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家で会えなければ職場に行けばいいじゃない
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ルイス様に会えない。それどころか故意に避けられているような気もする。ルイス様は朝はとんでもなく早く、夜帰ってくるのもとんでもなく遅い。というか私が日中活動すると疲れて早めに寝てしまうので、いつ帰宅しているのか分からないのだ。朝だってブラック企業勤めの経験のある私より早く起床するなんて。もしかして王宮はかなりブラック?
これは確認しなければいけないわ。ルイス様のお顔も見られるし一石二鳥!
そうと決まれば差し入れよ。料理長に相談しなければ。
バスケットにサンドイッチとフルーツを入れていざ出発。お供は私のリハビリをずっと手伝ってくれていたマリーだ。私と同じ十八だが、背が小さくて目がくりくりしていてとても可愛らしい。色々話しているうちに『アメリアさまってとても気さくな方だったのですね!』と言われ完全に打ち解けた。
城までは二十分余りの道のりである。公爵家の揺れない馬車でとても快適。
到着するとマリーが騎士団の詰め所まで行き、訪問可能か確認してくれた。ルイス様に逃げられないよう先触れなしで来たのよ。アメリアの記憶を辿っても嫌われた様子がないのに、避けられているのは何故か。これは直接確認するしかないでしょう!
「旦那様は執務室におられるそうですよ」
と、マリーが教えてくれた。
部屋までは若い騎士様が案内してくれるらしい。背が高くスラっとしいてアメリアが好きそうな美丈夫である。じろじろと上から下まで見られた後、ぶっきらぼうに「こちらです」と促された。感じ悪いな!
「おいルイス。お客さん」
「客? こんなところに……っ!?」
ルイス様は派手に椅子から落ちてしまった。
「大丈夫か!?」
「大丈夫ですか!?」
駆け寄ろうとしたが、一歩遅く若い騎士の方が早かった。
「いや、どうもない。すまん」
ドジなところもあるなんて、これがギャップ萌えというやつかしら。耳も真っ赤になってて可愛い。
またひとつルイス様の魅力を発見し、気分が良くなっていたところに、横から刺々しい声が部屋の中に響いた。
「で? ウチの副団長を惑わす稀代の悪女ってのは君のことかな?」
「な!? あまりにも失礼ではありませんか。アメリア様はそんなお方ではありません!」
マリーありがとう。かばってくれるその気持ちが嬉しいわ。
「それをお答えする前に、あなたのお名前を教えて頂けませんか?」
「ブラオール騎士団団長、ブライアン・ノックスだ」
顔には出さなかったが正直驚いた。名前は知ってたけどね。こんなに若いと思わなかっただけで。言い終わったあと髪をかき上げるキザったらしい仕草が癪に触るわ。自分が男前と分かってる奴ってこういう所が嫌なのよ。あ、絵実が出てきてる。いやね、ホホホ。
「まあ。あなたが戦場に赴けば、雑草も残らない程の強さとお聞きしました。そんなお方とお会いできるなんて光栄ですわ」
「こちらこそ。俺もあなたには会いたいと思っていたんでね」
「それは先ほどの質問に関係しておりますか?」
「まあね」
とりあえず座って話そう、となり、マリーが騎士団の厨房を借りて紅茶を淹れてくれた。一緒に食べようとマリーも誘ったが、この雰囲気のせいなのか固辞された。
「それで先ほどのお答えですが、わたくしにその自覚はありませんの。ですがノックス様がそう見えるのならそうなんでしょうね」
「初対面ですけど」と付け足し上品に微笑んだ。
「……すまない。私が悪いんだ」
それまで空気だったルイス様が喋った。え?もしかしてルイス様がそう思っているとか?それだったら話が変わってくるんですけど。何より私がショックだわ。
なんとなくその場が暗い雰囲気になり、早々にお開きになった。ルイス様から「今日は早く帰る」と言われたので今夜は起きて待っていようと思う。ノックス様からはずっと睨まれていたけどね!
これは確認しなければいけないわ。ルイス様のお顔も見られるし一石二鳥!
そうと決まれば差し入れよ。料理長に相談しなければ。
バスケットにサンドイッチとフルーツを入れていざ出発。お供は私のリハビリをずっと手伝ってくれていたマリーだ。私と同じ十八だが、背が小さくて目がくりくりしていてとても可愛らしい。色々話しているうちに『アメリアさまってとても気さくな方だったのですね!』と言われ完全に打ち解けた。
城までは二十分余りの道のりである。公爵家の揺れない馬車でとても快適。
到着するとマリーが騎士団の詰め所まで行き、訪問可能か確認してくれた。ルイス様に逃げられないよう先触れなしで来たのよ。アメリアの記憶を辿っても嫌われた様子がないのに、避けられているのは何故か。これは直接確認するしかないでしょう!
「旦那様は執務室におられるそうですよ」
と、マリーが教えてくれた。
部屋までは若い騎士様が案内してくれるらしい。背が高くスラっとしいてアメリアが好きそうな美丈夫である。じろじろと上から下まで見られた後、ぶっきらぼうに「こちらです」と促された。感じ悪いな!
「おいルイス。お客さん」
「客? こんなところに……っ!?」
ルイス様は派手に椅子から落ちてしまった。
「大丈夫か!?」
「大丈夫ですか!?」
駆け寄ろうとしたが、一歩遅く若い騎士の方が早かった。
「いや、どうもない。すまん」
ドジなところもあるなんて、これがギャップ萌えというやつかしら。耳も真っ赤になってて可愛い。
またひとつルイス様の魅力を発見し、気分が良くなっていたところに、横から刺々しい声が部屋の中に響いた。
「で? ウチの副団長を惑わす稀代の悪女ってのは君のことかな?」
「な!? あまりにも失礼ではありませんか。アメリア様はそんなお方ではありません!」
マリーありがとう。かばってくれるその気持ちが嬉しいわ。
「それをお答えする前に、あなたのお名前を教えて頂けませんか?」
「ブラオール騎士団団長、ブライアン・ノックスだ」
顔には出さなかったが正直驚いた。名前は知ってたけどね。こんなに若いと思わなかっただけで。言い終わったあと髪をかき上げるキザったらしい仕草が癪に触るわ。自分が男前と分かってる奴ってこういう所が嫌なのよ。あ、絵実が出てきてる。いやね、ホホホ。
「まあ。あなたが戦場に赴けば、雑草も残らない程の強さとお聞きしました。そんなお方とお会いできるなんて光栄ですわ」
「こちらこそ。俺もあなたには会いたいと思っていたんでね」
「それは先ほどの質問に関係しておりますか?」
「まあね」
とりあえず座って話そう、となり、マリーが騎士団の厨房を借りて紅茶を淹れてくれた。一緒に食べようとマリーも誘ったが、この雰囲気のせいなのか固辞された。
「それで先ほどのお答えですが、わたくしにその自覚はありませんの。ですがノックス様がそう見えるのならそうなんでしょうね」
「初対面ですけど」と付け足し上品に微笑んだ。
「……すまない。私が悪いんだ」
それまで空気だったルイス様が喋った。え?もしかしてルイス様がそう思っているとか?それだったら話が変わってくるんですけど。何より私がショックだわ。
なんとなくその場が暗い雰囲気になり、早々にお開きになった。ルイス様から「今日は早く帰る」と言われたので今夜は起きて待っていようと思う。ノックス様からはずっと睨まれていたけどね!
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