魔王から学ぶ魔王の倒し方

唯野bitter

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第百四話 すやぴ

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「はいノエルちゃん、お土産だよ」
「わーい、ロワお兄ちゃんありがとー」


 ご飯の後、ロワお兄ちゃんからタンパンマンのぬいぐるみを貰う。確かこれってタンパンマンショーで売ってたぬいぐるみだよね?


「ロワお兄ちゃん、タンパンマンショー見に行ったの?」
「見に行ったよ。面白かったから皆で見に行こうね」
「わーい!ロワお兄ちゃん大好き!」


 多分ミエルお姉ちゃんと一緒に行ったと思う。


「いいなーノエルもお出かけしたいなー」
「フランさんの予定さえ合えばお出かけ出来ると思うから、いつか行こうか」
「うん!楽しみにしてるね!」


☆   ☆   ☆   ☆


 次の日の朝、ノエルが目を覚ますとミエルお姉ちゃんはもういなかった。ミエルお姉ちゃんは毎朝の特訓があるから、いつもノエルが起きた時にはいない。仕方ない事だけど、起きた時に一人なのは寂しい。
 ノエルはパジャマからお洋服に着替えて、食堂に向かう。
 食堂にはホウリお兄ちゃんとフランお姉ちゃんとロワお兄ちゃんが座って待っていた。


「ミエルお姉ちゃんは?」
「特訓からまだ戻らないな。いつも通りならそろそろ来ると思うが」


 ホウリお兄ちゃんと話していると、食堂の扉が開いてミエルお姉ちゃんが入って来た。
 ミエルお姉ちゃんはノエルの隣に座りながら頭を下げた。


「すまない、少し遅れてしまった」
「別によい。早く食うぞ」
「それじゃ、いただきまーす」
「「「「いただきまーす」」」」


 いつも通り皆で朝ご飯を食べ始める。今日のご飯はパンとオムレツとスープ、お城で出るオムレツはグザイが入っていないシンプルな物だけど、とっても美味しくてノエルは好き。


「オムレツは一番技術がいるからな。魔王様が食べる物だし、国で一番のコックが作ってるから美味いぞ」
「へえー、だからお城のご飯はいつも美味しいんだね」


 とろとろのオムレツを口の中に入れる。やっぱり美味しい。
 あ、そうだ。今日、お出かけ出来ないかな?


「ねーねー、ノエルもタンパンマンショー行きたい。誰か一緒に行こうよ」
「わしは無理じゃぞ。書類と格闘せねばならん」
「俺も用事があってな」
「僕とミエルさんは戦闘指南があるからダメかな」
「すまないな、ノエル」
「ちぇー、皆忙しいんだ」


 今日はひとりで遊ばないといけないみたい。お城から出ることは禁止されてるし、お城の中で遊ぼう。
 ご飯を食べ終わって、食堂から出てお城の中を歩く。どこか面白い所ないかな。


≪あれ?ノエル先生?≫
「ん?誰?」


 お城の廊下を歩いていると女の人から声を掛けられた。うーん、見たこと無いけど誰だっけ?


≪覚えてないですか?前にノエル先生に回復スキルについて指導してもらった……≫
≪ああ!アルモンドさん!≫


 確か前に回復スキルの指導をした時にいた人だ。とっても熱心だった人の1人だったのを覚えてる。


≪アルモンドさんどうかしたの?またスキルの指導?≫
≪そうじゃなくて、前の指導のお礼をしたいので、お茶会のお誘いに来たんです≫
≪お茶会?なにそれ?≫
≪お茶会というのは、皆でお茶とかお菓子を食べながらお話することです≫
≪面白そう!行く行く!≫


 お茶を飲みながら美味しいお菓子も食べられるなんてサイコー!


≪こっちです≫
≪わーい≫


 アルモンドさんにとある部屋の前まで連れてこられる。


≪ここでお茶会するの?≫
≪はい、どうぞお入りください≫


 アルモンドさんが扉を開けてくれたから、部屋の中に入る。色々と物が置かれているから物置かなって思ったけど、無理やり物が周りに退けられていて、中心に椅子とテーブルがある。
 窓もないからなんだか埃っぽい気がする。


≪ここ物置じゃないの?埃っぽいしもっと広い所でやったほうがいいんじゃない?≫
≪掃除はしたんですが、すみません。ノエルさんとお茶会を開くのは他の人には秘密でして、大きな所を使う訳にはいかないんです≫
≪そうなんだ、じゃあ仕方ないね≫


 ノエルはテーブルに座ってお茶を待つ。
 アルモンドさんはティーポットとティーカップを出してテーブルに置く。そして、カップにお茶を注ぐとチョコとクッキーが入ったお皿をテーブルの中心に置いた。


≪それじゃ、お茶会を始めましょうか≫
≪うん!いただきます!≫


 アルモンドさんが淹れてくれたお茶を一口飲む。ノエルは紅茶の細かい味は分からないけど、なんだかホッとする味がする。
 チョコレートを一つ食べてお茶を飲む。うん、美味しい。


≪おいしー、アルモンドさんってお茶を淹れるの上手だね≫
≪ありがとうございます。このお茶とお菓子は息子が好きな物なんですよ≫
≪へー、アルモンドさんって息子がいるんだ。何歳なの?名前は?≫
≪名前はマカダ、ノエルさんと同じ年です。ノエルさんみたいにしっかりしてなくて、いつも泥だらけで帰って来るような子なんですよ≫
≪元気いっぱいなんだね。いつかノエルとも遊んで欲しいな≫
≪そう……ですね。いつか遊べると良いですね≫


 ノエルから視線を外して、アルモンドさんがカップにお茶のお代わりを注ぐ。


≪クッキーも食べて下さい。私の自信作なんですよ?≫
≪……1ついい?≫
≪なんでしょうか?≫
≪なんでそんなに悲しそうなの?≫
≪!?≫


 ノエルの言葉にアルモンドさんの目が大きく開かれる。


≪なんで私が悲しそうだと?≫
≪なんとなく。マカダ君の話をしている時にとっても悲しそうだったから気になって≫


 こんな美味しいお菓子を食べても悲しいんだったら、とっても悲しいんだと思う。そんなに悲しいと、ノエルも悲しくなっちゃう。


≪ノエルでよかったらお話聞くよ?ノエルに言えないんだったら、ホウリお兄ちゃんとかフランお姉ちゃん読んでこようか?≫
≪……いえ、少し疲れているだけですよ。明日はお休みですし大丈夫です≫
≪ほんとに?無理してない?≫
≪はい、大丈夫です≫


 アルモンドさんは無理やり笑顔を作ってお茶を飲む。やっぱり無理している気がする。何かノエルに出来ることは無いかな?
 ノエルは考えながらクッキーを一口齧る。


≪うーん、このクッキーも美味しいね≫
≪……それは良かったです≫


 ノエルの言葉にアルモンドさんは更に悲しそうな表情になる。なんでこんなに悲しそうなんだろう?ノエル何かしたかな?
 ノエルがそう思っていると、思わず欠伸が出ちゃう。あれ?昨日はいっぱい眠ったんだけどな?
 ノエルが目をこすりながら必死に目を開けていると、アルモンドさんが目に涙を浮かべながら頭を下げた。


≪ごめんなさいノエルさん、本当にごめんなさい≫


 どうして謝っているのか、聞こうとしたけど眠たすぎて声が出せない。手に持っていたクッキーを落とし、ノエルの意識は暗闇へと消えそうになる。
 なんだか……本当に…………眠って…………


「おやつ抜きは嫌だ!!!!!」
≪うわああ!?≫


 咄嗟にセイントヒールを使って眠気を吹き飛ばす。
 すると、ノエルの声にびっくりしたのかアルモンドさんが尻餅をつく。


≪ノエルさん!?なんで!?≫
≪あれ?アルモンドさん?何が起こったの?≫


 ノエルの言葉にアルモンドさんが手に持っていたものを後ろに隠す。あれは、布の袋?何に使うんだろう?


≪なんで袋を持ってるの?≫
≪それよりもなんで睡眠薬入りのクッキーを食べて平気なんですか!?≫
≪睡眠薬入り?あー、だから眠くなったのか!≫


 ホウリお兄ちゃんが普通のご飯の時に睡眠薬とか痺れ薬とか入れてくる時がある。直ぐに治さなかったら次の日のおやつが抜きになっちゃうから癖でついセントヒール使っちゃった。


≪睡眠薬はアルモンドさんが入れたの?何のために?≫
≪……すみません、言う事は出来ないんです≫
≪もしかして、マカダ君に関係があるの?≫
≪なんでそれを!?≫
≪だってマカダ君の事を話している時、とっても悲しそうだったから≫


 ノエルの言葉にアルモンドさんが驚く。


≪良かったらノエルに話してみない?ノエルにも出来ることがあるかもしれないし≫
≪う、うわあああん≫


 ノエルに抱き着きながらアルモンドさんが泣き始める。泣きたいときはいっぱい泣いた方がいいってホウリお兄ちゃんがいってたし、このまま泣かせてあげよう。
 泣き始めて数分、アルモンドさんは目を真っ赤にしながら少しずつ話し始めた。


≪実は、息子が誘拐されて……≫
≪え!?それは大変!お兄ちゃんたちに知らせないと!≫


 急いで部屋を飛び出そうとしたノエルの腕をアルモンドさんが掴む。


≪他の人には言わないで!言うと息子が殺されちゃう!≫
≪え?どういうこと?≫


 アルモンドさんが言うには、ある日マカダくんが誘拐されて1枚の手紙が送られてきた。その手紙にはノエルとマカダ君を交換するという内容だった。誰かに相談したらマカダ君を殺しちゃうから、一人でノエルを捕まえるようにとも書いてあった。手紙が入っていた封筒には強力な睡眠薬も入っていて、それでノエルを眠らせて捕まえようとした。
 事情を話したアルモンドさんの目から大粒の涙が零れ落ちる。


≪ごめんなさい、息子の為にノエルさんを売ろうとしただなんて、私って最低ですよね≫
≪そんな事ないよ。それだけマカダ君が大切って事なんでしょ?お母さんだったら当たり前だよ≫
≪ノエルさん……≫


 事情は分かったけど、どうすればいいんだろう?ノエルが行かなかったらマカダ君が死んじゃうんだったら、ノエルが言った方がいい。
 けど、ノエルには世界を大きく変えるくらいの力があるから、軽率な行動はとらないようにってホウリお兄ちゃんからは言われている。こっそり行動してもホウリお兄ちゃんにはバレちゃうだろうし、どうしよう?


≪うーん、考えても分かんないや。とりあえず、ホウリお兄ちゃんには相談しよっと≫
≪待ってください!それだと息子が!≫
≪大丈夫、ホウリお兄ちゃんからこういう時の相談の仕方は教わってるから≫


 泣きそうなアルモンドさんにノエルは笑顔で答える。ノエルを見たアルモンドさんはのえるの腕から手を離した。


≪アルモンドさん、マカダ君の引き渡し時間は何時?≫
≪夜の0時に引き渡すように書かれてました≫
≪分かった。じゃあ、ちょっと行ってくるから、アルモンドさんはここで待っててね≫
≪あ!ノエルさん!≫


 ノエルは部屋から飛び出してフランお姉ちゃんが仕事をしている執務室へと向かう。
 ノックを3回して中へ声をかける。


「フランお姉ちゃーん、入っていい?」
「ノエルか。入って良いぞ」
「失礼しまーす」


 執務室へ入ると、フランお姉ちゃんが机の上の書類を読みながらハンコを押していた。フランお姉ちゃんはノエルに視線を向けると優しく微笑んだ。


「何かあったのか?」


 ノエルは頭を3回たたいて話し始める。


「皆、お仕事ばっかりでつまらない!遊んでよ!」
「これこれ、わしらは忙しいんじゃ。遊ぶのならばロワかミエルに指導後に遊んでもらうがよい」
「やだー!今遊びたいの!」


 ノエルがそっぽを向くと、頭の中にフランお姉ちゃんの声が響いてきた。


『緊急事態か?』
『うん、あのね……』


 念話でフランお姉ちゃんにアルモンドさんの話をしながら、口で遊びたいと言う。ホウリお兄ちゃんが教えてくれた口に出さずに助けを求める方法だ。


『分かった。ホウリに伝えておく』
『うん、よろしく!』
「もういいよ!フランお姉ちゃんのバカァァァ!」


 フランお姉ちゃんに話が伝わった事を確認して、執務室から飛び出す。
 そして、さっきの物置へと戻る。


≪お待たせー≫
≪お帰りなさい。どうでしたか?≫
≪多分、これでいいと思う≫


 ノエルはさっき落としたクッキーを拾ってアルモンドさんに話す。


≪これからノエルはわざと寝るから、アルモンドさんは予定通りにノエルを袋に詰めてね≫
≪え?≫


 不思議そうな顔をするアルモンドさんにニコリと笑ってノエルはクッキーを口に入れる。
 おやすみなさい。
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