魔王から学ぶ魔王の倒し方

唯野bitter

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第三百五十二話 まぶしい理由の方は訊いてないんですけど?

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「はっ……はっ……」


 月が天から草原を優しく照らしている中、一匹のゴールドウルフが草原を駆けていた。


「くそっ……どうすれば良いんだよ……」


 息が荒いゴールドウルフが人の言葉で愚痴をこぼす。このゴールドウルフは襲撃者である男が変身した姿だった。
 遂に居場所を突き止められた男はゴールドウルフの姿で早急に場所を後にした。だが、自身にかかっていたバフが切れ、美香が敗北したことを悟った。
 美香を失った今、オダリムへの戦力が低くなってしまった。自身も変身を長く使っており、そろそろ体力も限界を迎えようとしている。
 気絶をして変身が解けてしまったら、敵に見つかって殺される可能性もある。だからこそ、気絶する前に見つかる前に逃げ切らないといけなかった。だが、問題は他にもある。


「どこに逃げればいいんだよ……」


 森の中へ姿を隠せば見つからないと思っていた。だが、敵の神はこちらの力を感知して居場所を特定してくる。
 相手がどのくらいで位置を特定してくるのかは分からない。だが、時間をかけるほどに見つかりやすくなるのは間違いないだろう。


「このままだと位置が特定されて、総攻撃をかけられて負ける。だが、戦えるだけの体力も残っていない……」


 逃げても止まっても絶望しかない。その事実が男の足を重くする。


「うわっ!」


 そんな中で全力で走っていたため、男の足がもつれて転んでしまう。
 転んだ衝撃で男の変身が解けて、人の姿に戻ってしまう。


「……不味いな、もう体が動かない」


 立ち上がろうと手足に力を入れるが、全く力が入らない。全身が熱を持っていて、瞼も重くなり意識も遠のいていく。


(このまま眠りたい)


 そう思った男は重い疲労に身を任せていく。しかし、


『もしも負けたら君たちには魂ごと消滅してもらう』
「!?」


 力を貰った際に神に言われた言葉が脳内に蘇る。


「……寝てる場合じゃないな」


 男は無理やり体を起こす。ここで自分が折れると、仲間たちの思いが無駄になる。それだけは避けなくてはいけない。


「だがどうする?魔物たちだけでは攻め切るのは無理。時間が掛かると場所が特定される。素早く、勝負をつけないといけない。だが、強力な魔物への変身はできない」


 男は天を見上げて月を睨みつける。火照った体に冷たい夜風が染みわたっていく。


「月か。この世界にも月があるんだよな。これだけ見ると異世界って感じはしないな」


 大きく息を吐いて体の力を抜いていく。


「あの神みたいに俺達を見下しやがって」


 月が自分たちに力を与えた神に重なる。何者でも無かった自分たちを、何者かに変えてくれた神に。


「……そうか。魔物に頼る必要はないのか」


 男は何かを思いついたのかそう呟く。


「……勝っても死ぬかもな」


 自虐的に笑いながら男は呟く。そして、決意を宿したその目でオダリムの方へ視線を向ける。


「行くか」


☆   ☆   ☆   ☆


「そろそろ起きろー」
「うーん……?」


 深い意識の底から、乱暴な声に呼び起される。
 目を開けると、満点の星空が目に入って来た。体を起こすと、隣には盾と大剣を装備していたミエルさんがいた。寝起きなのに、もう戦う準備をしている。


「ぼーっと見てないで、お前も起きたのなら準備しろ」
「あ、すみません」


 傍らで何かを書いているミントさんから言われて、僕も弓と矢筒を用意する。


「疲れは取れたか?」
「少しは取れました。ありがとうございます、ミントさん」
「その感謝の気持ちは珍しい設計図で返してくれ。ホウリに言えば用意する筈だ」
「ミントさんらしいですね。分かりました。ホウリさんに伝えておきますね」
「そうしてくれ。俺はもう寝る。あとは任せたぞ」
「分かりました」


 ミントさんが大きな欠伸をしつつ、梯子の方へと歩いていく。


「僕たちは警戒を続けますか」
「そうだな。弓で魔物を減らしつつ、異常が無いかを確認して──」
「ごきげんよう」


 突如、僕らの中に誰かが割って入って来た。


「ロワ!」
「ミエルさん!」


 僕たちは反射的に大剣と弓を構えて声がした方向へ構える。
 そこには前と同じようにメリゼさんが浮いていた。僕はトリシューラを取り出して、いつでも射られるように矢に番える。


「あなたはメリゼさんではないですよね?」
「何者だ?」
「悪いが楽しくお喋りをしている時間は無いんだ」
「どういうことだ?」
「お前らが知る必要は無い。だが、これだけは言える」


 メリゼさんは真剣な表情で両手を広げる。


「この街を今からぶっ壊す」
「な!?どういうことだ!?」
「こういう事だ!」


 メリゼさんが叫ぶと、空に向かって一直線に飛んでいった。
 そして、100mほど上昇すると、その姿は金色に光り始めた。メリゼさんの光でオダリムの街が昼間のように照らされる。


「なんだ!?」


 僕はトリシューラにMPを込めて攻撃体勢を整える。
 良く分からないけど、あれは何か不味い気がする!何かあれば全力で攻撃しないと!



「いくぞ!これが俺の全力だ!」


 放たれていた光が輪っかになって、夜の空に散っていく。瞬間、メリゼさんの体が大きくなって、無機質な体へ変化していく。


「何ですか、あれは……?」
「まるで神ではないか」


 白銀に輝く無機質な体。顔に当たる部分には目も鼻も口も無く、ひし形の突起が付いているだけだ。そして、腕は胴体に接着されておらず、緑色の光で繋がっている。足は無く、今まで見たどんな魔物の姿にも当てはまらない。
 体の上には天使の輪っかのようなものがあり神様のように見える。
 姿だけでも歪だけど、その大きさにも僕たちは驚愕する。


「デカすぎる……」
「王都のお城の何倍もありますよ」


 あんな巨大な腕で攻撃されたら外壁なんて意味が無い。瞬く間にオダリムは蹂躙されるだろう。



「何か分からないが凄いパワーを感じる!ロワ!」
「分かりました!撃ちます!」


 トリシューラにありったけのMPを込めてメリゼさんだったものに放つ。
 トリシューラは青い光となってメリゼさんだったものに向かって突き進む。そして、


「な、なんだと!?」


 メリゼさんだったものに命中する前に何かに阻まれて、トリシューラは砕け散った。


「嘘ですよね!?トリシューラはミエルさん以外に防がれるんですか!?」
「私も信じられないが、現に防がれている。何か他に手を考えないと」


 ミエルさんが動揺を抑えて必死に頭を回している。


「ロワはポーションでMPを回復させておいてくれ。またトリシューラを使う機会があるかもしれない」
「分かりました」


 僕も焦っちゃダメだ。今できることをしないと。
 ポーションを取り出して、少しずつ口に含む。MPは一気に回復すると気持ち悪くなってしまう。特訓はしたけど、いまだに満足に戦えない。気を付けて回復しないと。
 そう思っていると、メリゼさんだったものが両手を上に掲げた。


『我の名はカスケット。この街を滅ぼす神である』
「本当に神様なんでしょうか?」
「ありえん。神様はここにいる訳ない」
「ですよね」


 僕たちは本当の神様と話をしたことがあるから、これが神様じゃないことが分かっている。けど、街の人はどう思うだろうか。
 振り返って壁の上から街の様子を見てみる。すると、街の中はビックリして家から飛び出していた人が多くいた。


『え?何?』
『神様って言ってたよね?』


 カスケットの言葉に皆は混乱してるようだ。


「なんとしても街の人は守らないとな」
「ですね。MPの回復、完了しました」


 ポーションの瓶をアイテムボックスに仕舞い、カスケットを見上げる。


『今、神の鉄槌を貴様らに』


 そう言うと、カスケットの頭上に光の玉が出現した。そして、光の玉は徐々に大きくなっている。


「……あの玉が街に落ちたら不味くないですか?」
「……だな」


 僕たちは顔を引きつらせながら、カスケットを見上げる。
 これってどうすれば勝てるんだろうか。
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