異世界転生したら顔面凶器の公爵に愛されました

牧野きうい

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私の正体

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 あれからしばらくして、私は騎士団へ呼ばれた。個人の聴取と事件の全容を教えてもらう為だ。

 あの時一緒にいたヘレナや御者、騎士たちは無事だった。
 ヘレナは軽い脳震盪で済んだようだった。だが私をすんなり誘拐されて、ひたすら謝罪をされてしまった。そんなことは気にせず、頭に怪我をしたのだからしばらく休むようにと言っておいた。

 騎士二人は重傷を負ったが命に別状は無かった。
 ちなみに御者は無傷だった。

 私のせいで怪我をしてしまったのは、本当に申し訳なかった。しかし謝ってしまうと、逆に主人を守り切れなかったことで、なお自分を責めてしまうからとルイス様に言われたのでやめておいた。

 モーヴァ前侯爵に関しては、前回のお礼もできていなかったので、今回の分も合わせて丁寧に挨拶をしておいた。何故か逆に謝られてしまったけれど。そして涙ぐんでいらっしゃった。


「よくやるよね。外に知らせたのはその指輪で?」
「ええ、そうです。一人でも見てくれた方がいて良かったですわ」

 私はルイス様からもらった指輪を、愛おし気に撫でた。

「あいつさ……フランツだけど」
「はい」
「びっくりするぐらいペラペラと喋るんだよね。最後の言葉が効いたのかな」

 ノックス様はじろりとこちらを見た。あれだけ近くにいたのだから聞こえて当然ね。まあ半分聞かせるために言ったんだけど。ノックス様の顔、見ものだったもの。

「なんのことでしょう?」
「君って本当は何者なの?」
「あら。返答によってはわたくしを消しますか?」
「さあどうかな」

 この掴みどころのないところが嫌いなんだよね。お互い様だけど。でも助けてくれたことは感謝しているから……。

「ノックス団長には真実を申しますわ」

 たっぷりと間を取って教えてあげた。

「わたくし実は月から参りましたの。本当は帰らなければいけないのですけれど、人間の王子様に恋をしてしまったので、残ることにしたのですわ」
「……はあ、王子様ね」

 ノックス団長は、もちろん納得がいってない顔だった。だがこれ以上聞いても無駄だと踏んだのだろう。

「ルイスがいい男なのは認めるけど、王子って。ははっ」

 笑うってルイス様にすごく失礼なんですけど。何か言い返してやろうと思った時、陛下に謁見していたルイス様が戻ってきた。

「楽しそうだな」

 ルイス様が不機嫌な声を隠そうともせず、ノックス様を睨んだ。

「ルイス様。ノックス団長には、わたくし達の惚気話を聞いて頂いておりましたの」
「そ、そうか」

 これは……。ルイス様の照れが出たわ。最高!……好き。

 どこかで「とんだ食わせ物だな」と聞こえたが、いつものように無視をしてルイス様に微笑んだ。
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