始まりも何も

あちゃーた

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生憎と俺は世間一般でいう可愛らしい性格ではない。

基本時にポーカーフェイスであまり笑わない。

そう、つまり、俺はΩとして少々生き辛い性格なのだ。

Ωは可愛く愛想を振りまいてニコニコしていなければ誰も結婚、いやそれ以前に付き合ってさえもくれない。

俺は両親が幼い頃他界したため、兄と二人で過ごしているのだが、その兄は俺の学費やら生活費やらを稼ぐ為に毎日多忙を極めている。

働く兄の姿を見る度に兄自身の人生を真っ当に歩んで欲しいと願わずにはいられない。

これ以上兄に迷惑をかけたくないし、心配されずに生きていきたい。

そこで、俺は考えた。

金持ちなαと結婚し、そのαが俺に飽きて捨てる時にがっぽりとお金を貰って出て行くのだ。

それしかない。

たまに自分の事を誠心誠意愛してくれるαと番いたいという御伽噺のような事を言うΩがいるが、夢から覚めろとしか言いようがない。

確かにそんなαもいるかもしれないが、パッと自分の周りを見渡してみればそれがいかに幻想であるか分かるはずだ。

シンデレラシンドロームに陥ってはいけない。

きちんと現実を見据えて事実をありのまま受け止めなければ生きていけないのだ。

と、勢いよく語ったものの再度言おう。

俺は愛想が良くない、良くないのだ。

このままでは愛人のポジションにも入れないかもしれない、それだけはまずい。

必死に周りのΩの真似をしてみたが自分で自分に引いてしまった。

きつい、これはだめだ。

まずあのキャピキャピした声を出すことができない。

次に自然に笑顔が作れない。

頑張って鏡の前で微笑む練習をしてみたがまったくもって表情筋が動かない。

ボディータッチも下手くそだし、会話なんて普段人とあまり話さないからかその場にいることしかできなかった、もはや空気だ、空気。

俺より空気清浄機の方がまだまともかもしれない。

「愛想良く、愛想良く……」

もうこれがラストチャンスだ。

ギュッと拳を握って顔を上げる。

目の前に立つのはこれから通うことになる高校の校舎。

ここで、何としてでも金持ちαを見つけるんだ!

容姿も性格も気にしてられない。

気になるのは金持ちか、そうでないか、ただそれだけ!

よし!

一息吐いて入学式の会場に向かおうとした時だった。

思わず目を見張った。

ばっちりと目の前にいる男と目があったからだ。

いや、驚いたのはそれだけではない。

その男が今までに見たことのないくらいかっこよかったからでもある。

すらりとした身長に彫りの深い整った顔。

明らかにαだと感じた。

彼の切長で真っ黒な瞳と何秒か視線が交わる。

なんだか気まずくなり、慌てて視線を外して歩き出した。

その時だった。

「結婚しよう」

そう、聞こえた。

いや、言われたのか?

誰が?

俺が。

チラッと彼の方に目を向けるとまたばっちりと目があった。

真っ直ぐ俺を見つめる瞳にやっぱり俺に言ったんだと頭の中で整理する。

「…………君は、お金持ち?」

「そこそこかな、でも一生生活には困らせない、約束する、だから結婚して欲しい」

断る理由が見つからない。

お金持ってるんだもん。

イケメンだからすぐに他の相手をつくって捨てられるかもしれないが、お金をくれるなら別にいい。

「…………うん」

「俺、白鳥 雷…君は?」

「俺は矢島 奏多」

こうして俺は結婚した。
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