異世界転生したら顔面凶器の公爵に愛されました

牧野きうい

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予想通りの人物

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 目が覚めると辺りは暗かった。しばらくすると目が慣れてきて、少しずつ見えるようになってきた。あれからどこかの屋敷に運ばれ、ベッドに寝かされていたようだ。ドアを確認すると鍵がかかっており、窓は開くが鉄格子が嵌っている。ここは半地下になっていて、閉じ込める為だけの部屋に見えた。

 ふとベッドサイドを見ると、香炉が置いてあった。ものすごく嫌な予感がした。外を見ると草が生い茂っていたので、香炉を鉄格子の隙間から投げ捨ててやった。草がクッションとなり、伸びた雑草がうまく隠してくれたようだ。あまり手入れがされていない庭だったのが幸いした。

 他に何かできることはないかと物色していると、鍵が開く音がしたので慌ててソファーに座った。

「やあ。目が覚めていたのか。ようこそ私の天使」
「ごきげんよう、モーヴァ様。わたくしに何か御用でして?」
「つれないなアメリア。フランツと呼んでくれてもいいのだよ」

 主犯は思った通りフランツ・モーヴァ。想像通り過ぎて涙が出るわ。そして相変わらず気持ちが悪い。

「親しくもない方を、名前でお呼びするわけにはいきませんわ。お断り申し上げます」

 その前に、私の名前も呼ばないで欲しいけどね。

「私の天使。照れているんだね。私たちは生まれる前から結ばれることが決まっていたんだ。待たせてしまったのは悪かったが、素直になっていいんだよ。全部分かっているから」

 全く話が通じない。同じ人間なの?同じ言葉を話しているの?ストレートに言わないと分からないの?

「ありえません。わたくしが愛しているのはこの世でただひとり。ルイス・リックメラー様ですわ!」

 フランツはやれやれ仕方がないなというような態度で、諭すように話しかけてきた。

「いけない子だな。洗脳がかなり酷いようだ。でも大丈夫。直ぐに解けるからね」

 と言いながら香炉があったところに目をむけた。その瞬間顔が険しいものに変わり「チッ。用意しておけと言ったのに役立たずめ」と吐き出すように毒づいた。捨てておいて良かった。

「この屋敷は街からかなり離れた場所にある。人も滅多に通らないから叫んでも無駄だよ。ただ、私も無理強いはしたくないから、気持ちよくなってから治療をしようね」

 そして私の手を取ろうとしたが当然拒否。

「早くどうにかしなければ、私がおかしくなりそうだな」

 もうおかしいです。

「夕食を用意させるから、待っていてくれ。私も同席したいのだが用事ができてね」

 香炉の件かしら?何でもいいから早く出て行って欲しい。

「それじゃあまた明日。私の天使」

 そう言いながらウインクをして、満足したのかやっと部屋を出て行った。

 しばらくしてメイドらしき女性が夕食を持ってきた。パンにシチュー、サラダと普通のメニューだった。甘い匂いはしなかったが、何が入っているか分からないので手をつけなかった。
 女性は、私と口をきくなと前もって言われているのか、目も合わせてもらえなかった。

 今夜も月が出ている。ルイス様は今どうしているかしら。

 ルイス様に会いたい──。
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