始まりも何も

あちゃーた

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「はぁ…ママってば聞いてよ!羽愛ね、可愛いからクラスの子にたくさん告白されるの」

「羽愛は可愛いもんね、でも気をつけないとダメだよ、特にαには」

「そうだよ羽愛、いつどこに危険があるか分からないし、お兄ちゃんだっていつも羽愛と一緒に居られる訳じゃないんだから」

「分かってるよー?それに羽愛にはかっこいいお兄ちゃんが二人もいるもん、大丈夫、大丈夫!」

3人で椅子に座って朝ご飯を食べているとふふんとフレンチトーストを頬張りながら羽愛が得意げにそう言った。

時代は変わり、Ωへの偏見と差別は一気に減少傾向にある。

だがしかし、心配なものは心配だ。

天馬と優希はαだが、羽愛はΩなのだ。

そのクラスの子にαがいて無理やり番にされるかもしれないと思うとゾッとする。

羽愛はかつての自分が望んだままの性格だった。

天真爛漫で本当に可愛らしい子だ。

自分と違って何か恐ろしいことが起こってしまうかもしれない。

なるべく早くきちんとした人を見つけて安心して暮らして欲しい。

「まぁ、羽愛に手を出す輩は誰かさんに真っ先に消されるだろうけど」

「え…?優希朝から怖いこと言わないでよ」

「言っとくけど母さんにも適応されるからね」

「??」

「はぁー、鈍いんだから!」

なぜ我が子にこんなにも呆れられているのだろう…?

少々ショックを受けていると羽愛の目がキラキラと輝き出す。

羽愛がこんなにも喜んでいるってことは…起きたんだな。

そう思うと同時にギュッと首に腕が巻きつかれる。

フワッと漂う俺にしか感じられない香りにうっとりしてしまう。

やっぱりだ。

「おはよう雷君…今日は遅いお目覚めだね」

「昨夜は誰かさんの相手で忙しかったんだ…おはよう」

そう言うと彼は頬にチュッと唇を落とす。

もう慣れたものだ。

「父さんおはよ」

「パパ~!!羽愛にもチューして~」

「優希と羽愛もおはよう…天馬は?」

「あ、天馬なら出かけたよ」

「相変わらずだな」

「パパチューは?」

「はいはい、ほらチュー」

きゃっきゃっと嬉しそうにはしゃぐ羽愛に癒される。

優希は全力で雷君からのチューを拒否していた。

「や、俺はいい!!いいよ!!」

「はは、ほら、観念しろ」

「ぎゃーーーー!!!!」

「優兄もチューしてもらってる、良かったねぇ」

「羽愛、母さん、止めて!!ひっ!!ちょ…」

ふふふ。

あ、俺、今笑ってるな。

「ママが笑ったぁ!」

「今日も奏多は可愛いな…」

「母さん笑ってないで止めてよ!」

「ふふ、しょうがないな…雷君キスなら優希じゃなくて俺にしてよ」

クスクス笑いながらそう言うと雷君が後ろから俺を覗き込みながら囁いた。

「奏多へのキスはこんなチューじゃ足りないな」

ドキッと心臓が跳ねる。

あぁ、本当俺って幸せ者。

「じゃあ…今夜…ね?」

「うん…今日も愛してるよ」

「パパとママヒソヒソ話してる!いけないんだー!」

「もう俺部屋に戻るね…」

始まりも何もない、へんてこりんなら出会いからこんな幸せが訪れた。

今日も我が家は騒がしい。
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