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アメリア・リックメラーの目覚め
しおりを挟むアメリア・リックメラー、十八歳。十七の時、ルイス・リックメラーに強く望まれ結婚。商魂逞しい子爵と、美しい子爵夫人の長女として生まれ、下に弟が二人いる。国中すべての令息が憧れ、傾国の美女と謳われた母方の祖母に似て、天使と見紛うばかりの麗しさ。
王太子に婚約者がいなければ、将来王妃にもなり得ただろうと言われていた。
アメリアはルイス様のことを特に嫌っているとかは無かったけど、好みは私と真逆。甘いマスクで優し気な顔立ちの男性が好きだった。特に好意を抱いた異性はいなかったようだが、この国一番の劇団に属する二枚目俳優に夢中だった。いわゆるアイドルの追っかけに近いのかな。アメリアは結婚に関しては程よく割り切っており、この結婚に不満はないようだった。ただルイス様の顔が怖いだけで。
看護師さんは侍女長で名前はヘレナ。ルイス様の乳母でもあったらしい。先生はリックメラー公爵家の専属医師でフェラー先生という。年齢の関係で引退を決めていたらしいが、説得されて公爵家のお抱えになった。
アメリアの細かな感情の変化などは詳しく分からないものの、大体の情報は入ってきたと思われる。これ以上のものになるとまた倒れてしまいそうなのでちょうどいいのだろう。後は何があっても自分で対処しろと。わたちゃんは結構スパルタなのかもしれない。
それでも状況が飲み込めて安堵したのは確かで、お礼を言わなければいけないのかな。
いやちょっと待って。間違えたのわたちゃんだよね。
やっぱり一発殴っとくんだった。ルイス様が私の好みなのはまた別の話よね。
目を開けたままボーっと一連の出来事を自分なりにまとめていると、お腹が空いてきた。それなりに余裕が出てきたってことかな。魂も定着したようだし。
私は考えることをやめてベッド横の紐を引いた。
しばらくすると控えめなノックの音がして、ヘレナが急ぎ足で入ってきた。
「アメリア様! お目覚めになられましたか!」
聞けば今度は三日眠っていたという。はっきり言って寝過ぎだ。
「心配かけてごめんなさい。もう大丈夫だと思うからまたよろしくお願いするわね」
にこりと微笑むとヘレナは真っ赤な顔をして「て……天使」と言いながらフラフラと部屋を出て行った。
天使?隠語か何かかしら。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
それから私はリハビリに励んだ。食事は消化の良いものから固形物へ。若い侍女に付き添ってもらいながら、歩行訓練を兼ての散歩。体力が落ちていたのできつかったが、公爵邸のお庭が素晴らしかったので頑張れた。そして二週間ほどで普段の生活ができるようになった。
その間、ルイス様のお顔を見ることはなかった。
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