前世乙女ゲームの製作者だった公爵令嬢は「悪役令嬢」と「結婚」は厄介そうなので、憧れの「先生」を目指します

彩多 花音

文字の大きさ
14 / 23
スターチスは突として

7-b.直感は?

しおりを挟む
「アクアルータ様、一体どうされたのでしょうか。」
 私は手を離してくださいという気持ちでアクアルータ様にお願いをした。
 しかし、私のお願いはあっさりと却下された。
「ちょっと待ってください、アイラスさん。少し聞きたいことがあるのですがよろしいでしょうか。」
 聞きたいことですか? そういうことでしたら全然よろしいですが。
「アイラスさんはダンスがお上手だと聞きましたが、よければの練習相手になっていただけませんか。」
 アクアルータ様のダンスの練習相手!? そんな大役を私がしてもいいのでしょうか。そもそも、アクアルータ様だったらもっと素敵な練習相手がいらっしゃるのではないでしょうか。
 私が返事に困っているとそこに救世主が現れた。
「ごめんね。少し屋敷の中で迷子になってしまってね。何かいいことあったかな?」
 救世主様~! この空気を変えてくださりありがとうございます。
「えっと、エリック様。その何というかそろそろお時間ですので失礼してもよろしいでしょうか。」
 あらら、もうアクアルータ様変えられてしまうのですか。まだ先ほどのお返事できていないのですが。
 アクアルータ様は慌ててたように帰宅の準備を始めてしまった。まだお話ししたかったのだけれど。そういえばエーデル様はまだ帰ってこないのかしら。
 アクアルータ様は「それではエーデル様によろしくとお伝えください」と言ってアクアルータ様は席を離れてしまった。私の横を通り過ぎるとき「ま後日会いませんか。」とささやかれた。
 後日会いませんかって。そんなに素敵な声で言われてしまったら溶けてしまいそうですよ。
 また今度会えるんだ。
 そのあと、エーデル様がお戻りになり声を掛けてくださるまでぼーっとしてしまったのは秘密のお話。

 あー、やってしまった。アイラスさんの前ではかっこつけていたかったのだが。どうしても冷静さを失ってあんなことをやってしまった。
 あんなに恥ずかしいことをしておいて後日会いませんかだなんて。もう、やだ。
「シートル様やらかしたんですね。かわいそうに。」
 おい、かわいそうってなんだ。俺の一番の側近だからってそんなことを言うとは。
「とりあえずシートル様、嫌われたと思ったのならまだ間に合います。思ったのならですがね。」
 思ったら。それってどういうことだ。何度も何度もその言葉を繰り返すというには意味があるのだろう。
 きっとこの時の顔はとても険しいものだっただろう。すぐそこでまじまじと見つめてくる従者の顔が引きつっていたからな。
「せ、正解発表をしましょうか。目の前で嫌いと言われたのなら、もう立ち直れなくなるかもしれませんが、こちらが思っているだけなのでしたらまだ可能性はありますよ。」
 そういうことか。つまり思うということはネガティブにもポジティブにも変わるということか。
「もう、そういうことか。なかなかやるな。」
「何年貴方のお側にお仕えしていると思っているのですか。」
 そういえばそうだな。って、なんでお前が俺と一緒に馬車乗ってるんだよ。

 屋敷につくと、父様がエントランスをうろうろとしていたので声を掛けさせてもらった。
「父様、婚約者のことなんですが。」
「あぁ、お前もそんな時期だったな。いや、早いような気もするが。で、誰かいたのか。」
「はい、います。そのなんていうか、父様に助言をいただきたいのですが。」
 婚約は当事者の二人だけの問題ではない。当事者の親族、従事者、その他大勢の方が関わってくる大事な話だ。こういうことは詳しそうな方に聞くのが一番手っ取り早い。そこで、ちょうど目の前にいた父様に話を聞くことにした。
「参考になるかはわからないが。まぁ、結婚するまでは嫌われるな。それだけだ。」
 ちょっと、というか結構自信ないですが頑張ります! すべてアイラスさんとの結婚生活のためだ!

 残されたエーデル、エリック、アイラス達は...。
「えっと、どうしますかエリック様、アイラス。」
「そうですね、とりあえず私たちも解散にしますか。」
 この後のアイラスの言葉にわたしとエリック様はおもわず顔を見合わせてしまった。
「お二人は婚約されていらっしゃるのですか?」
 あ、あれ。婚約を公表していないのをたまに忘れそうになるな。最近婚約のことで色々ありすぎてエリック様との距離感おかしくなっていたかもしれない。
「その何というか。そうですね。」
「エーデル、私がお話しします。」
 すっとわたしの前に手を伸ばしてわたしの発言を止めながらエリック様は代わりに説明をしてくれた。
「あまり深くは言えませんが、私とエーデルは協力関係にありまして。だから婚約をしているかと言われると、そうでは。」
 エリック様の説明はとてもお上手だった。こちらの事情を深く話さず、否定をするというなんと素晴らしい技術。立ち上がって拍手をしたいくらいだった。
「そういうことなのですね。深くは聞きません。いつか本当のことをお話ししてくださいね。」
 アイラスは勘が鋭いのかどうなのか。

 馬車のところでお見送りをしようとしていたところアイラスに少し不思議なことを言われた。
「エーデル様、お早めに中に戻ったほうがよろしいと思います。雨が降りますので。」
 そうなのかな? 今のところ晴天という感じだけど。まぁそうだとしたら教えてもらえて助かった。
「あと、エーデル様! 私、婚約者のこと、今からしっかり考えていきますね。」
「えぇ。頑張って。何かあったら助けたいから言ってね。」
 アイラスはすこしだけ口角を上げて微笑んでくれた。うん。アイラスはかわいい!
 続いて、エリック様のところへ向かう。
 こうやってみると身長たっか。エーデルも身長高いけれどエリックは本当に高い。
「エリック様。わたし、絶対あの勝負負けませんからね。」
「エーデル、こちらこそ負けませんよ。」
 二人で軽くにらみ合う。なんだか最近距離が近くなったよなぁ。まぁいっか。
「それじゃ、また今度の勝負で。」
「はい、わたし楽しみにしてますから。」
 わたしたちはそのまま離れた。心のどこかにワクワクしたドキドキした気持ちを抱えて。
 二台の馬車がリバランス公爵邸から離れていく。ちょっとだけ切ない。
 さっきまでみんなと会えてとても楽しかったのに、もうみんな帰ってしまった。
 前世でもこんな気持ちあったような、なかったような。こんな気持ちを感じるのはどんな時代でも変わらないのね。不思議な感じ!
 そうだ、アイラスが言っていったとおりに早く家の中に入るとしましょうか。

 屋敷の壁に大粒の雨が打ち付けられ、強風によって先ほどから揺れが続いている。こんな天気がすごいことになっているのはめったにないことだよ。アイラスってすごい。やっぱり勘が鋭いのかな。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

悪役令嬢に転生しましたが、行いを変えるつもりはありません

れぐまき
恋愛
公爵令嬢セシリアは皇太子との婚約発表舞踏会で、とある男爵令嬢を見かけたことをきっかけに、自分が『宝石の絆』という乙女ゲームのライバルキャラであることを知る。 「…私、間違ってませんわね」 曲がったことが大嫌いなオーバースペック公爵令嬢が自分の信念を貫き通す話 …だったはずが最近はどこか天然の主人公と勘違い王子のすれ違い(勘違い)恋愛話になってきている… 5/13 ちょっとお話が長くなってきたので一旦全話非公開にして纏めたり加筆したりと大幅に修正していきます 5/22 修正完了しました。明日から通常更新に戻ります 9/21 完結しました また気が向いたら番外編として二人のその後をアップしていきたいと思います

【完結】元悪役令嬢は、最推しの旦那様と離縁したい

うり北 うりこ@ざまされ2巻発売中
恋愛
「アルフレッド様、離縁してください!!」  この言葉を婚約者の時から、優に100回は超えて伝えてきた。  けれど、今日も受け入れてもらえることはない。  私の夫であるアルフレッド様は、前世から大好きな私の最推しだ。 推しの幸せが私の幸せ。  本当なら私が幸せにしたかった。  けれど、残念ながら悪役令嬢だった私では、アルフレッド様を幸せにできない。  既に乙女ゲームのエンディングを迎えてしまったけれど、現実はその先も続いていて、ヒロインちゃんがまだ結婚をしていない今なら、十二分に割り込むチャンスがあるはずだ。  アルフレッド様がその気にさえなれば、逆転以外あり得ない。  その時のためにも、私と離縁する必要がある。  アルフレッド様の幸せのために、絶対に離縁してみせるんだから!!  推しである夫が大好きすぎる元悪役令嬢のカタリナと、妻を愛しているのにまったく伝わっていないアルフレッドのラブコメです。 全4話+番外編が1話となっております。 ※苦手な方は、ブラウザバックを推奨しております。

『婚約破棄された悪役令嬢ですが、嫁ぎ先で“連れ子三人”の母になりました ~三人の「ママ」が聞けるまで、私は絶対に逃げません~』

放浪人
恋愛
「母はいりません」と拒絶された悪役令嬢が、最強の“ママ”になるまでの物語。 「君のような可愛げのない女は、王妃にふさわしくない」 身に覚えのない罪で婚約破棄され、“悪役令嬢”の汚名を着せられたクラリス。 彼女が新たに嫁いだのは、北方の辺境を守る「氷の公爵」ことレオンハルト・フォン・グレイフだった。 冷え切った屋敷で彼女を待っていたのは、無表情な夫と、心に傷を負った三人の連れ子たち。 「僕たちに、母はいりません」 初対面で突きつけられた三つの拒絶。しかし、クラリスは諦めなかった。 「称号はいりません。私が欲しいのは――あなたたち三人の『ママ』になれる日だけです」 得意の生活魔法『灯(ともしび)』で凍えた部屋を温め、『鎮(しずめ)』の歌で夜泣きを癒やし、家政手腕で荒れた食卓を立て直す。 クラリスの献身的な愛情は、頑なだった子供たちの心を解きほぐし、やがて不器用な夫の氷の心さえも熱く溶かしていく。 これは、不遇な悪役令嬢が「最強の母」となり、家族を脅かす元婚約者や魔獣たちを華麗に撃退し、最愛の家族から「ママ」と呼ばれるその日までを綴った物語。

バッドエンド予定の悪役令嬢が溺愛ルートを選んでみたら、お兄様に愛されすぎて脇役から主役になりました

美咲アリス
恋愛
目が覚めたら公爵令嬢だった!?貴族に生まれ変わったのはいいけれど、美形兄に殺されるバッドエンドの悪役令嬢なんて絶対困る!!死にたくないなら冷酷非道な兄のヴィクトルと仲良くしなきゃいけないのにヴィクトルは氷のように冷たい男で⋯⋯。「どうしたらいいの?」果たして私の運命は?

わがままな婚約者はお嫌いらしいので婚約解消を提案してあげたのに、反応が思っていたのと違うんですが

水谷繭
恋愛
公爵令嬢のリリアーヌは、婚約者のジェラール王子を追いかけてはいつも冷たくあしらわれていた。 王子の態度に落ち込んだリリアーヌが公園を散策していると、転んで頭を打ってしまう。 数日間寝込むはめになったリリアーヌ。眠っている間に前世の記憶が流れ込み、リリアーヌは今自分がいるのは前世で読んでいたWeb漫画の世界だったことに気づく。 記憶を思い出してみると冷静になり、あれだけ執着していた王子をどうしてそこまで好きだったのかわからなくなる。 リリアーヌは王子と婚約解消して、新しい人生を歩むことを決意するが…… ◆表紙はGirly Drop様からお借りしました ◇小説家になろうにも掲載しています

処刑前夜に逃亡した悪役令嬢、五年後に氷の公爵様に捕まる〜冷徹旦那様が溺愛パパに豹変しましたが私の抱いている赤ちゃん実は人生2周目です〜

放浪人
恋愛
「処刑されるなんて真っ平ごめんです!」 無実の罪で投獄された悪役令嬢レティシア(中身は元社畜のアラサー日本人)は、処刑前夜、お腹の子供と共に脱獄し、辺境の田舎村へ逃亡した。 それから五年。薬師として穏やかに暮らしていた彼女のもとに、かつて自分を冷遇し、処刑を命じた夫――「氷の公爵」アレクセイが現れる。 殺される!と震えるレティシアだったが、再会した彼は地面に頭を擦り付け、まさかの溺愛キャラに豹変していて!? 「愛しているレティシア! 二度と離さない!」 「(顔が怖いです公爵様……!)」 不器用すぎて顔が怖い旦那様の暴走する溺愛。 そして、二人の息子であるシオン(1歳)は、実は前世で魔王を倒した「英雄」の生まれ変わりだった! 「パパとママは僕が守る(物理)」 最強の赤ちゃんが裏で暗躍し、聖女(自称)の陰謀も、帝国の侵略も、古代兵器も、ガラガラ一振りで粉砕していく。

【長編版】悪役令嬢は乙女ゲームの強制力から逃れたい

椰子ふみの
恋愛
 ヴィオラは『聖女は愛に囚われる』という乙女ゲームの世界に転生した。よりによって悪役令嬢だ。断罪を避けるため、色々、頑張ってきたけど、とうとうゲームの舞台、ハーモニー学園に入学することになった。  ヒロインや攻略対象者には近づかないぞ!  そう思うヴィオラだったが、ヒロインは見当たらない。攻略対象者との距離はどんどん近くなる。  ゲームの強制力?  何だか、変な方向に進んでいる気がするんだけど。

転生した子供部屋悪役令嬢は、悠々快適溺愛ライフを満喫したい!

木風
恋愛
婚約者に裏切られ、成金伯爵令嬢の仕掛けに嵌められた私は、あっけなく「悪役令嬢」として婚約を破棄された。 胸に広がるのは、悔しさと戸惑いと、まるで物語の中に迷い込んだような不思議な感覚。 けれど、この身に宿るのは、かつて過労に倒れた29歳の女医の記憶。 勉強も社交も面倒で、ただ静かに部屋に籠もっていたかったのに…… 『神に愛された強運チート』という名の不思議な加護が、私を思いもよらぬ未来へと連れ出していく。 子供部屋の安らぎを夢見たはずが、待っていたのは次期国王……王太子殿下のまなざし。 逃れられない運命と、抗いようのない溺愛に、私の物語は静かに色を変えていく。 時に笑い、時に泣き、時に振り回されながらも、私は今日を生きている。 これは、婚約破棄から始まる、転生令嬢のちぐはぐで胸の騒がしい物語。 ※本作は「小説家になろう」「アルファポリス」にて同時掲載しております。 表紙イラストは、Wednesday (Xアカウント:@wednesday1029)さんに描いていただきました。 ※イラストは描き下ろし作品です。無断転載・無断使用・AI学習等は一切禁止しております。 ©︎子供部屋悪役令嬢 / 木風 Wednesday

処理中です...