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【#15】三聖母の子
しおりを挟む『えー、時は遡ること・・・、う、うう~んむにゃむにゃ年前』
めっちゃ適当やん。
『普通の地球人? の最上真理という女性がおりました。彼女は地球人に興味がなく早三十路手前、こりゃもうダメだと、一人独身の人生を送ることを決めました』
あっ・・・。・・・スーッ・・・。
『当時、彼女は働きながらも、FPSという一人称の対人戦ゲームにはまっており、その才能は誰もが見張るものでした。彼女自身も己の開花を知り、ゲームと結婚すると言い出しました。でもその腕を買われ、プロゲーマーに転職しました』
女性がゲームをするの? という考えはもう古すぎなんだよなぁ。
『ぼくはその時、ずっと画面越しから彼女を見ていました。ゲームという世界で、物凄い熱量を与えてくれる、そんな地球人が好きで、憧れて、嬉しくもあったのです』
ズビシッと、アンジュ氏は右人差し指を立てる。
『だから、ぼくは最上真理と契約をした。彼女となら、色んな世界を見れる。そして、彼女にも、念願の地球外生命体との世界を見せてあげられる! とね』
あぁ、それはいい。
『そこで、真理は力を手に入れた。ぼくという機械精霊の力を。あ、勿論、ゲームでは使用してないよ? それは不平等だ、チートだし』
良かった。良識ある人で。
『それで、同じプロゲーマー所属の、ローサ・ベルベットに出会うんだ』
「おまえらゲーマー繋がりだったのか」
「そうだよ。ママは機械精霊なんて知らなかったけど」
『ローサとの縁が生まれたことにより、新たな縁が紡がれた。それが、ジンジャー、君の子種の元となる宇宙人、グリーンテイル惑星緑人のショナー・ジェイコブだ』
「子種言うな元って言うな!」
「いやんジン君照れちゃっておませさんなんだからぁ~♡」
「こっ・・・の・・・くっ」
耐えている、頑張れジンジャー。わたくしは君の味方・・・でもないな。
『真理は本当は家庭を築きたかったんだが、如何せん地球人の雄に興味がなくてね、まさか宇宙人が本当に存在していると知った時の彼女はまぁ輝いていたね』
「・・・そうね、あの子、本当に輝いていたわ・・・」
その真理がいない。ということは・・・。
『でも当時、地球人が宇宙人の子を産むというのはまだリスクがあってね、それでも子種をゲットした彼女は絶対にジンジャーを産むと決めて』
「まさか・・・」
ジンジャーを命がけで・・・。
『そこで真理は考えた。じゃぁ、もっと強靭な子宮を手に入れて産めばいいのではないか! と』
「・・・ん?」
流れが変わったような・・・。
『そこで出会ったのが喜多遊子。彼女は血のスペシャリスト兼神の舌を持つ女性だ。喜多の力を借り、そう、真理は素晴らしい子宮を手に入れたのだ!』
ん?
「ん? おい、喜多が何をどうしたらそんな子宮が手に入るんだ? おい、まさか真理は自ら人間を辞めたのか!? ん? 真理は地球人、だったんだよな?」
良かった。わたくしの考えを全部ジンジャーが代弁してくれた。
『で、無事に、ジンジャー、キミが生まれてくれた。真理は・・・』
さっきの質問の返答がないけれど。
「・・・・・・」
もう真理はいない。
『次の子種探しに、宇宙を回っているんだ!』
「おい! センシティブ発言だぞ!? ・・・・・・って、は?」
「ジン君には大きくなってから言おうと思ってたんだけど、言うの忘れちゃってた。真理ね、生きてるよ」
「っ!? なん・・・」
生きてたーっ!? でも、地球登録名簿には「死亡」扱いになっているが。
「この地球には帰らないってさ。だけど、地球人の遺伝子を宇宙全土にばら撒いて、地球人ハーフを作ってくるって」
「早く言えよ! てかツッコミが追い付かねぇわ! てっきり、真理は俺を生んだせいで死んだかと・・・。俺の純情返せよ! もう産んで満足か? 俺は用済みか・・・いでっ」
ジンジャーの頭をべしっとエンジェルローサは叩く。
「ジン君はあの子の大切な子。でも夢を捨てられなくて、地球を離れる決意をした。だから、ママと喜多、親友に託したんじゃない」
「おい、いいこと言ってるつもりかもしれないが、これは真理の育児放棄だぞ」
「えー? ママと喜多は物凄い喜んで引き受けたよー? ジンジャーが吸血狼に噛まれて人狼になったって連絡したら、また喜んでたから、そのうち多分会いに来るよー?」
「喜んでんじゃねぇーよ!?」
『まぁまぁ、そういうことだから。ジンジャーは緑人の血もあるけど、ぼくのような機械精霊と契約した真理の血もあるんだ。後者の契約は、『命約』である為、地球人の遺伝子をぼく側に書き換えられる。つまり、ジンジャー、君は機械精霊を見つけられる、いや、『創れる』かもしれない』
んーと? ジンジャーのお母様の真理さんは、機械精霊の契約者と同時に、普通の地球人ではない、と? ということは、ジンジャーは限りなく地球人に遠い地球人ということか? こんなイケメンなのに・・・。
「・・・は? 待った、え? 俺が元より通常の人間より機械強つよだなって思ったのは、そういう理由があった、そういうことか? 機械精霊って、要はプログラムだろ」
『そう。ザッツラーイト☆ そうか、やっぱり自覚はあったんだね?』
「いやプログラミングにしろ、何でコンピューター言語が分からねぇのかなって」
『キミはネイティブコンピューター人だからね、自然に分かるのは無理もない』
「ぷっ、ネイティブコンピューター人って何だよそれっ」
はぁ~・・・、と納得と安堵の溜息をジンジャーは零した。
「ま、俺もあいつの子か。どっかで生きてんならいいや」
「・・・ジン君・・・」
ふと、ジンジャーの傷を巻いていたゴム製のバンドが淡く光る。そして緑色にぱぁっと煌々すると、何事も無かったかのように傷跡が消えたのだ。
『はい、治療完了~』
「ぐっ」
そしてジンジャーはぶわわわっと人狼のいつもの姿に戻った。
「ふはーっ、今はこの姿の方が安心するんだよなぁ」
「あぁん! 良かったぁモフ男!」
思い切り抱きつくエンジェルローサ。
「モフ男じゃねぇから!」
「こっちもイケメンでママ、鼻が高いわぁ」
「そりゃ父親に感謝するんだな」
ふとジンジャーは今一度、エンジェルローサを見やる。
「・・・なぁ」
「ん~?」
「親父はほんとの本当に、緑人のショナー、なんだよな? 実在、してんだろうな?」
一体何を聞き出すのかと思えば。
んじゃぁ、わたくしも検索かけてみましょう。ショナー、ショナー・・・ショナー・ジェイコブ・・・。
『ナナナナンナニヲイッテルンダヨ! イルニキマッテルジャナイカァ!』
何故アンジュ氏はプログラムなのに汗だくでモニターにはべりついているのだろうか。
ん~? あれ? 検索はヒット、しない?
「実を言うとぉ、ママ、会ったこと、ないんだぁ! だってぇ、もうジン君生まれてたし。真理が言うんだから本当でしょ~?」
スンッ。
ジンジャーの顔が「無」になった。
新たな、ある意味可能性が浮上した。
「・・・まぁいいや。俺は真理の子だって分かればいいわ・・・ウン」
ついに考えることを放棄した顔だ。
「やぁね、喜多とママのことも忘れないで。産みの親と育ての親、述べ三人の母親がいることを忘れないでよぉ」
ふはっとジンジャーは鼻を鳴らす。
「違いねぇ、ありがてぇ。幸せですよ」
ここ一番の、満面の笑みだった。
忘れてたけど、ずっと微笑んで聞いているワンも、忘れないであげてね。
【Profile.No.000333. ジンジャー・ピック 称号:三聖母の子】
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