気が、針のように鼻を刺激する。
そう、彼女は珍しいことに――花粉症のエルフだった。
「へっくしゅっ!…うぅ、最悪」
くしゃみのあと、また鼻をすする。
それでも少女は立ち止まらず、丘の上にいる莫大な魔力の塊へ向かって歩を進めた。
「これが神獣ランクの魔物ってやつかぁ…ふーん」
魔法の杖を小脇に抱え、腕を組みながら立ち止まる。
「本で読んだときはすごそうだったけど、うーん…そんなでもないな」
その気配に気づいた竜は、ゆっくりと目を開き、口を開いた。
「エルフ、か。内に圧縮された魔力の量…なかなかのものだな」
その巨体を持ち上げ、花畑に影を落としながら続けた。
「どれほど鍛えたら、そこまでになる?」
その声は重く、威圧的で、まるで目の前の少女を虫けら扱いするような口ぶりだった。
「わっ、びっくりした…いきなり話しかけないでよ」
少女は無表情のまま欠伸を一つ。
「でも、しゃべれるのね。なら話が早い」
エルフの少女――まだ百年にも満たぬ若さの彼女は、魔法の杖を竜の頭へ向けて構えた。
「この村からどいてくれる? なんか迷惑かけてるみたいで、冒険者ギルドに依頼が来たの」
「…冒険者、か」
竜はくぐもった笑いを漏らした。
かつて「冒険者ギルド」なる組織の話を聞いたことがあったが、それはまだ概念にすぎず、竜が食らった人間たちの記憶に過ぎなかった。
今のギルドとは別物。
よって、ギルドが人を派遣したという重大さが、竜には理解できていなかった。
なぜなら、自らの力――巨体と魔力、そして圧倒的な暴力性を過信していたから。
彼にとって、目の前の少女など、蟻か石ころ程度。脅威にもならぬ存在。
だから、笑った。
「報告によれば、ここ一週間ほど咆哮で威嚇したり、地面を揺らしたりしてるらしいけど…まだ誰も殺してないんだよね? 何が目的?」
少女は興味なさげに尋ねた。まるでよくある話のように。
「楽しいからだ」
竜は答えた。
「お前たち、下等な存在が恐れに震える姿を見るのがたまらなく面白い。命の危機、無力感、手足の震え――そういった負の感情が空気中のマナに混ざると、最高の前菜になるのだ」
「…つまり、ただの嫌がらせね」
少女は眠たげな目を見開き、眉をひそめた。
竜を睨むその目に、ようやく気配が宿る。
「アハハハハハッ!」
竜は翼を広げ、巨大な牙を見せながら、舌をねぶる
ように動かした。
少女はため息をひとつ。
杖を掲げて宣言した。
「仕方ないなぁ、めんどくさいけど…力ずくで追い払うか…へっくしゅっ!」
また鼻をすする。
あまりに妙なその態度に、竜は面白がって言った。
「貴様、なかなか面白いエルフだな。名を覚えてやろう」
少女は鬱陶しそうに鼻をすすりながら答えた。
「Sランク冒険者、メイア」
簡潔に、淡々と。
それに応じて、竜も名乗ろうとした。
「我が名は――」
だが、その言葉を遮るようにメイヤが尋ねた。
「で、帰るの? トカゲくん?」
次の瞬間だった。
無数のささやき声が響き、エルフが立っていた場所を、巨大な火球が焼き払った――
その獣は、ほんの少しの慈悲も見せずに襲いかかり、火と煙に包まれたクレーターをじっと見つめながら、誇らしげに羽ばたいた。
──自分の気分ひとつで、誰の命だって奪える。そう思った。
しかし――
「ちょっと危なかったんじゃない?」
ぼんやりとした声が聞こえた。
火災の広がる真上で静止していた竜が、首を右に向ける。その目が見開かれ、翼を広げて威嚇するように羽ばたいた。
「避けたか」
岩の上に、血ひとつついていない真っ白な服を着た少女が立っていた。
エルフのメイアは胸まで伸びた髪を払って、再び杖を構え、竜に向けた。
「汚れるとこだったんだけど、トカゲくん」
あらゆる者を震え上がらせる威容を持つ竜に対して、彼女はまるで動じる様子もない。それどころか、騒がしい状況の中で文句を言う余裕すらあった。
竜にとって、それは前代未聞の出来事だった。
初めて、軽く見られたのだ。
その事実に、竜は苛立った。
「エルフよ……己の幸運を呪うがいい」
再び、囁くような声の合唱が空気を震わせた。あらゆる精霊たちが呪文を唱え、竜の口の中に複雑な魔法陣が浮かび上がる。
「消え失せろォ!」
竜が初めて怒声を上げた。全身の怒りを込めた、まさに地獄のごとき一撃だった。
だが、メイアの表情は変わらない。
ふわりと足元が離れ、軽い浮遊魔法で宙に浮かぶ。
当然、攻撃は空を切った。
だがその一撃は、すべてを飲み込むほどの破壊力だった。遠くの山が一つ吹き飛び、空が赤く染まった。
メイアは少し距離を取って離れる。
「逃げ足の早いエルフめ……」
竜は上昇する。メヤへの苛立ちから、ついには丸呑
みにしてやろうと追いかける。
メイアは素早かったが、空は竜のホーム。
支配力に、圧倒的な差があった。
まるで機関銃のように、竜の口から火球が連射される。
この世界の住人は呪文の詠唱が必要だが、竜は違う。精霊の声を借りることで、その詠唱時間を限りなくゼロにできる。
これが、竜――特に古の竜が恐れられる大きな理由のひとつだ。
「うわっ……」
火球がメイアの頬をかすめる。熱と痛みで左目を閉じ、前髪が視界を邪魔して動きが鈍る。
猛禽のように、メイアは低くたれこめる雲に飛び込み、距離を取る。
竜は両翼でブレーキをかけ、必死に目を走らせる。
どこだ?
姿を見失った。
――バン!
何かが顔面で炸裂した。
激痛が鼻面に走る。
竜は悲鳴を上げ、右目が見えなくなったことに気づく。
血の匂いが混ざる。
不覚だった。右目が、潰されていた。
「クソガキがあああああああッ!!」
雲の中から、白い光がにじみ出す。夕陽に照らされ、風が吹き荒れ、竜の鱗がざわめく。
本能が告げる。
危険だ、と。
竜はその光の方を睨んだ。
「まぁ……」
どこか気だるげな声が耳に届く。
雲が勢いよく裂けて、空に円を描く。
「……今度は、こっちの番かな」
白い光に包まれたメイアは、高く杖を掲げて微笑む。
そして、その腕を振り下ろした。
数十……いや、数百の白い光球が冬の雹のように降り注ぐ。
「なっ……!?」
バン! バン! バン!!
一発、二発、三発、四発……数える意味がない。
巨体であるがゆえ、避けることもままならない。
竜はバランスを崩し、痛みと衝撃で地面へと叩き落とされた。
鋭く大地を引っ掻き、内臓こそ守ったが、背中の鱗が裂けていた。
メイアは無駄な動きをせず、地上近くまで降下する。地面には立たず、ふわりと浮いたまま、挑発的にじっと見つめていた。
「もう終わり?」
竜は唸りながら睨みつけ、牙を噛みしめ、全身に紫電をまとい始める。
それに対して、メイアは手で「おいで」と煽る仕草をする。
それが、決定打だった。
「身の程を思い知らせてやるぞ、クソエルフ!!!」
光の速度に勝るものはない。
それは、事実だった。
一瞬。まばたきする間もない。雷光が枝のように四方に広がり、メイアを飲み込む。
岩が砕け、風が暴れ回る。
夕焼け色だった空が、雷の紫に染まる夜へと変貌する。
雷、雷、また雷。止むことなく放たれる。
竜は全力で魔力を流し続けた。
その姿に、勝利を確信していた。
やっと、あの小娘を叩き潰せたのだと。
そう思った、だが――
「まぶし……」
メイアは手で目を覆いながら、ぼそりとつぶやく。
「ば、ばかな……!呪文の詠唱なんてしている暇はなかったはず!」
竜が叫ぶ。
だがそこにいたメイアの体は、白い光の障壁に守られていた。
怒りに任せた雷撃の嵐は、まったく届いていなかった。
「……気づいてないんだね?」
どこか楽しげに、メイアが言った。
翼を持つ爬虫類は、エルフの瞳を見つめた。彼女は
どこか尊大な笑みを浮かべ、すぐに口元をへの字に曲げ、眉をひそめた。
「詠唱なんてしなくても、魔法は使えるのよ」
何の感情も込められていない、ただの一言。それだけで、竜の背筋に冷たいものが走った。
「詠唱…しなくても…だと…?」
魔法を使うには、詠唱が絶対に必要だった。詠唱なしでは魔法は成立しない。神話級の魔獣ですら例外ではない、不変のルール。そんな当たり前を――覆すエルフが、現れた?
あり得ない。そんなの、あるわけない。存在してはならない。
鱗に覆われた巨体が、戦いを一刻も早く終わらせたくなるのを感じた。認めざるを得なかった。
――この少女、自分と同等の力を持っている。
だが、竜は思い出した。そもそもこのエルフが現れた理由を。
勝機は、まだある。
竜は咆哮をやめ、踵を返した。
低空を弾丸のように飛び、村――ルロを目指して一直線に突っ込む!
「チッ…」
メイアは舌打ちして、すぐさま追いかけた。
その異形が村の上空に広がったとき、村人たちは恐怖に凍りついた。
竜は、その姿を見て快感を得た。――恐れられる、
それが力だ。そうでなくてはならない。
だが、その秩序を壊す“何か”がいた。
それが、鬱陶しかった。
「人間どもよ…」巨大な声が村中に響き渡る。「貴様らが不幸を呪うなら、その原因である…身の程知らずのエルフを恨むがいい。そして――死ね」
そして、空に地獄が現れた。
凄まじい魔力が一点に集まり、太陽のように熱い火球が形成される。
それは膨張し、燃え盛り、やがて――
眩しすぎる光に村人たちは目を覆い、熱風から身を守ろうとした。
泣いても涙が蒸発する。これは、本物の地獄。
そして、沈黙の一秒。
その球体は、村へと放たれた。
誰もが終わりを感じた。焼き尽くされ、全てが無に
帰る、終焉。
竜の勝利か?
――違う。
「ったく…余計な仕事させやがって!」
メイアが光をまといながら村を駆け抜け、地獄の前
に立ちはだかる。
両手で杖を握りしめ、村を包むようにバリアを展開した。時間はなかった。完璧には程遠い、それでも
全力で張った。
竜の魔炎がバリアに激突。
周囲の森は吹き飛び、山が砕けた。
空は狂ったように色を変え、魔力の炎が燃え広がる。燃料をぶちまけた森林火災のように。
まるで世界の終わり。――いや、この小さな村にとっては、本当に“世界の終わり”だった。
「くっ…!」
メイアは歯を食いしばり、眉をひそめる。
前に突き出した杖を握る手が悲鳴を上げる。髪は荒れ狂い、頬は焼かれ、服も一部が燃え始めていた。
「クアッハッハッハッ!!」
竜は狂気の笑みを浮かべた。
「たとえ無詠唱で魔法を使えようと、あれは防げまい! 貴様はここで――死ぬのだァ!!」
竜は勝利を確信した。
そして、世界が弾けた。
黒煙が視界を覆い、音も消えた。
炎は燃え、鳥は鳴かず、風も止まった。
勝った。そう思った。
――だが、その身体が軋んだ。
「な、なんだこの魔力はッ!?!?」
恐怖。
その感情を、竜は初めて知った。鱗が剥がれ落ちるような痛み、空中にとどまるのもやっとなほどの圧。
感覚がおかしい? いや、これは――
「はぁ~あ…集中切れちゃったじゃん…」
こんな魔力…
「もう、手加減なんてできないよ…」
黒煙の中から、あくびをしながらエルフが現れた。
あり得ない魔力。理不尽。まるで――
――神。
竜は、苦笑するしかなかった。
「最初から…手加減してたってのか…」
彼の目に映ったのは、メイアの頭上に浮かぶ、白く輝く巨大な球体。
それは、さっき竜が放った魔炎と――まったく同じ構造だった。
「消えなよ、トカゲ」
そして、沈黙だけが残った。
竜は完全に消え去った。音も、痕跡も、何一つ残さず。
勝者は、メイア。
ようやく力を抜いた彼女は、空からふわりと降り立つ。
辿り着いたのは、まだ草花の残る村の入り口。
「ふぅ、いい運動だった」
深く息をついた瞬間、彼女の周囲が一変した。
村人たちが号泣しながら彼女に群がり、感謝と賞賛の言葉を浴びせた。
「うわ、ちょ、そんなに揺らさないでよぉ…!」
小柄な体が何度も持ち上げられ、歓声が鳴り止まなかった。
風が花を揺らす中、メイアの鼻がむずむずした。
「へっくしゅん!!」
その瞬間、魔力が暴走。
凄まじい突風となり、ルロの家々を吹き飛ばした。
木材、わら、石、土、動物たちまでもが、空へと舞った。
一瞬で村は、瓦礫の平原と化した。
村人たちは呆然と立ち尽くす。
その一方、メイアは――
滝のように流れる鼻水をすする。
村の惨状など気にもせず、ぼーっとしていた彼女は、
「…あっ」
ぽかんと口を開けて、ぽつりと言った。
「やっぱ、ハンカチ持ってくるべきだったなぁ…」
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