33 / 34
私の正体
しおりを挟む
あれからしばらくして、私は騎士団へ呼ばれた。個人の聴取と事件の全容を教えてもらう為だ。
あの時一緒にいたヘレナや御者、騎士たちは無事だった。
ヘレナは軽い脳震盪で済んだようだった。だが私をすんなり誘拐されて、ひたすら謝罪をされてしまった。そんなことは気にせず、頭に怪我をしたのだからしばらく休むようにと言っておいた。
騎士二人は重傷を負ったが命に別状は無かった。
ちなみに御者は無傷だった。
私のせいで怪我をしてしまったのは、本当に申し訳なかった。しかし謝ってしまうと、逆に主人を守り切れなかったことで、なお自分を責めてしまうからとルイス様に言われたのでやめておいた。
モーヴァ前侯爵に関しては、前回のお礼もできていなかったので、今回の分も合わせて丁寧に挨拶をしておいた。何故か逆に謝られてしまったけれど。そして涙ぐんでいらっしゃった。
「よくやるよね。外に知らせたのはその指輪で?」
「ええ、そうです。一人でも見てくれた方がいて良かったですわ」
私はルイス様からもらった指輪を、愛おし気に撫でた。
「あいつさ……フランツだけど」
「はい」
「びっくりするぐらいペラペラと喋るんだよね。最後の言葉が効いたのかな」
ノックス様はじろりとこちらを見た。あれだけ近くにいたのだから聞こえて当然ね。まあ半分聞かせるために言ったんだけど。ノックス様の顔、見ものだったもの。
「なんのことでしょう?」
「君って本当は何者なの?」
「あら。返答によってはわたくしを消しますか?」
「さあどうかな」
この掴みどころのないところが嫌いなんだよね。お互い様だけど。でも助けてくれたことは感謝しているから……。
「ノックス団長には真実を申しますわ」
たっぷりと間を取って教えてあげた。
「わたくし実は月から参りましたの。本当は帰らなければいけないのですけれど、人間の王子様に恋をしてしまったので、残ることにしたのですわ」
「……はあ、王子様ね」
ノックス団長は、もちろん納得がいってない顔だった。だがこれ以上聞いても無駄だと踏んだのだろう。
「ルイスがいい男なのは認めるけど、王子って。ははっ」
笑うってルイス様にすごく失礼なんですけど。何か言い返してやろうと思った時、陛下に謁見していたルイス様が戻ってきた。
「楽しそうだな」
ルイス様が不機嫌な声を隠そうともせず、ノックス様を睨んだ。
「ルイス様。ノックス団長には、わたくし達の惚気話を聞いて頂いておりましたの」
「そ、そうか」
これは……。ルイス様の照れが出たわ。最高!……好き。
どこかで「とんだ食わせ物だな」と聞こえたが、いつものように無視をしてルイス様に微笑んだ。
あの時一緒にいたヘレナや御者、騎士たちは無事だった。
ヘレナは軽い脳震盪で済んだようだった。だが私をすんなり誘拐されて、ひたすら謝罪をされてしまった。そんなことは気にせず、頭に怪我をしたのだからしばらく休むようにと言っておいた。
騎士二人は重傷を負ったが命に別状は無かった。
ちなみに御者は無傷だった。
私のせいで怪我をしてしまったのは、本当に申し訳なかった。しかし謝ってしまうと、逆に主人を守り切れなかったことで、なお自分を責めてしまうからとルイス様に言われたのでやめておいた。
モーヴァ前侯爵に関しては、前回のお礼もできていなかったので、今回の分も合わせて丁寧に挨拶をしておいた。何故か逆に謝られてしまったけれど。そして涙ぐんでいらっしゃった。
「よくやるよね。外に知らせたのはその指輪で?」
「ええ、そうです。一人でも見てくれた方がいて良かったですわ」
私はルイス様からもらった指輪を、愛おし気に撫でた。
「あいつさ……フランツだけど」
「はい」
「びっくりするぐらいペラペラと喋るんだよね。最後の言葉が効いたのかな」
ノックス様はじろりとこちらを見た。あれだけ近くにいたのだから聞こえて当然ね。まあ半分聞かせるために言ったんだけど。ノックス様の顔、見ものだったもの。
「なんのことでしょう?」
「君って本当は何者なの?」
「あら。返答によってはわたくしを消しますか?」
「さあどうかな」
この掴みどころのないところが嫌いなんだよね。お互い様だけど。でも助けてくれたことは感謝しているから……。
「ノックス団長には真実を申しますわ」
たっぷりと間を取って教えてあげた。
「わたくし実は月から参りましたの。本当は帰らなければいけないのですけれど、人間の王子様に恋をしてしまったので、残ることにしたのですわ」
「……はあ、王子様ね」
ノックス団長は、もちろん納得がいってない顔だった。だがこれ以上聞いても無駄だと踏んだのだろう。
「ルイスがいい男なのは認めるけど、王子って。ははっ」
笑うってルイス様にすごく失礼なんですけど。何か言い返してやろうと思った時、陛下に謁見していたルイス様が戻ってきた。
「楽しそうだな」
ルイス様が不機嫌な声を隠そうともせず、ノックス様を睨んだ。
「ルイス様。ノックス団長には、わたくし達の惚気話を聞いて頂いておりましたの」
「そ、そうか」
これは……。ルイス様の照れが出たわ。最高!……好き。
どこかで「とんだ食わせ物だな」と聞こえたが、いつものように無視をしてルイス様に微笑んだ。
1
あなたにおすすめの小説
辺境のスローライフを満喫したいのに、料理が絶品すぎて冷酷騎士団長に囲い込まれました
腐ったバナナ
恋愛
異世界に転移した元会社員のミサキは、現代の調味料と調理技術というチート能力を駆使し、辺境の森で誰にも邪魔されない静かなスローライフを送ることを目指していた。
しかし、彼女の作る絶品の料理の香りは、辺境を守る冷酷な「鉄血」騎士団長ガイウスを引き寄せてしまった。
【完結】夜会で借り物競争をしたら、イケメン王子に借りられました。
櫻野くるみ
恋愛
公爵令嬢のセラフィーナには生まれつき前世の記憶があったが、覚えているのはくだらないことばかり。
そのどうでもいい知識が一番重宝されるのが、余興好きの国王が主催する夜会だった。
毎年余興の企画を頼まれるセラフィーナが今回提案したのは、なんと「借り物競争」。
もちろん生まれて初めての借り物競争に参加をする貴族たちだったが、夜会は大いに盛り上がり……。
気付けばセラフィーナはイケメン王太子、アレクシスに借りられて、共にゴールにたどり着いていた。
果たしてアレクシスの引いたカードに書かれていた内容とは?
意味もなく異世界転生したセラフィーナが、特に使命や運命に翻弄されることもなく、王太子と結ばれるお話。
とにかくツッコミどころ満載のゆるい、ハッピーエンドの短編なので、気軽に読んでいただければ嬉しいです。
完結しました。
小説家になろう様にも投稿しています。
小説家になろう様への投稿時から、タイトルを『借り物(人)競争』からただの『借り物競争』へ変更いたしました。
【完結済】私、地味モブなので。~転生したらなぜか最推し攻略対象の婚約者になってしまいました~
降魔 鬼灯
恋愛
マーガレット・モルガンは、ただの地味なモブだ。前世の最推しであるシルビア様の婚約者を選ぶパーティーに参加してシルビア様に会った事で前世の記憶を思い出す。 前世、人生の全てを捧げた最推し様は尊いけれど、現実に存在する最推しは…。 ヒロインちゃん登場まで三年。早く私を救ってください。
魔王様は転生王女を溺愛したい
みおな
恋愛
私はローズマリー・サフィロスとして、転生した。サフィロス王家の第2王女として。
私を愛してくださるお兄様たちやお姉様、申し訳ございません。私、魔王陛下の溺愛を受けているようです。
*****
タイトル、キャラの名前、年齢等改めて書き始めます。
よろしくお願いします。
転生したので推し活をしていたら、推しに溺愛されました。
ラム猫
恋愛
異世界に転生した|天音《あまね》ことアメリーは、ある日、この世界が前世で熱狂的に遊んでいた乙女ゲームの世界であることに気が付く。
『煌めく騎士と甘い夜』の攻略対象の一人、騎士団長シオン・アルカス。アメリーは、彼の大ファンだった。彼女は喜びで飛び上がり、推し活と称してこっそりと彼に贈り物をするようになる。
しかしその行為は推しの目につき、彼に興味と執着を抱かれるようになったのだった。正体がばれてからは、あろうことか美しい彼の側でお世話係のような役割を担うことになる。
彼女は推しのためならばと奮闘するが、なぜか彼は彼女に甘い言葉を囁いてくるようになり……。
※この作品は、『小説家になろう』様『カクヨム』様にも投稿しています。
〘完〙なぜかモブの私がイケメン王子に強引に迫られてます 〜転生したら推しのヒロインが不在でした〜
hanakuro
恋愛
転生してみたら、そこは大好きな漫画の世界だった・・・
OLの梨奈は、事故により突然その生涯閉じる。
しかし次に気付くと、彼女は伯爵令嬢に転生していた。しかも、大好きだった漫画の中のたったのワンシーンに出てくる名もないモブ。
モブならお気楽に推しのヒロインを観察して過ごせると思っていたら、まさかのヒロインがいない!?
そして、推し不在に落胆する彼女に王子からまさかの強引なアプローチが・・
王子!その愛情はヒロインに向けてっ!
私、モブですから!
果たしてヒロインは、どこに行ったのか!?
そしてリーナは、王子の強引なアプローチから逃れることはできるのか!?
イケメン王子に翻弄される伯爵令嬢の恋模様が始まる。
神様の手違いで、おまけの転生?!お詫びにチートと無口な騎士団長もらっちゃいました?!
カヨワイさつき
恋愛
最初は、日本人で受験の日に何かにぶつかり死亡。次は、何かの討伐中に、死亡。次に目覚めたら、見知らぬ聖女のそばに、ポツンとおまけの召喚?あまりにも、不細工な為にその場から追い出されてしまった。
前世の記憶はあるものの、どれをとっても短命、不幸な出来事ばかりだった。
全てはドジで少し変なナルシストの神様の手違いだっ。おまけの転生?お詫びにチートと無口で不器用な騎士団長もらっちゃいました。今度こそ、幸せになるかもしれません?!
異世界に喚ばれた私は二人の騎士から逃げられない
紅子
恋愛
異世界に召喚された・・・・。そんな馬鹿げた話が自分に起こるとは思わなかった。不可抗力。女性の極めて少ないこの世界で、誰から見ても外見中身とも極上な騎士二人に捕まった私は山も谷もない甘々生活にどっぷりと浸かっている。私を押し退けて自分から飛び込んできたお花畑ちゃんも素敵な人に出会えるといいね・・・・。
完結済み。全19話。
毎日00:00に更新します。
R15は、念のため。
自己満足の世界に付き、合わないと感じた方は読むのをお止めください。設定ゆるゆるの思い付き、ご都合主義で書いているため、深い内容ではありません。さらっと読みたい方向けです。矛盾点などあったらごめんなさい(>_<)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる