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間話 報告会
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神無島特別治安維持組織【小さな守護者】本部、その作戦会議室にて。
長月翠は、先日起こった一連の事件についての詳細を報告していた。
「······以上が、私が遭遇した事件の全てです」
翠の報告を聴いた上層部の連中は、皆驚愕の表情を浮かべながら沈黙していた。
「······にわかには信じ難い事だな」
「影から現れた黒い狼、謎の男が口にしたという"魔術"なる力······」
「しかも、長月君の能力がまるで通用しなかったという」
「うむ。こうして"監視カメラ"での記録映像が残っていなければ、とても信じられなかっただろう」
翠の後方にある大型スクリーンには、先日起こった戦闘の一部始終が繰り返し流されていた。
「黒い狼を操り、魔術なる危険な力を行使する青年······」
「そして、その青年をいとも容易く撃退した謎の女性······」
「しかも、その女性と行動を共にしているあの少女·······。全くもって謎であるな······」
(······ん? 少女?)
その言葉に違和感を感じ、翠はパッとスクリーンへと振り返った。
そこに映っていたのは、謎の青年を抱え上げた謎の女性と少女の姿だった。
(おかしい! あれは、確か少年だったはず······!)
目の前に起こっている異常事態に、翠は混乱していた。
「どうかしたのかね? 長月君」
上司にそう尋ねられ、恐る恐る口を開こうとするも、上手く言葉を紡ぐ事が出来なかった。
「······いえ。何でも、ありません······」
映像が残っている以上、それが真実。世界でもトップクラスの技術者によって造られたこの島の監視カメラに偽装工作を仕掛けるなど、いくら凄腕のサイバーハッカーでもそうそう出来る事では無い。
「······っ」
翠は、自分の記憶にすっかり自信を失くしていた。
「とりあえず、今回の件は一旦保留としよう。長月君」
「はい······」
「御苦労であった。引き続き、この事件の捜査を行ってくれたまえ」
「わかり、ました······。······失礼します」
翠は頭を下げ、静かに退室した。
◆◆◆
「······はぁ」
会議室から戻った翠は、自分の席に着くなり盛大なため息をついた。
格上との戦闘。自身の能力が一切通用せず、為す術なく蹂躙されかけた。
その後に現れた謎の女性の介入によって助かりはしたが、その戦闘のレベルが高過ぎて介入出来ず、ただ眺めるしか出来なかった。
ただでさえ不甲斐なく思い落ち込んでいる時に知らされる、自身の記憶力の欠陥······。
度重なる理解不能の出来事に、翠の処理能力は限界を超えていた。
「···自信、無くなっちゃったなぁ······」
この日、翠は仕事に全く手がつかなかった。
長月翠は、先日起こった一連の事件についての詳細を報告していた。
「······以上が、私が遭遇した事件の全てです」
翠の報告を聴いた上層部の連中は、皆驚愕の表情を浮かべながら沈黙していた。
「······にわかには信じ難い事だな」
「影から現れた黒い狼、謎の男が口にしたという"魔術"なる力······」
「しかも、長月君の能力がまるで通用しなかったという」
「うむ。こうして"監視カメラ"での記録映像が残っていなければ、とても信じられなかっただろう」
翠の後方にある大型スクリーンには、先日起こった戦闘の一部始終が繰り返し流されていた。
「黒い狼を操り、魔術なる危険な力を行使する青年······」
「そして、その青年をいとも容易く撃退した謎の女性······」
「しかも、その女性と行動を共にしているあの少女·······。全くもって謎であるな······」
(······ん? 少女?)
その言葉に違和感を感じ、翠はパッとスクリーンへと振り返った。
そこに映っていたのは、謎の青年を抱え上げた謎の女性と少女の姿だった。
(おかしい! あれは、確か少年だったはず······!)
目の前に起こっている異常事態に、翠は混乱していた。
「どうかしたのかね? 長月君」
上司にそう尋ねられ、恐る恐る口を開こうとするも、上手く言葉を紡ぐ事が出来なかった。
「······いえ。何でも、ありません······」
映像が残っている以上、それが真実。世界でもトップクラスの技術者によって造られたこの島の監視カメラに偽装工作を仕掛けるなど、いくら凄腕のサイバーハッカーでもそうそう出来る事では無い。
「······っ」
翠は、自分の記憶にすっかり自信を失くしていた。
「とりあえず、今回の件は一旦保留としよう。長月君」
「はい······」
「御苦労であった。引き続き、この事件の捜査を行ってくれたまえ」
「わかり、ました······。······失礼します」
翠は頭を下げ、静かに退室した。
◆◆◆
「······はぁ」
会議室から戻った翠は、自分の席に着くなり盛大なため息をついた。
格上との戦闘。自身の能力が一切通用せず、為す術なく蹂躙されかけた。
その後に現れた謎の女性の介入によって助かりはしたが、その戦闘のレベルが高過ぎて介入出来ず、ただ眺めるしか出来なかった。
ただでさえ不甲斐なく思い落ち込んでいる時に知らされる、自身の記憶力の欠陥······。
度重なる理解不能の出来事に、翠の処理能力は限界を超えていた。
「···自信、無くなっちゃったなぁ······」
この日、翠は仕事に全く手がつかなかった。
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