愛され方を教えて

あちゃーた

文字の大きさ
23 / 25

2:6

ダゼンと入試を受けるにあたって、メイドは驚いていたが反対はしなかった。

お父様とお兄様にアルタード学園に通いたいという手紙を出していたのだが、その返事も届いた。
二人とも、俺のやりたいことをするように応援してくれていた。

これで心残りはない。
あとは無事に合格するだけだ。

「そういえば…」

ふと学園に行くまでの道中、隣に歩くダゼンを見る。

「ダゼンは筆記試験大丈夫なのか?」

「護衛になるためには勉強もしないといけなかった。リハルトの護衛になれたってことは、多分大丈夫。」

「ダゼンは本当に優秀なんだな。」

「そんなことはない。俺はスラム街出身だ。生き残るためにはそれしかなかっただけ。」

その言葉に驚く。
スラム街には平民の中でも特に貧乏だったり罪を犯した者たちが暮らしている。
そんな中から護衛にまでのしあがるのは大変だったはずだ。

「いや、ダゼンは優秀だ。」

「リハルトは、なんか違う。」

褒めたのによく分からない返しをされた。

「どういうことだ?」

「なんか、違う。それが、気に入っている。だから友達なんだ。」

よく分からないが俺はダゼンのお気に召したらしい。
ダゼンの短く切る独特な喋り方にも慣れてきた。

「よく分からないけどありがとう。」

コクン。
小さく頷くダゼンに思わず笑ってしまう。

最初は気まずいと思っていたのが嘘みたいだ。
俺と同じでコミュニケーションが下手なだけ。
可愛げのあるやつだ。

そうも言っているうちに会場に着いたようだ。

同じように試験を受けにきたのであろう人たちがゾロゾロと門を通っている。

「ダゼン、お互い入学しよう。」

コクンと頷くダゼンに拳を突き出す。
それをみてダゼンも拳を突き出す。

お互いに拳を突き合わせて俺たちは学園に入った。





筆記試験は無事に終わった。
手応えもバッチリだ。
ダゼンにどうだったか聞いたところ、コクンと頷いていたからおそらく大丈夫なんだろう。

後は剣術試験だ。
待機室で他の受験生と一緒に呼ばれるのを待つ。
一番近くの席にダゼンと適当に座ってあたりを見渡すとほとんどの人が緊張した面持ちをしていた。
緊張をほぐす為か近くの受験生と会話している者が多く、聞き耳を立ててみる。

「俺、親がわざわざ教師まで雇ってくれたのに落ちたらどうしよう?」

「大丈夫だろ?俺なんかさっきの筆記でもうやばかったぞ。」

「筆記テストは余裕だったけど剣術はあまりしたことがないんだ。」

「俺も俺も、ダメかもな。」

「おい見ろよ、あっちで固まってるのってお貴族様たちじゃね?」

「本当だ、あの人新聞で見たことがある、あの赤髪の人!有名だよな、あの公爵家の…」

「あぁ、どうりで余裕そうな感じなわけだよな、俺ら平民と違ってお貴族様は幼い頃から習ってるしそもそも持ってる遺伝子が違うよ。」

チラチラとみんなが視線を送っている集団を見る。
明らかに身分が高そうな服を着た男3人組が固まって楽しそうに談笑していた。
周りの反応からどうやら全員お貴族様らしい。
知っていて損はないかと3人の顔をじっと見ておくことにした。
もしかしたら誰かがヤンと繋がってるかもしれない…………し。

ん?

俺は目を凝らした。
なんか知ってるやつの顔のような気がする。

赤髪のやつ、黒髪のやつ、それから…。

ゴシゴシと目を擦ってもう一度相手の方を見る。
受け入れたくないが、最悪なことに記憶の片隅に残っていた顔と今見ている顔が重なった。

本当に最悪だ。

そんなことあっていいはずがない。
信じたくない。
信じたくないが間違いない。

記憶に残っている、血が映えていた白髪。
髪は肩にかかるぐらいの長さだが、過去で出会った時は背中に届くくらい長かった。
金色の猛獣みたいな瞳孔の目。
無駄に整った顔立ち。

あの、リータである。
愚かにもアルバーン様を殺そうとした不届き者。

「251番リト!」

気を取られている中、試験官に名前を呼ばれ、ビクッと肩が揺れる。

隣に座っているダゼンが珍しく口を開いて「どうした?」と聞いてくるので「なんでもない、行ってくる」と返して試験官についていく。

そうだ、あいつは王族だしここにいたっておかしくはない。

とにかく絶対にヤンに近づけさせないようにしないと。
あいつとヤンの間に何かあったのは間違いないのだから。

「251番、リト、木刀を構えてください」

ぐるぐると考えごとをしている間もなく、目の前の試験官が木刀を手渡してきた。
慌てて受け取って剣を構える。

「試験内容は簡単です。目の前にあるものを剣で攻撃してください。剣の振り方、威力、速度、全てを試験官である私を含め剣術に詳しい方5人が見て点数をつけます。」

あなたにおすすめの小説

夫には好きな相手がいるようです。愛されない僕は針と糸で未来を縫い直します。

伊織
BL
裕福な呉服屋の三男・桐生千尋(きりゅう ちひろ)は、行商人の家の次男・相馬誠一(そうま せいいち)と結婚した。 子どもの頃に憧れていた相手との結婚だったけれど、誠一はほとんど笑わず、冷たい態度ばかり。 ある日、千尋は誠一宛てに届いた女性からの恋文を見つけてしまう。 ――自分はただ、家からの援助目当てで選ばれただけなのか? 失望と涙の中で、千尋は気づく。 「誠一に頼らず、自分の力で生きてみたい」 針と糸を手に、幼い頃から得意だった裁縫を活かして、少しずつ自分の居場所を築き始める。 やがて町の人々に必要とされ、笑顔を取り戻していく千尋。 そんな千尋を見て、誠一の心もまた揺れ始めて――。 涙から始まる、すれ違い夫婦の再生と恋の物語。 ※本作は明治時代初期~中期をイメージしていますが、BL作品としての物語性を重視し、史実とは異なる設定や表現があります。 ※誤字脱字などお気づきの点があるかもしれませんが、温かい目で読んでいただければ嬉しいです。

Seele―目が見えるようになったのは奇跡ではなく、罰だった―

真紀
BL
【完結まで執筆済み】目が見えない兄と、彼を一人遺して死にゆく弟の物語。 死んだ弟の角膜で、光(コウ)は視力を得た。見えたのは、涙をこらえる親友の顔。「和はおまえが大嫌いだった。憎んでた。だからおまえに目をくれたんだよ」光が歌をやめたのは、その日からだ。 あの人が泣きながら殴るたび、光は願う。「どうか明日は、早く壊れてしまえますように」と。 光は音楽を捨て、達哉は涙を隠せないまま、二人は同じ世界に立ち続ける。 これは、赦しのない世界で、それでも生きようとする者たちの物語。 《第二章》盲目の光が、最愛の弟を失うまでの日々を書いています。ブロマンス寄りですがBL好きな方に読んで欲しい作品です。「ノンケを堕とすノンケ」が好物の方、ぜひどうぞ。

愛などもう求めない

一寸光陰
BL
とある国の皇子、ヴェリテは長い長い夢を見た。夢ではヴェリテは偽物の皇子だと罪にかけられてしまう。情を交わした婚約者は真の皇子であるファクティスの側につき、兄は睨みつけてくる。そして、とうとう父親である皇帝は処刑を命じた。 「僕のことを1度でも愛してくれたことはありましたか?」 「お前のことを一度も息子だと思ったことはない。」 目が覚め、現実に戻ったヴェリテは安心するが、本当にただの夢だったのだろうか?もし予知夢だとしたら、今すぐここから逃げなくては。 本当に自分を愛してくれる人と生きたい。 ヴェリテの切実な願いが周りを変えていく。  ハッピーエンド大好きなので、絶対に主人公は幸せに終わらせたいです。 最後まで読んでいただけると嬉しいです。

そばにいてほしい。

15
BL
僕の恋人には、幼馴染がいる。 そんな幼馴染が彼はよっぽど大切らしい。 ──だけど、今日だけは僕のそばにいて欲しかった。 幼馴染を優先する攻め×口に出せない受け 安心してください、ハピエンです。

もう一度君に会えたなら、愛してると言わせてくれるだろうか

まんまる
BL
王太子であるテオバルトは、婚約者の公爵家三男のリアンを蔑ろにして、男爵令嬢のミランジュと常に行動を共にしている。 そんな時、ミランジュがリアンの差し金で酷い目にあったと泣きついて来た。 テオバルトはリアンの弁解も聞かず、一方的に責めてしまう。 そしてその日の夜、テオバルトの元に訃報が届く。 大人になりきれない王太子テオバルト×無口で一途な公爵家三男リアン ハッピーエンドかどうかは読んでからのお楽しみという事で。 テオバルドとリアンの息子の第一王子のお話を《もう一度君に会えたなら~2》として上げました。 ※画像はpicrewさんよりお借りしました。

愛してやまなかった婚約者は俺に興味がない

了承
BL
卒業パーティー。 皇子は婚約者に破棄を告げ、左腕には新しい恋人を抱いていた。 青年はただ微笑み、一枚の紙を手渡す。 皇子が目を向けた、その瞬間——。 「この瞬間だと思った。」 すべてを愛で終わらせた、沈黙の恋の物語。   IFストーリーあり 誤字あれば報告お願いします!

妹に婚約者を取られるなんてよくある話

龍の御寮さん
BL
ノエルは義母と妹をひいきする父の代わりに子爵家を支えていた。 そんなノエルの心のよりどころは婚約者のトマスだけだったが、仕事ばかりのノエルより明るくて甘え上手な妹キーラといるほうが楽しそうなトマス。 結婚したら搾取されるだけの家から出ていけると思っていたのに、父からトマスの婚約者は妹と交換すると告げられる。そしてノエルには父たちを養うためにずっと子爵家で働き続けることを求められた。 さすがのノエルもついに我慢できず、事業を片付け、資産を持って家出する。 家族と婚約者に見切りをつけたノエルを慌てて追いかける婚約者や家族。 いろんな事件に巻き込まれながらも幸せになっていくノエルの物語。 *ご都合主義です *更新は不定期です。複数話更新する日とできない日との差がありますm(__)m

【完結】マジで婚約破棄される5秒前〜婚約破棄まであと5秒しかありませんが、じゃあ悪役令息は一体どうしろと?〜

明太子
BL
公爵令息ジェーン・アンテノールは初恋の人である婚約者のウィリアム王太子から冷遇されている。 その理由は彼が侯爵令息のリア・グラマシーと恋仲であるため。 ジェーンは婚約者の心が離れていることを寂しく思いながらも卒業パーティーに出席する。 しかし、その場で彼はひょんなことから自身がリアを主人公とした物語(BLゲーム)の悪役だと気付く。 そしてこの後すぐにウィリアムから婚約破棄されることも。 婚約破棄まであと5秒しかありませんが、じゃあ一体どうしろと? シナリオから外れたジェーンの行動は登場人物たちに思わぬ影響を与えていくことに。 ※小説家になろうにも掲載しております。