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5話 現場急行
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「はっ! これは魔術の気配!」
朝食中、N.O.は変な事を言い出した。もはやいつもの事になりつつあるのだが、今回のは今までとは違うようだ。
「ホントかよ······」
「ええ、間違いありませんね。······これを見てください」
そう言って、N.O.は何処からかノートパソコンを取り出した。
「ノートパソコン······?」
「ええ。先日〈多次元通販サイト〉にて購入して取り寄せました。もちろん経費で」
「はぁ······」
多次元通販が何なのかについてはスルーした。理解出来ないものは考えたってしょうがない。
N.O.が見せてくれた画面には、神無島の地図が映し出されていた。その地図上のある場所に赤い点が点滅していた。
「この点滅している場所で魔術が使われたようです。何処か分かりますか?」
「あぁ、ここは神鳴大橋付近の国立病院前だな。この島唯一の病院で······」
「なんですって?!」
オレの説明をぶった切って大声を上げるN.O.。正直、鼓膜が破れるかと思った。
「こうしてはいられません。病院に被害が出る前に、何としても駆けつけなければ!」
「ちょっと待て!」
「ぐぇ!」
オレは窓から飛び出そうとしたN.O.の襟首を掴んで引っ張った。そのせいで、N.O.から女性出してはいけないような声が出た。
「ごほ、ごほ······。いきなり何するんですか?!」
「それはこっちのセリフだ! いきなり窓から飛び出そうとするんじゃない! ここ8階だぞ?!」
「関係ありません、高所からの飛び降りは訓練生時代に散々受けましたので!」
え、何それ? 多次元防衛機構はとんでも人間の集まりか何かなの?
「······いやいやいや?! 仮に飛び降りは問題無いとしてもだぞ? そんな恰好で行くつもりか」
「えっ?」
今のN.O.の恰好は、上半身白シャツに下着のみの完全に家だけのリラックススタイルである。そんな恰好で外に出たら、想像するに余りある惨劇が起こるだろう。
「すみません、すぐに着替えます! はっ!」
「は?」
N.O.が白シャツを思いっきりバサッと脱ぎ捨てると、次の瞬間にはもう上下スーツの完全お仕事スタイルに変わっていた。
「どこの早着替えマジシャンだよお前!」
「瞬間早着替えは社会人の基本技能ですが、それが何か?」
「嘘つけ!!!」
オレの両親でも出来んぞそんな高等技術!
「とにかくこれで文句はありませんね? それじゃあ行って」
「待て待てぃ!」
「ぐえっ! ······もう、何なんですか君は! 私の仕事を邪魔するつもりですか? 良いでしょう受けて立ちますよ!」
「違う!」
ちょっとくらい落ち着いて話を聞いてくれませんかね、この暴走OL。
「急ぐんだろ? オレが送ってくよ」
「え、······はい?」
オレのセリフに困惑しているN.O.をよそに、オレはN.O.の左腕を掴んだ。
「ジャンプ」
◆◆◆
「ほれ、着いたぞ」
「え? ······えええええ?!」
オレとN.O.が今立っている場所、それは。
「ほら、こっそりとアレを見てみろ」
「······む、あれは·······」
視線の先には、1人のチャラい男と『守護』の腕章を左腕に付けた少女がいた。2人は激しく戦っており、周囲の道路は戦闘の激しさを物語るようにところどころ穴が空いていた。
そう、オレとN.O.は今、病院の塀の影にいる。
「······これは青人くんのスキルですか?」
「そうだよ」
オレの能力は〈瞬転〉。一定の距離間を瞬間移動するだけの能力だ。この島全体ならば何処へでも跳べるとは思うが、この島では基本的には指定された場所以外での能力は緊急時を除いて原則使用禁止。日常生活では使ってはいけないのである。
「まぁ、オレの能力には欠点もいくつかあるけど······」
「くっ、なんて羨まけしからんスキルですか······!」
「いやいや、オレからしたら魔術なんてものを扱えるN.O.の方が凄いよ。だって使える用途が幅広いじゃんか」
「それはそうなのですが」
まぁ、『隣の芝は青く見える』ってやつよね。
「と、とにかく! 急いであの男を取り押さえねば! 行って来ます!」
「ハイハイ、行っておいで」
······せめて、やりすぎないようにな······。
◆◆◆
「N.O.スラアァァァーーーッシュ!」
「ん? ···どぅわあぁぁーーーっ!」
N.O.は2人の戦闘に割って入り、ダサい必殺技名を叫びながら剣を振りかぶった。ついでに周囲にいた変な黒い狼も1振りで蹴散らしていた。
「くそ······! 危ねぇじゃねーか! 誰だ!」
「黙りなさい違法世界渡航者! 多次元世界防衛機構 ロストマテリアル課所属、アル······、コホン、N.O.があなたを現行犯逮捕します! さっさとお縄について、私のお給金になりなさい!」
「な! ······ちっ、防衛機構が来やがったかよ。こんな辺境世界にまでご苦労なこったな!」
「言い訳無用! あと社長の悪口はしっかりと録音しましたので、ボイスレコーダー諸共本部へと送り付けてやりますので覚悟しろ!」
「ふざけんなああぁぁぁぁぁ!」
男は叫びながら紙を1枚地面に叩きつけた。
「それは······! 止めなさい! 貴方、死にますよ!」
「うるせぇ! あのハゲのところに行くくらいなら、てめぇを道連れにしてやるよ!」
「待ちなさい!」
N.O.の制止も聞かず、男は術を発動させようとした······。
「ほい、っと」
「あ······?」
オレは瞬時に男の元へと跳躍し、地面の紙を拾い上げた。
「普段はふざけたような言動のあいつが、必死で止めようとしたんだ。そんな危ないもんを病院の前で使うなよ?」
「て······、てめぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」
「隙ありっ! N.O.絶対捕縛輪っ!」
「があっ!」
オレに術を邪魔されて激昂した男は、N.O.が投げた捕縛輪によってがんじがらめに縛られ、御用となった。
「ふんーーー! んんーーー!」
「無駄ですよ。これは私が改良に改良を重ねた捕縛輪ですので。絶対に抜け出せません」
「すげぇな······」
警察の手錠も顔負けだぞ、それ······。
「終わったならさっさと戻るぞー。早く離脱しないと面倒事に巻き込まれる」
「そうですね。それじゃあ青人くん、先程の転移スキルでよろしくお願いします。よいしょっと······」
「って、そいつも家に連れて行くのかよ! 大丈夫なんだろうな?!」
「心配要りませんよ。私の捕縛輪は魔術も無効化しますから」
「えぇーーー······」
何そのチートアイテム······。
「ほら、早く!」
「あ、あぁ······。······ジャンプ」
オレは男を担いだN.O.と共に家まで跳躍した。
「·········」
朝食中、N.O.は変な事を言い出した。もはやいつもの事になりつつあるのだが、今回のは今までとは違うようだ。
「ホントかよ······」
「ええ、間違いありませんね。······これを見てください」
そう言って、N.O.は何処からかノートパソコンを取り出した。
「ノートパソコン······?」
「ええ。先日〈多次元通販サイト〉にて購入して取り寄せました。もちろん経費で」
「はぁ······」
多次元通販が何なのかについてはスルーした。理解出来ないものは考えたってしょうがない。
N.O.が見せてくれた画面には、神無島の地図が映し出されていた。その地図上のある場所に赤い点が点滅していた。
「この点滅している場所で魔術が使われたようです。何処か分かりますか?」
「あぁ、ここは神鳴大橋付近の国立病院前だな。この島唯一の病院で······」
「なんですって?!」
オレの説明をぶった切って大声を上げるN.O.。正直、鼓膜が破れるかと思った。
「こうしてはいられません。病院に被害が出る前に、何としても駆けつけなければ!」
「ちょっと待て!」
「ぐぇ!」
オレは窓から飛び出そうとしたN.O.の襟首を掴んで引っ張った。そのせいで、N.O.から女性出してはいけないような声が出た。
「ごほ、ごほ······。いきなり何するんですか?!」
「それはこっちのセリフだ! いきなり窓から飛び出そうとするんじゃない! ここ8階だぞ?!」
「関係ありません、高所からの飛び降りは訓練生時代に散々受けましたので!」
え、何それ? 多次元防衛機構はとんでも人間の集まりか何かなの?
「······いやいやいや?! 仮に飛び降りは問題無いとしてもだぞ? そんな恰好で行くつもりか」
「えっ?」
今のN.O.の恰好は、上半身白シャツに下着のみの完全に家だけのリラックススタイルである。そんな恰好で外に出たら、想像するに余りある惨劇が起こるだろう。
「すみません、すぐに着替えます! はっ!」
「は?」
N.O.が白シャツを思いっきりバサッと脱ぎ捨てると、次の瞬間にはもう上下スーツの完全お仕事スタイルに変わっていた。
「どこの早着替えマジシャンだよお前!」
「瞬間早着替えは社会人の基本技能ですが、それが何か?」
「嘘つけ!!!」
オレの両親でも出来んぞそんな高等技術!
「とにかくこれで文句はありませんね? それじゃあ行って」
「待て待てぃ!」
「ぐえっ! ······もう、何なんですか君は! 私の仕事を邪魔するつもりですか? 良いでしょう受けて立ちますよ!」
「違う!」
ちょっとくらい落ち着いて話を聞いてくれませんかね、この暴走OL。
「急ぐんだろ? オレが送ってくよ」
「え、······はい?」
オレのセリフに困惑しているN.O.をよそに、オレはN.O.の左腕を掴んだ。
「ジャンプ」
◆◆◆
「ほれ、着いたぞ」
「え? ······えええええ?!」
オレとN.O.が今立っている場所、それは。
「ほら、こっそりとアレを見てみろ」
「······む、あれは·······」
視線の先には、1人のチャラい男と『守護』の腕章を左腕に付けた少女がいた。2人は激しく戦っており、周囲の道路は戦闘の激しさを物語るようにところどころ穴が空いていた。
そう、オレとN.O.は今、病院の塀の影にいる。
「······これは青人くんのスキルですか?」
「そうだよ」
オレの能力は〈瞬転〉。一定の距離間を瞬間移動するだけの能力だ。この島全体ならば何処へでも跳べるとは思うが、この島では基本的には指定された場所以外での能力は緊急時を除いて原則使用禁止。日常生活では使ってはいけないのである。
「まぁ、オレの能力には欠点もいくつかあるけど······」
「くっ、なんて羨まけしからんスキルですか······!」
「いやいや、オレからしたら魔術なんてものを扱えるN.O.の方が凄いよ。だって使える用途が幅広いじゃんか」
「それはそうなのですが」
まぁ、『隣の芝は青く見える』ってやつよね。
「と、とにかく! 急いであの男を取り押さえねば! 行って来ます!」
「ハイハイ、行っておいで」
······せめて、やりすぎないようにな······。
◆◆◆
「N.O.スラアァァァーーーッシュ!」
「ん? ···どぅわあぁぁーーーっ!」
N.O.は2人の戦闘に割って入り、ダサい必殺技名を叫びながら剣を振りかぶった。ついでに周囲にいた変な黒い狼も1振りで蹴散らしていた。
「くそ······! 危ねぇじゃねーか! 誰だ!」
「黙りなさい違法世界渡航者! 多次元世界防衛機構 ロストマテリアル課所属、アル······、コホン、N.O.があなたを現行犯逮捕します! さっさとお縄について、私のお給金になりなさい!」
「な! ······ちっ、防衛機構が来やがったかよ。こんな辺境世界にまでご苦労なこったな!」
「言い訳無用! あと社長の悪口はしっかりと録音しましたので、ボイスレコーダー諸共本部へと送り付けてやりますので覚悟しろ!」
「ふざけんなああぁぁぁぁぁ!」
男は叫びながら紙を1枚地面に叩きつけた。
「それは······! 止めなさい! 貴方、死にますよ!」
「うるせぇ! あのハゲのところに行くくらいなら、てめぇを道連れにしてやるよ!」
「待ちなさい!」
N.O.の制止も聞かず、男は術を発動させようとした······。
「ほい、っと」
「あ······?」
オレは瞬時に男の元へと跳躍し、地面の紙を拾い上げた。
「普段はふざけたような言動のあいつが、必死で止めようとしたんだ。そんな危ないもんを病院の前で使うなよ?」
「て······、てめぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」
「隙ありっ! N.O.絶対捕縛輪っ!」
「があっ!」
オレに術を邪魔されて激昂した男は、N.O.が投げた捕縛輪によってがんじがらめに縛られ、御用となった。
「ふんーーー! んんーーー!」
「無駄ですよ。これは私が改良に改良を重ねた捕縛輪ですので。絶対に抜け出せません」
「すげぇな······」
警察の手錠も顔負けだぞ、それ······。
「終わったならさっさと戻るぞー。早く離脱しないと面倒事に巻き込まれる」
「そうですね。それじゃあ青人くん、先程の転移スキルでよろしくお願いします。よいしょっと······」
「って、そいつも家に連れて行くのかよ! 大丈夫なんだろうな?!」
「心配要りませんよ。私の捕縛輪は魔術も無効化しますから」
「えぇーーー······」
何そのチートアイテム······。
「ほら、早く!」
「あ、あぁ······。······ジャンプ」
オレは男を担いだN.O.と共に家まで跳躍した。
「·········」
応援ありがとうございます!
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