【休止】天の声、実況、す。

佐橋 竜字

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【#05】歩く電波塔

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 ガチャリ。

「・・・はぁ~、なるほど・・・」
「・・・・・・」
「・・・ふぅ~ん・・・」
「・・・・・・」
「コレ」
「ハ、ハイ?」
 マルクスはとあるものを指さす。
 スーツケースに入っていたものは関節部で分解された機械人形だった。
「タダノ、ニンギョウデスヨ」
 マルクスは目を丸くし瞬くと、侮蔑を込めた笑い方をする。
「あんたは『コレ』を『ただの人形』って言うのか?」
「ハイ」
「はぁ~」
 あまりの即答に、マルクス氏のイラッ感を感じた。だって、彼が眼鏡をかちゃりとかけ直したもの。それが、彼が苛立った仕草だから。
「地球人舐めんな?」
「・・・エッ」
「えっ、じゃないよ。このコロニーオムニバスは12個ある地球コロニーでトップクラスの人材が集められた、称号『王冠クラウン』を得たゲートだ」
「『王冠クラウン』!?」
 マルクス氏はにたりと微笑む。
 あぁ、そういえば、『称号』なるものの説明をしていなかった。
 称号。
 これは宇宙銀河連盟が定めた、優秀な生命体に授ける言わば名誉ある勲章だ。その称号はいつ、どういう名前で与えられるのかは分からない。全ては宇宙銀河連盟協議会で決められるのだから。
「地球の言葉の綾で、『鞄の中に入って』一緒に夢の国に行きたい、そう言われたことがあるが、まさに今、コレ、だな」
「? ハ、ハァ・・・?」
「まだしらばっくれるのか。こいつの太腿にピンクの花びらの文様、一応メスか? 宇宙人は、一応メスをこんな鞄の中に詰め込んで、惑星を隠れて横断しているのか」
 機械の顔は表情が分からないものだ。
「ィ、ヤ、コレハ・・・」
「はっきり言えばいいか? 惑星ラトニアの『モズ』。元来肉体という概念のない情報体の生命体が、おたくの機人ボディ最新のエイヴィスシリーズver.5.3の体に適合してるって話」
「ッ!!!」
 アルファの口がアングリラ。
『ハァ、私たちの負けよアルファ』
 何処からともなく美しい透き通った声が聞こえた。
 スーツの中で分解されて折り込まれていた機械人形のパーツが、それぞれ宙に浮遊する。
 頭部が開眼すると、パーツが合体し、一体の人形になった。
『あーあ、上手くいくと思ったのに』
 その人形が、まるで地球のおフランス人形の如く、金髪碧眼のゴシックなファッションドレスを着こなす可憐な美少女に変身。
「へぇ、モズはそんなこともできるのか」
『あら? 会うのは初めて?』
「えぇ、モズは初めてかな。ここにはほぼほぼ『肉体ありき』の宇宙人が来るから。というかそうじゃないと地球に入れないルールだからね」
『・・・へぇ? 初めて見るのに、よくあたしがモズって分かったわね?』
「その機械人形と中身が適合してるといえど、微妙に周波数が合ってなかった。つまり、肉体と中身は別物。肉体を動かすのは中身だから、肉体という概念のない宇宙人で、こんなスーツケースにぶち込まれて怒り狂わなそうなやつで、モズかなって」
『・・・・・・は?』
「・・・スゴイ、ネ? ソンナンデワカッタノカ」
『いやいやいや! 分かられたくないね!? 最初はともかく後半よ! もはや一か八かの賭けじゃない!』
「? そうだけど? いや賭けっていうかあてずっぽう」
『・・・は?』
「こうやって、肉体に入れて地球に来る概念生命体は思ったよりいるんだよ。だけどまだモズには会ったことが無くて、モズの周波数は断トツに柔らかくて綺麗だ。それで、おれの中で候補は絞られたってわけ」
『・・・おかしな人間。さっきから、何? 周波数がどうのって。綺麗だって言われてもなんのこっちゃ分からないから褒められている気がしないんだけど』
 それに関しては、マルクス・ショーにしか分かり得ないことなので、苦笑を浮かべるほかないだろう。
『それで? あたしは捕まるの?』
「オネガイデス! カノジョヲロウヤニブチコマナイデ!」
「そ、そんなことはしないって。ちゃんと今から、肉体と中身の方の手続きをして、それを『彼女』として登録の後、もう一度許可すればいいから」
『え? いいの? 甘くない?』
「いや、登録もその中身の魂レベルを審査する班員がいるから。『彼』の審査に合格しないと惑星に帰すから」
『魂レベル?』
「地球では『人間性』っていうんだけど、宇宙では使えないから」
 アルファと機械人形は視線を交わす。
「シンサ、キチントウケヨウ」
『そうね。念願の地球に来れたもの』
 アルファはスーツケースを閉じた。
「ゴメイワクヲオカケシマシタ」
 マルクスは席に戻りコンピューターに向かうと、一枚の紙をプリントアウトした。
「はいこれ」
 それを機械人形に手渡す。
『これは?』
「ここから真っ直ぐ行って、15番レーンの『清掃班』に行くといい。これはおれからの、君達を見込んでの、お願い審査用紙だ」
 その紙の右下に、『マルクス・ショー』とサインが書かれてあった。
「おれのサイン付きだから、よほどのことがない限り、帰れ! なんてことはないから、そこは安心して」
『・・・・・・おぬし・・・! いい奴だな!』
 機械人形のおぬし、というのが何か気になった。
「アリガトウゴザイマス! マルクスサン、アナタニデアエテヨカッタデス」
「あー、うん。困ったらここにくればいい。いつでもいるから」
『うむ、そうするわ』
「最後に、あんた、名前は?」
『え?』
「概念でも個体だろ? 名前、あるだろ」
『・・・・・・』
 もじもじと恥ずかしそうにする機械人形、なんだか萌える、萌えてきた。目覚めそう。
『・・・レイナ』
「そうか、レイナか。じゃ、よい旅を」
『・・・うん』
 心なしか、機械でも嬉しそうな表情が分かった気がした。


「・・・・・・っと」
 マルクスは席に戻り、コンピューターに向かう。

▶ラトリア惑星モズ データ取得

▷解析

▷解析完了

▶データ保存

▶データ転送 MからUへ

▷データ送信完了

「はぁ、肉体なんて邪魔なだけだと思うんだけどなぁ」


 マルクス・ショー。
 地球在国籍不明、謎の多き青年。
 特技、他人の周波数が分かること。
 彼曰く、生命体には皆、固有の周波数を持っており、そのチャンネルに合わせると、その対象の思考が分かるという。
 今回の件は、恐らく既に、アルファの思考を読んでいたのではなかろうか。
 いや、これも推測に過ぎないが。
 彼はどうやら、情報生命体に興味があるらしい。
 彼こそ、肉体を捨て、魂という情報体だけになりたい人間、の一人なのかもしれない。
 
 例え、人じゃなくなったとしても。


【Profile.No.000121.マルクス・ショー 称号:歩く電波塔ヘルツウォーカー
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