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ブラオール騎士団団長vs.リックメラー公爵夫人
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「え? 帰らない?」
お茶会から戻ってきた私は着替えを済ませ、自室で休んでいた。しばらくしてマリーが駆け込んできたのだ。ルイス様が今夜帰宅しない、と。
「何かあったの?」
目が覚めて会えない日から一転、想いが通じた日からは一日も欠かさず帰って来ていた。マリーが妙に焦っていて、私は血の気が引いた。
「それが……直接ノックス団長様が伝言を──」
最後まで聞かずに部屋を飛び出した。用は終わったとばかりに帰ろうとするノックス様を引き留め、何とか応接間に引き入れた。
「へえ。その様子じゃ噂は本当だったの?」
「なんの噂ですか?」
「君が夜会でルイスに愛の告白をしたとか」
この話何度目だろうか。噂広がり過ぎでしょ。
「そ、そんなことはどうでも良いのです。ルイス様はご無事なのですか?」
「無事?」
なにを言ってるんだと首を傾げんばかりに不思議そうな顔をする。
「俺はルイスに急な職務ができたから、しばらく帰らないって伝えにきただけだけど?」
近くに用事があったついでにね、と優雅に足を組むその姿は外見だけは貴公子そのものである。見た目だけね。
でもお仕事で良かった……じゃない!今なんて言ったの?
「しばらく、なんて聞いてませんけど」
ノックス様をじろりと睨んだ。
「俺は言ったよ。そっちが勘違いしただけじゃないのか」
何故だろう。ノックス様の言っていることがたとえ正論だとしても、この胸に残るもやもやとした気持ち。
「ノックス団長は私のことがお嫌いですよね」
「まあ好きではないかな」
「正直ですこと」
お互いに笑顔ではあるが、目は笑っていない。先ほどヘレナが淹れてくれた紅茶も、手つかずのまま冷めていくばかり。
「どうぞお飲みくださいな。ルイス様が自ら選んで購入した茶葉ですのよ」
嘘だけど。
「いただくよ」
ノックス様はゴクゴクと一気に紅茶を飲み干した。分かりやすい。すごく分かりやすい。
「それで、どのくらいの期間のお仕事なのですか? 差し入れくらいはできますの?」
「無理だな。明日の早朝から隣国へ向けて出発するからね」
今回は王太子殿下が成人してからの初の外国公務で、隣国の皇太子の結婚式に陛下の名代として赴くらしい。その護衛として急遽ルイス様が加わることになったそうだ。それにしても急すぎる。殿下の隣国訪問はずいぶん前から決まっていたことなのに。
「それは、ルイス様が護衛につかなければいけない程の有事が起こりうる、ということでしょうか」
「ふーん。意外と聡いんだね。君、ほんとうに子爵令嬢だったの?」
ぎくり。
お茶会から戻ってきた私は着替えを済ませ、自室で休んでいた。しばらくしてマリーが駆け込んできたのだ。ルイス様が今夜帰宅しない、と。
「何かあったの?」
目が覚めて会えない日から一転、想いが通じた日からは一日も欠かさず帰って来ていた。マリーが妙に焦っていて、私は血の気が引いた。
「それが……直接ノックス団長様が伝言を──」
最後まで聞かずに部屋を飛び出した。用は終わったとばかりに帰ろうとするノックス様を引き留め、何とか応接間に引き入れた。
「へえ。その様子じゃ噂は本当だったの?」
「なんの噂ですか?」
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この話何度目だろうか。噂広がり過ぎでしょ。
「そ、そんなことはどうでも良いのです。ルイス様はご無事なのですか?」
「無事?」
なにを言ってるんだと首を傾げんばかりに不思議そうな顔をする。
「俺はルイスに急な職務ができたから、しばらく帰らないって伝えにきただけだけど?」
近くに用事があったついでにね、と優雅に足を組むその姿は外見だけは貴公子そのものである。見た目だけね。
でもお仕事で良かった……じゃない!今なんて言ったの?
「しばらく、なんて聞いてませんけど」
ノックス様をじろりと睨んだ。
「俺は言ったよ。そっちが勘違いしただけじゃないのか」
何故だろう。ノックス様の言っていることがたとえ正論だとしても、この胸に残るもやもやとした気持ち。
「ノックス団長は私のことがお嫌いですよね」
「まあ好きではないかな」
「正直ですこと」
お互いに笑顔ではあるが、目は笑っていない。先ほどヘレナが淹れてくれた紅茶も、手つかずのまま冷めていくばかり。
「どうぞお飲みくださいな。ルイス様が自ら選んで購入した茶葉ですのよ」
嘘だけど。
「いただくよ」
ノックス様はゴクゴクと一気に紅茶を飲み干した。分かりやすい。すごく分かりやすい。
「それで、どのくらいの期間のお仕事なのですか? 差し入れくらいはできますの?」
「無理だな。明日の早朝から隣国へ向けて出発するからね」
今回は王太子殿下が成人してからの初の外国公務で、隣国の皇太子の結婚式に陛下の名代として赴くらしい。その護衛として急遽ルイス様が加わることになったそうだ。それにしても急すぎる。殿下の隣国訪問はずいぶん前から決まっていたことなのに。
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「ふーん。意外と聡いんだね。君、ほんとうに子爵令嬢だったの?」
ぎくり。
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