18 / 34
【#14】ジンジャー・ピック
しおりを挟む
人狼ジンジャー・ピック。
調べたところ、彼の本当の母親は純粋な地球人、父親がグリーンテイル惑星の緑人だった。彼らは結婚してはいない。母親は身籠ったか、父親にはそのことを告げなかったのだろう。
彼女は一人、シングルマザーとして、ジンジャーを育てたのだから。
絶大なる「愛」で。
二人の親友とともに。
「・・・君のお母様『達』は凄いお人だね」
「え?」
ワンとジンジャーは、コロニー内の医療室に入室した。
ーピーンポーン♪
受付のベルを鳴らす。
「君が吸血狼に噛まれ、人狼になろうとも、今も変わらず君を愛してくれている」
ジンジャーは明後日の方を見、あははと苦笑を浮かべた。
「・・・寧ろ、『きゃわゆい~♡』とかハグ乱用してきますね。俺の義母親『達』はちと変わってます」
「あぁ、そうそう」
パタパタと二人に走り寄る足音が聞こえてくる。
「君のもう一人のお母様はぽやんとしておバカぶってるけど、物凄い策士だ」
「はっ、いやまさか」
「いや? 君の狼化を機会に、ようやく本性を見せてくれたよ」
「ほ、本性・・・」
「はぁ~い! お待たせしましたぁ」
「っ!?」
現れた、黒褐色赤髪のナイスバディの美女ナースに、何故かジンジャーが狼狽えた。
「なぁなななななななななんんんん」
ナースは目をきゅるんとさせて、ジンジャーとワンにウインクをする。
「あら、ジン君~」
「かあちゃん!?」
ほっほほほほほぅ!? え? このギャルナースがジンジャーのお母様っ!? いや、若過ぎね? はっはぁ~? この人が喜多氏に次ぐ、第二の育ての母親なのか。
「やだぁ、『ママ』って呼んでって、いつも言ってるのぉ! 何で喜多は喜多なのに、あたしは『かあちゃん』なの!? おかしくない!?」
「腰をくねらせるんじゃねぇよ! つか何でかあちゃんがここに!?」
「言ったろ? 君のお母様『達』は『凄い人』だって」
「え」
「彼女はここ、コロニー12の医療チームの管理責任者、ローサ・ベルベット。愛称、エンジェルローサだ」
「ご指名ありがとうございまぁす♡ エンジェルローサですぅ」
「ここはホストじゃねぇから! はぁ!? 親父だけじゃなくて何か!? かあちゃん宇宙人だったのか!?」
「まぁまぁその話も中で。君の怪我は痛そうだ」
「あら、本当ね。ぐちゃぐちゃじゃない、こっちに来て」
ジンジャーとワンはエンジェルローサの後についていく。その先は緊急治療室だ。
「げっ!?」
ジンジャーが入るなり声を上げた。それもそのはずで、治療室だというのに、アルコールの匂いが一切ない。この部屋にあるのは昔ながらの有機ディスプレイモニターとキーボートの数々であり、香るのは電機屋さんの匂いだ。その立ち並ぶ機械達の中央に、ちょこんと診察ベッドがあるだけ。
「な、何だこのゲームオタク部屋は!?」
「あ! 分かるぅ? ママね、超がつくほどのゲーマーだったの昔~」
「いやいや、まだまだ現役じゃないですか」
「えー? そうかなぁ」
看護婦ゲーマー? 新しいジャンルの開拓か。
「・・・はぁ? かあちゃん看護婦だろ!? ま、まさかこんな責任者だとは思ってなかったけどよ・・・」
「はい、ここに寝転がって」
「え、あ、あぁ」
渋々ジンジャーは診察ベッドに横になる。
「彼女は看護婦でも、機械精霊と契約した地球人でね」
「は、はぁっ!?」
「ふむふむ」
エンジェルローサは傷口を診察している。
「アンジュー」
彼女の呼びかけに、
「ぬわっ」
モニターいっぱいに、キャラクター化した白い兎が顔を出す。
『んー? なぁにー?』
可愛い。グッズ化希望だ。
「この子の傷、治して欲しいの」
『どれどれぇ?』
ジンジャーが顔をひきつらせている。
なぜなら、エンジェルローサが一つタブレットを持ち、その画面に白い兎が移動し、ジンジャーの傷口を診ているのだ。
『焼け焦げてるね、人体損傷レベルBだ。もう痛みの感覚を通り過ぎてる。あー解析完了、あっちゃー、墓守の粒子砲受けたのかぁ』
「うっそ! やだ! ジン君ったら、そんな弱さでアレを相手にしたの!? おバカね!」
「ふっ、ぐっ、フゥー・・・」
図星で震える拳と怒りを抑えた苦悶の表情だ。だけど、確実にこの顔は「おまえに言われたかねぇよ!」だな。
「治せそう?」
『うん、大丈夫。この子の中にある緑の精霊とお話するよー』
「何、何なんだよさっきから? せ、精霊? そんなもの、いるのかよ」
エンジェルローサは黒いゴム製のものを、ジンジャーの傷に包帯のように巻きつける。
「いるに決まってるでしょー? 貴方を産んだのも、貴方を生み出したかったからだもの」
「おい、おまえは何を言ってる? 産んだのは真理だろ!?」
「ひどぃ! ママをおまえ呼ばわりなんてぇ!」
うわーんと泣き出すエンジェルローサ。
『そいじゃ! このぼく、アンジュが、説明しよう!』
「・・・はぁっ!?」
ほうほう。
このアンジュと名乗る白い兎が「機械精霊」なのか。彼らはモズ族レイナ同様、肉体という概念のない情報体だ。レイナと徹底的に違うのは、他生命体と「契約」し、「契約者」を作ることにより、その真価を発揮できるということ。けれど、依存、寄生しなければ生きていけない、そういうわけはない。
他。
それがあることにより、彼ら「精霊」はその存在意義を、価値を生み出し、契約者に「精霊力」を与える。すなわち「信仰」「思念」「願い」が強ければ強いほど、「精霊力」が増す。
なるほど。
この広い宇宙の中で、「思い」の強さが一番誇らしい地球人を選ぶとは。さすがはアンジュ氏だ。リストに乗せておこう。
調べたところ、彼の本当の母親は純粋な地球人、父親がグリーンテイル惑星の緑人だった。彼らは結婚してはいない。母親は身籠ったか、父親にはそのことを告げなかったのだろう。
彼女は一人、シングルマザーとして、ジンジャーを育てたのだから。
絶大なる「愛」で。
二人の親友とともに。
「・・・君のお母様『達』は凄いお人だね」
「え?」
ワンとジンジャーは、コロニー内の医療室に入室した。
ーピーンポーン♪
受付のベルを鳴らす。
「君が吸血狼に噛まれ、人狼になろうとも、今も変わらず君を愛してくれている」
ジンジャーは明後日の方を見、あははと苦笑を浮かべた。
「・・・寧ろ、『きゃわゆい~♡』とかハグ乱用してきますね。俺の義母親『達』はちと変わってます」
「あぁ、そうそう」
パタパタと二人に走り寄る足音が聞こえてくる。
「君のもう一人のお母様はぽやんとしておバカぶってるけど、物凄い策士だ」
「はっ、いやまさか」
「いや? 君の狼化を機会に、ようやく本性を見せてくれたよ」
「ほ、本性・・・」
「はぁ~い! お待たせしましたぁ」
「っ!?」
現れた、黒褐色赤髪のナイスバディの美女ナースに、何故かジンジャーが狼狽えた。
「なぁなななななななななんんんん」
ナースは目をきゅるんとさせて、ジンジャーとワンにウインクをする。
「あら、ジン君~」
「かあちゃん!?」
ほっほほほほほぅ!? え? このギャルナースがジンジャーのお母様っ!? いや、若過ぎね? はっはぁ~? この人が喜多氏に次ぐ、第二の育ての母親なのか。
「やだぁ、『ママ』って呼んでって、いつも言ってるのぉ! 何で喜多は喜多なのに、あたしは『かあちゃん』なの!? おかしくない!?」
「腰をくねらせるんじゃねぇよ! つか何でかあちゃんがここに!?」
「言ったろ? 君のお母様『達』は『凄い人』だって」
「え」
「彼女はここ、コロニー12の医療チームの管理責任者、ローサ・ベルベット。愛称、エンジェルローサだ」
「ご指名ありがとうございまぁす♡ エンジェルローサですぅ」
「ここはホストじゃねぇから! はぁ!? 親父だけじゃなくて何か!? かあちゃん宇宙人だったのか!?」
「まぁまぁその話も中で。君の怪我は痛そうだ」
「あら、本当ね。ぐちゃぐちゃじゃない、こっちに来て」
ジンジャーとワンはエンジェルローサの後についていく。その先は緊急治療室だ。
「げっ!?」
ジンジャーが入るなり声を上げた。それもそのはずで、治療室だというのに、アルコールの匂いが一切ない。この部屋にあるのは昔ながらの有機ディスプレイモニターとキーボートの数々であり、香るのは電機屋さんの匂いだ。その立ち並ぶ機械達の中央に、ちょこんと診察ベッドがあるだけ。
「な、何だこのゲームオタク部屋は!?」
「あ! 分かるぅ? ママね、超がつくほどのゲーマーだったの昔~」
「いやいや、まだまだ現役じゃないですか」
「えー? そうかなぁ」
看護婦ゲーマー? 新しいジャンルの開拓か。
「・・・はぁ? かあちゃん看護婦だろ!? ま、まさかこんな責任者だとは思ってなかったけどよ・・・」
「はい、ここに寝転がって」
「え、あ、あぁ」
渋々ジンジャーは診察ベッドに横になる。
「彼女は看護婦でも、機械精霊と契約した地球人でね」
「は、はぁっ!?」
「ふむふむ」
エンジェルローサは傷口を診察している。
「アンジュー」
彼女の呼びかけに、
「ぬわっ」
モニターいっぱいに、キャラクター化した白い兎が顔を出す。
『んー? なぁにー?』
可愛い。グッズ化希望だ。
「この子の傷、治して欲しいの」
『どれどれぇ?』
ジンジャーが顔をひきつらせている。
なぜなら、エンジェルローサが一つタブレットを持ち、その画面に白い兎が移動し、ジンジャーの傷口を診ているのだ。
『焼け焦げてるね、人体損傷レベルBだ。もう痛みの感覚を通り過ぎてる。あー解析完了、あっちゃー、墓守の粒子砲受けたのかぁ』
「うっそ! やだ! ジン君ったら、そんな弱さでアレを相手にしたの!? おバカね!」
「ふっ、ぐっ、フゥー・・・」
図星で震える拳と怒りを抑えた苦悶の表情だ。だけど、確実にこの顔は「おまえに言われたかねぇよ!」だな。
「治せそう?」
『うん、大丈夫。この子の中にある緑の精霊とお話するよー』
「何、何なんだよさっきから? せ、精霊? そんなもの、いるのかよ」
エンジェルローサは黒いゴム製のものを、ジンジャーの傷に包帯のように巻きつける。
「いるに決まってるでしょー? 貴方を産んだのも、貴方を生み出したかったからだもの」
「おい、おまえは何を言ってる? 産んだのは真理だろ!?」
「ひどぃ! ママをおまえ呼ばわりなんてぇ!」
うわーんと泣き出すエンジェルローサ。
『そいじゃ! このぼく、アンジュが、説明しよう!』
「・・・はぁっ!?」
ほうほう。
このアンジュと名乗る白い兎が「機械精霊」なのか。彼らはモズ族レイナ同様、肉体という概念のない情報体だ。レイナと徹底的に違うのは、他生命体と「契約」し、「契約者」を作ることにより、その真価を発揮できるということ。けれど、依存、寄生しなければ生きていけない、そういうわけはない。
他。
それがあることにより、彼ら「精霊」はその存在意義を、価値を生み出し、契約者に「精霊力」を与える。すなわち「信仰」「思念」「願い」が強ければ強いほど、「精霊力」が増す。
なるほど。
この広い宇宙の中で、「思い」の強さが一番誇らしい地球人を選ぶとは。さすがはアンジュ氏だ。リストに乗せておこう。
0
あなたにおすすめの小説
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~
菱沼あゆ
キャラ文芸
突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。
洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。
天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。
洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。
中華後宮ラブコメディ。
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。
《完結》「パパはいますか?」ある日、夫に似た子供が訪ねて来た。
ヴァンドール
恋愛
嫁いですぐに夫は戦地に赴いた。すると突然一人の男の子が訪ねて来た「パパはいますか?」
その子供の顔は戦地に行った夫にそっくりだった。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される
clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。
状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。
あまりさんののっぴきならない事情
菱沼あゆ
キャラ文芸
強引に見合い結婚させられそうになって家出し、憧れのカフェでバイトを始めた、あまり。
充実した日々を送っていた彼女の前に、驚くような美形の客、犬塚海里《いぬづか かいり》が現れた。
「何故、こんなところに居る? 南条あまり」
「……嫌な人と結婚させられそうになって、家を出たからです」
「それ、俺だろ」
そーですね……。
カフェ店員となったお嬢様、あまりと常連客となった元見合い相手、海里の日常。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる