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俺には優秀な兄がいる。
いつも一番をとる人だった。
勉強、運動、ピアノ、習字……何をさせても一番高い表彰台に登っていた。
勿論、兄がただの天才肌で全てが出来ていたわけではないと知っている。
夜遅くまで勉強し、毎朝ジョギングをこなす。
更にはピアノの練習も習字の練習も怠らなかった。
努力の塊のような人なのは知っていた。
それでも、そんな兄の弟という地位の重荷は俺の肩にどっしりと乗っかっていた。
母も父も俺みたいな人間より優秀な兄の方がいいに決まっている。
兄のようにきちんとしなさい……毎日毎日言われた言葉。
そのうち家庭までもがストレスのように感じ始めた。
俺が何をしても、何が出来ても、お兄ちゃんが優秀だからと言われる。
そんなの関係ないじゃないか。
みんな兄を好きになる。
分かっていた、兄の努力の大きさを。
それでも努力できることは一種の才能だと思わざる得なかった。
俺には頑張ろうという気持ちが湧かなかった。
そこそこ出来たらいいじゃないか。
一位じゃなくても、二位とか三位でいい。
無理をして一番をとる必要はない。
そう思っていたからか。
俺が付き合った子は誰一人として俺を一番に愛してくれなかった。
薄々気づいていた。
すぐに別れを告げられる理由も相手が他のαのところへ行ってしまう理由も。
兄は同級生だったというΩの男性と結婚した。
結婚式で仲睦まじそうに微笑む二人を見た。
どこか恥ずかしそうに微笑む兄のお相手は本当に兄の事を愛しているんだと感じた。
ちらっと見ればずっと兄のことを見ているほどなのだ。
まぁ、それは兄も同じだけど。
きっと兄は一番にその人を愛したから、その分の愛を受けとったんだ。
自分はどうだろうか?
ふとそう考えるとなんとなく、自分は逃げているんだと思った。
一番になる為の努力をしてそれが報われなかったら?
俺が一番にある人を愛してもその人がその分愛を返してくれる補償は何処にある?
俺の一方通行な思いになってしまったら?
怖い。
それはものすごく怖い。
だから努力は才能の一種なんだ。
努力はそんな失敗を恐れず自身の信念を貫いてするものだから。
弱虫の俺には出来そうにないな。
結婚式が終わり、最後の拍手を送りながらそう思った。
そこからそんな鬱憤を晴らすかのように色んなΩの子と付き合った。
Ωの子と付き合えば自分が上だと思えた。
俺が選ばれない…そんな思いをしなくてもいいように思えた。
けど実際はそんな事はなく、それを認めるとイラついた。
だから新しい子と付き合って気分を紛らわそうとした。
その繰り返し。
いつの間にか高校に入学し、一五回目の春を迎えた。
「ぼ、僕と付き合ってくれましぇんか!!」
いつも通りに呼び出されて告白をされた。
噛みまくりの告白だった。
「何人かもう付き合ってる人いるんだけどそれでもいいなら別にいいよ」
ニコッと微笑みかけると分かりやすく顔を真っ赤にさせるその子。
匂いや見た目からしてΩだろう。
それにしても。
ジッとその子を見た。
随分と可愛らしい子だった。
二重のクリクリとした大きな瞳に筋の通った鼻。
唇はふっくらしていて頬はほんのりとピンク…今は真っ赤に染まっていた。
お人形?
妖精??
お姫様??
そんな代名詞がつくぐらい小柄で可愛かった。
まぁ、どうでもいい。
どうせこの子も…。
「だ、だだだ大丈夫です!嬉しいです!」
ボンっと爆発してしまうんじゃ…と心配になるぐらい顔を一層赤くさせてその子は叫ぶように言った。
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