魔王から学ぶ魔王の倒し方

唯野bitter

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第三百四十七話 チャイナに行っちゃいな

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 とある日の休日、孤児院の遊具の傍で、ノエルは2リットルの水が入った瓶を両手に1つずつ持っていた。


「ふぅぅぅぅぅ」


 大きく息を吐きながら体を左右に傾けたり、ゆっくりと歩いたりする。


「ねぇねぇ、ノエルお姉ちゃん。何やってるの?」


 そうしていると、子供の1人であるダマ君がノエルの所にやってきた。皆の邪魔にならないところだと思ったけど、気になっちゃったかな。


「今ね、修行しているの」
「しゅぎょー?」
「何ていうか、強くなるための練習って感じかな?」
「カッコイイ!僕もしゅぎょーしたい!」


 ダマ君が目をキラキラさせながらノエルを見て来る。
 うーん、この修行はとっても大変だし、下手をしたら怪我をする可能性もある。けど、ワクワクするのも分かるしなぁ。ノエルも修行するって聞いたときはワクワクしたしね。


「……そうだ、ダマ君」
「なに?」
「今さ、皆は追いかけっこしているでしょ?」


 広場の中央に目を向けると、孤児院の皆で追いかけっこをしていた。皆とても楽しそうで、修業さえなければノエルも混ざりたいくらいだ。


「あの追いかけっこで1時間、誰にも捕まらない様に頑張るっていう修行をしない?」
「それも修行なの?」
「うん。周りを見ることと、早く走れるようにする修行だよ」
「だったら頑張る!またねノエルお姉ちゃん!」
「頑張れ~」


 ダマ君を見送って、ノエルは修行に集中する。今は少しでも強くならないと。そのためにも頑張って修行しなきゃ。
 瓶を腕の力だけで前後に移動させたり、膝を軽く曲げたりする。その間にも呼吸のリズムは変えないように頑張る。


「すぅぅぅぅぅ、ふぅぅぅぅぅ」
「ノエル?」


 腕がきつくなってきたところで、不意に後ろから声を掛けられた。
 腰を回して振り返ってみると、そこにはオカルト研究クラブの皆がいた。


「あれ?皆どうしたの?」
「どうしたのじゃないわよ。今日は皆で買い物の予定でしょ」
「それは知っているけど、あと1時間くらいは時間があるよね?」


 約束の時間は11時、今は10時だ。待ち合わせ場所に行く時間を差し引いてもまだ時間はあるはずだけどなぁ?


「最近、ノエルちゃんの様子がおかしいって皆で話しててさ」
『だから、早めに来て様子を見に行こうって話になった訳だ』
「えー、言ってくれれば準備してたのに」
「それだと普通の時の様子を見れないでしょ」
「そうなのかな?」


 ま、ノエルとしては皆と過ごす時間が増えるから嬉しいけど。


「それで、あんた何してるのよ?」
「修行だよ」
「なんの修行なの?」
「気を操る修行だね?」
「気?」


 ノエルの言葉を聞いたコアコちゃんが、オカルト全集を取り出して開く。


「体の中に流れているとされている生命エネルギーのことだよね?」
「そうだよ」
『よく知ってるな?』
「その気を目当てに人を襲っているモンスターもいるんだ。チュパカブラって言うんだけど……」
「あれって血じゃないの?」
「最近は人間が空気から酸素だけを取り込むように、チュパカブラは血の中に流れている気を取り込んでいるって説があってね、その気を取り込むために普段は人間に擬態して生活してるなんて説も───」
「はいはい、オカルト話はそこまでにしなさい」


 コアコちゃんが熱く語っているのをサルミちゃんが止める。


「その『気』とかいう胡散臭いものの修行なのね?」
「胡散臭くないよ。気は本当にあるんだ」


 ホウリお兄ちゃん曰く、気は皆の体にも流れているエネルギーで、上手く使えば限界を超えた力を引き出せるらしい。その気を操れれば力も強くも出来るし、持久力も伸びる。


「だから、そのエネルギーを操る修行をしてるんだ」
「あんたのバカ力は、その気の影響なのね?」
「え、あ、うん。そんな感じ」


 本当は魔装なんだけど、黙っておこっと。


『俺からも1つ聞いて良いか?』
「なあに?」
『その格好はなんだ?』
「え?何か変?」
『チャイナ服を普通に着るのは変だろ』


 ノエルは片足立ちでスクワットしながら、自分の服装を見直してみる。チャイナ服って動きやすくて気に入ってるんだけどなぁ?


「気の修行するには最適なんだけど、ダメかな?」
『ダメって事はないんだが、なんというか……』
「なあに?」
『何となく目のやり場に困る』


 マカダ君が頬を赤くしながら、そっぽを向く。意味は良く分からないけど、ダメなら次からはジャージにしようかな?


「それでなんで『気』の修行をしようと思ったの?」
「闘技大会に出ることにしたからだよ」
「今からでも棄権したらどうかしら?」
「それはダメ。絶対に出るよ」


 闘技大会の話になると、絶対にサルミちゃんが反対してくる。言いたい事は分かるんだけど、今回はだけは絶対に引くわけにはいかない。


「勝てそうなの?」
「勝てなくはないとは思うよ」
「煮え切らない答えだね?」
「戦いっていうのは、やってみるまで分からないからね。勝つつもりで挑むけど、勝てるかは分かんない」


 これはホウリお兄ちゃんから何度も言われてることだ。
 どれだけ魔装やセイントヒールが使えても、100%勝てる勝負は無い。だからこそ、油断をしてはいけない。


「だから、出来る事はやっておこうかなって思ってさ」
「ふーん?本当にそれだけかしら?」
「……それだけだよ?」


 瓶をゆっくりと8の字を書くように動かす。体のエネルギーを腕に集中させるイメージをして、腕の負担を可能な限り軽減させる。
 修行を進めている間にもサルミちゃんからの疑いの目は止まらない。


「なーんか怪しいのよね。まだ何か隠してるんじゃないの?」
「そんなこと無いよ?」
「本当かしら?」
『ノエルは隠し事が下手だからな。何か隠してるのは確実だな』
「悪い事じゃないよね?」
「人に迷惑は掛けたらダメだからね?」
「ノエルってそんなに信用ないかなぁ!?」


 皆はノエルの事をどう思っているんだろうか。じっくりと聞いておきたい気がする。


「と、とにかく!ノエルは何も隠してないの!」
「何回聞いてもこの調子なのよね」
「だって何も隠してないもん!」


 これだけは絶対にバレちゃいけない。バレたら絶対に反対されるに決まってる。


「ま、いいわ。今日の買い物はそれを暴くための口実みたいなものだもの」
「そうなの!?初耳だよ!?」
「あんたに言う訳ないでしょ。分かったら覚悟しなさい。今日こそは隠していることを洗いざらい話して……」
「お前ら何してるんだ?」


 この状況をどう切り抜けようかと悩んでいると、後ろから聞き覚えがある声が聞こえた。


「ホウリお兄ちゃん!」


 振り向くとそこにはホウリお兄ちゃんがいた。
 ノエルは瓶を地面に置いてホウリお兄ちゃんに突進する。


「わーい!」
「うおっ!」


 ノエルの突進をホウリお兄ちゃんが受け止めてくれる。


「その格好はどうしたんだ?」
「この恰好の方が修行しやすそうかなって。やっぱり変?」
「一般的な格好じゃないな。ちなみに、その服は誰から貰った?」
「フランお姉ちゃん」
「やっぱりか」


 ホウリお兄ちゃんが軽く息を吐く。なんだか、ちょっと疲れている気が?


「服の件は置いといて、何を話してたんだ?」
「その子が何を隠しているのか問いただしていたところよ」
「そうなのか?」


 ノエルは首を縦に振る。すると、ホウリがオカルト研究クラブの皆の方に向き直った。


「ノエルの様子を見るに、嫌がっているようだが?」
「でも気になるもの」
「気になる?」
「闘技大会に出ない方が良いって説得したのに、急に出るって言い出したのよ?何があったのか気になるでしょ?」
「確かに気になるな」


 サルミちゃんの言葉にホウリお兄ちゃんは共感するように首を縦に振る。


「だが、それは間違っている」


 けど、ホウリお兄ちゃんの言葉はサルミちゃんを否定するものだった。


「なんでよ?気になるから聞いただけよ?」
「言いたくないって事は、それだけの理由があるって事だ。お前らだって隠し事くらいあるだろ?それを聞かせろとしつこく迫られたらどうだ?」


 ホウリお兄ちゃんの質問にサルミちゃんが黙り込む。思うところがあったのかな。


「無理やり聞き出すのは相手を深く傷つけることもある。最悪の場合、友達じゃなくなるかもしれない。それは肝に銘じてくれ」
「……分かったわよ」


 サルミちゃんノエルの目の前にやってきて、頭を下げる。


「ゴメン。しつこく聞き過ぎたわ」
「大丈夫だよ。ノエルは気にしてないから」
「これで一件落着だな」
『そういえば、ホウリさんはなんでここに?オダリムにいるのでは?』
「ノエルに用があってな」


 ホウリお兄ちゃんはノエルの脇を掴んで持ち上げる。


「ノエルをオダリムに連れていく」
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