異世界転生したら顔面凶器の公爵に愛されました

牧野きうい

文字の大きさ
16 / 34

ルイスの信者

しおりを挟む
「何をおっしゃってるのか分かりません。わたくしは正真正銘子爵家で生まれました。それは間違いないことですわ」

 ここで役に立つポーカーフェイス。少しの動揺も見せずに言い切ってやったわ。それにしてもさすが団長をやってるだけあってノックス様は鋭い。すべて見透かしてしまいそうな目をしている。

「まあいいけど」

 そう言いながら傍に控えているヘレナに紅茶のおかわりを要求していた。

「これから話すことは他言無用だ」
「もちろんですわ」

 本来は聞いてはいけない内容なんだろう。それでも私は、ルイス様に関わることならどんなことでも知っておきたい。

「いまこの国に、性質の悪い薬が入り込んでいる」

 先ほどお茶会で聞いたものと一緒かしら。しかし余計な話はしない方がいいだろう。

「騎士団で確認されたのは最近だが、かなり前から入ってきていると思っている」

 それは特徴として、花を煮詰めたような濃く甘い匂いがするそうだ。部屋の中で香のように炊いて使っていたと思われる。既に火は消えた後だったが、煙を少し吸っただけのメイドが昏倒したとか。香炉には木片が残っていたという。
 ある貴族の屋敷の一室だったらしいのだが、発見した時情事の跡があり、一人残されていた女性はまだ意識が戻っていなかった。だが一昨日のこと。目を覚ましたかと思えば訳の分からないことを喚いて暴れたのだ。鎮静剤を打たれて眠らされているが、何をしでかすか分からないので監視付きである。

 その相手を捜査していたところ、最近羽振りの良くなった商人だったそうで、昨日発見された時にはこちらも既に錯乱状態だった。そして証言を集めていたところ隣国との関わりが分かったのだ。

「いまその二人はまともに話せる状態じゃない。完全な証拠も無いのに訪問を中止することはできないからな。それでルイスを殿下につけた。殿下はルイスを信頼しているのでな」

 ルイス様は何年か前に、殿下の命をお助けしたことがあると聞いた。お顔の傷がその時の傷だとも。それに戦争があったのも十年以内の出来事だと聞く。平和ボケしている私には、どちらもピンとこなかった。

「それにあいつルイスはただ立っているだけで抑止力にもなる」

「俺にはできない芸当だ」と皮肉ではなく心からそう言っているように見えた。

「ルイスには腹芸ができない。心が真っ直ぐなんだよ。心理戦で有利に持っていくのが圧倒的に下手でね。その代わり剣を抜いてしまえば一騎当千。敵をすべてなぎ倒していく」

 何となくお強いのは察していたけど、身近にいる人から聞くと現実味を帯びてくる。

「私の手柄になっているものは、ほとんどあいつの功績だ。あいつは人前に出るのを好まないからな」

 ルイス様の話をしているノックス様は、段々と表情が柔らかくなってくるのが分かった。

「俺たちは色んなことを補い合って長い間やってきた。だからルイスを煩わすやつは、誰であろうと消してやろうかと思ったけど──」

 ノックス様の顔が急変し、突き刺すような目で私を見た。

「ま、いまのところは大丈夫かな」

 そう言うと「見送りはいらないよ」とあっさり帰って行った。

 私もしかして消されるところだった?さすが騎士団の団長なだけあって圧がすごい。何だか悔しかった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

冷徹団長の「ここにいろ」は、騎士団公認の“抱きしめ命令”です

星乃和花
恋愛
⭐︎完結済ー全16話+後日談5話⭐︎ 王都最硬派、規律と責任の塊――騎士団長ヴァルド・アークライトは、夜の見回り中に路地で“落とし物”を拾った。 ……いや、拾ったのは魔物の卵ではなく、道端で寝ていた少女だった。しかも目覚めた彼女は満面の笑みで「落とし物です!拾ってくださってありがとうございます!」と言い張り、団長の屋敷を“保護施設”だと勘違いして、掃除・料理・当番表作りに騎士の悩み相談まで勝手に開始。 追い出せば泣く、士気は落ちる、そして何より――ヴァルド自身の休息が、彼女の存在に依存し始めていく。 無表情のまま「危ないから、ここにいろ」と命令し続ける団長に、周囲はざわつく。「それ、溺愛ですよ」 騎士団内ではついに“団長語翻訳係”まで誕生し、命令が全部“愛の保護”に変換されていく甘々溺愛コメディ!

前世の記憶を取り戻した元クズ令嬢は毎日が楽しくてたまりません

Karamimi
恋愛
公爵令嬢のソフィーナは、非常に我が儘で傲慢で、どしうようもないクズ令嬢だった。そんなソフィーナだったが、事故の影響で前世の記憶をとり戻す。 前世では体が弱く、やりたい事も何もできずに短い生涯を終えた彼女は、過去の自分の行いを恥、真面目に生きるとともに前世でできなかったと事を目いっぱい楽しもうと、新たな人生を歩み始めた。 外を出て美味しい空気を吸う、綺麗な花々を見る、些細な事でも幸せを感じるソフィーナは、険悪だった兄との関係もあっという間に改善させた。 もちろん、本人にはそんな自覚はない。ただ、今までの行いを詫びただけだ。そう、なぜか彼女には、人を魅了させる力を持っていたのだ。 そんな中、この国の王太子でもあるファラオ殿下の15歳のお誕生日パーティに参加する事になったソフィーナは… どうしようもないクズだった令嬢が、前世の記憶を取り戻し、次々と周りを虜にしながら本当の幸せを掴むまでのお話しです。 カクヨムでも同時連載してます。 よろしくお願いします。

王女様は温かいごはんが食べたい ~冷えた王宮料理を変えたら、オープンキッチンと政略婚約がついてきました~

しおしお
恋愛
異世界の王女リリアーヌは、前世の記憶を持つ転生者。 豪華絢爛な王宮で暮らし始めた彼女だったが、ひとつだけどうしても耐えられないことがあった。 ――食事が、冷めているのだ。 どれほど立派な料理でも、ぬるいスープや冷めた肉ではホッとできない。 「温かいごはんが食べたい」 そのささやかな願いを口にしたことから、王宮ではなぜか大騒動が巻き起こる。 地下厨房からの高速搬送。 専用レーンを爆走するカートメイド。 扉の開閉に命をかけるオープナー。 ついには食堂に火を持ち込むオープンキッチンまで誕生して――!? 温かさは、ホッとさせてくれる。 それは料理だけではなく、人との距離まで少しずつ変えていくものだった。 冷えた王宮に湯気と笑顔を取り戻す、 食と温かさをめぐる宮廷日常コメディ! -

我儘令嬢なんて無理だったので小心者令嬢になったらみんなに甘やかされました。

たぬきち25番
恋愛
「ここはどこですか?私はだれですか?」目を覚ましたら全く知らない場所にいました。 しかも以前の私は、かなり我儘令嬢だったそうです。 そんなマイナスからのスタートですが、文句はいえません。 ずっと冷たかった周りの目が、なんだか最近優しい気がします。 というか、甘やかされてません? これって、どういうことでしょう? ※後日談は激甘です。  激甘が苦手な方は後日談以外をお楽しみ下さい。 ※小説家になろう様にも公開させて頂いております。  ただあちらは、マルチエンディングではございませんので、その関係でこちらとは、内容が大幅に異なります。ご了承下さい。  タイトルも違います。タイトル:異世界、訳アリ令嬢の恋の行方は?!~あの時、もしあなたを選ばなければ~

神様の手違いで、おまけの転生?!お詫びにチートと無口な騎士団長もらっちゃいました?!

カヨワイさつき
恋愛
最初は、日本人で受験の日に何かにぶつかり死亡。次は、何かの討伐中に、死亡。次に目覚めたら、見知らぬ聖女のそばに、ポツンとおまけの召喚?あまりにも、不細工な為にその場から追い出されてしまった。 前世の記憶はあるものの、どれをとっても短命、不幸な出来事ばかりだった。 全てはドジで少し変なナルシストの神様の手違いだっ。おまけの転生?お詫びにチートと無口で不器用な騎士団長もらっちゃいました。今度こそ、幸せになるかもしれません?!

山賊な騎士団長は子にゃんこを溺愛する

紅子
恋愛
この世界には魔女がいる。魔女は、この世界の監視者だ。私も魔女のひとり。まだ“見習い”がつくけど。私は見習いから正式な魔女になるための修行を厭い、師匠に子にゃんこに変えれた。放り出された森で出会ったのは山賊の騎士団長。ついていった先には兄弟子がいい笑顔で待っていた。子にゃんこな私と山賊団長の織り成すほっこりできる日常・・・・とは無縁な。どう頑張ってもコメディだ。面倒事しかないじゃない!だから、人は嫌いよ~!!! 完結済み。 毎週金曜日更新予定 00:00に更新します。 R15は、念のため。 自己満足の世界に付き、合わないと感じた方は読むのをお止めください。設定ゆるゆるの思い付き、ご都合主義で書いているため、深い内容ではありません。さらっと読みたい方向けです。矛盾点などあったらごめんなさい(>_<)

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

そのご寵愛、理由が分かりません

秋月真鳥
恋愛
貧乏子爵家の長女、レイシーは刺繍で家計を支える庶民派令嬢。 幼いころから前世の夢を見ていて、その技術を活かして地道に慎ましく生きていくつもりだったのに—— 「君との婚約はなかったことに」 卒業パーティーで、婚約者が突然の裏切り! え? 政略結婚しなくていいの? ラッキー! 領地に帰ってスローライフしよう! そう思っていたのに、皇帝陛下が現れて—— 「婚約破棄されたのなら、わたしが求婚してもいいよね?」 ……は??? お金持ちどころか、国ごと背負ってる人が、なんでわたくしに!? 刺繍を褒められ、皇宮に連れて行かれ、気づけば妃教育まで始まり—— 気高く冷静な陛下が、なぜかわたくしにだけ甘い。 でもその瞳、どこか昔、夢で見た“あの少年”に似ていて……? 夢と現実が交差する、とんでもスピード婚約ラブストーリー! 理由は分からないけど——わたくし、寵愛されてます。 ※毎朝6時、夕方18時更新! ※他のサイトにも掲載しています。

処理中です...