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【番外編】13.要らない子
しおりを挟む「まさか、嘘だろう?」
「そうよ! もう一度きちんと調べたのですか?」
病院で、僕の運命は諭された。
十歳の頃の話だ。
僕はクロエ家にとって、最大の汚点となった。
「そんな、子を成せないヒト族だと? そんなことがあって堪るか!」
「この子は何の為に生を受けたの!?」
ヒト族には、獣人の為に自身の子を継がせる、政略結婚という風習があった。その一族に僕の家、クロエ家がある。
「申し訳ありませんが、この子の子宮は未完全体です。可能性は0とは言いませんが・・・恐らく、大人になっても成熟することは無いでしょう」
医師が僕を憐みの目で見つめた。
「そんな・・・」
「・・・・・・」
僕の両親も、同じ目で見て来た。
僕が要らない子になった日だった。
両親はその後、弟を作った。
僕は同じ家にいるただの子供の扱いになった。同じ家、違うな、同じ敷地内にいる血縁者。両親は絶対に僕と弟に会わせようとしなかった。
弟に決して”お兄ちゃん”とは呼ばせない。
でも、子供の僕からしてみれば、義務教育と、大学にも行かせて貰えただけで十分に恩義がある。
「恩を返したいのなら、この家を出ろ。大学までは金を出してやる」
それが最後のお父さんの言葉だった。
家には戻らせないよう、遠くの大学に行かせ、そのまま後は自分の進路を決める。
結局、会社に勤めても上手くいかず、結局、独りでできるバーチャルライバーになった。
行動しなければ運命は変わらない。
行動に出て良かったと思う。最初は勇気と多少のお金がいる。でも自分の道を切り開いたんだ、自分自身の手で。
ライバーとして勿論まだまだ中堅クラスのライバーだから、これからも頑張ろうと思う。
僕の家族はいない。
勘当されて、僕の戸籍は僕だけ。
だから、これからもきっとそうだと思っていた。
だって、僕は獣人の子を産めないのだから。不能な子宮は、受胎の実を食べても効果がない。”源”が、使えないのだから。
「・・・・・・」
ゆっくり目を開けると、新聞を読むレディアンがいた。僕の視線に気が付くと、ふにゃりと微笑む。
「起きたか」
「・・・はい」
「・・・昨晩はその、無理をさせてすまない。初めて、だったのに」
上半身を起こした。
「・・・いえ、これで、最初で最後になりますから。いい、経験、でした」
「・・・? どういう意味だ」
「レディアン」
「うん?」
「・・・僕の家のこと、もうお調べになったのでしょう?」
「・・・・・・」
まぁ、無言は肯定だ。好意を持つ相手の家柄を調べるのは定石だ。
「どうして勘当されたかは、ご存じないのでは?」
レディアンは新聞を畳んだ。
「・・・おおよそ、検討はつく」
「・・・それなのに、僕を抱いたのですか?」
「君がいいと、感じた。私は直感を信じる」
直感、かぁ。
「レディアン。歴史は繰り返す、という言葉があります。元王とはいえ、また貴方様のご子孫がディラン王の影武者になる時代も来るやもしれません」
「・・・アーニャ」
「僕はハレムの五十番目ですが、抱かれるのは、健全なお体をお持ちの方に願います」
体を見ると、綺麗に後処理がされていた。
「・・・アーニャ、取り合えず朝食を食べよう」
「・・・・・・」
「話はその後だ」
「・・・はい」
用意されていた、側に会った下着と、服を着た。さすが、いい素材のお召し物だ。
ダイニングルームに向かうと、バートさんが待ってくれていた。
「おはようございますアーニャ様」
「おはようございますバートさん」
テーブルをみると、僕の大好きなアップルパイが置かれていた。
「うわぁ・・・! アップルパイ!」
「喜んで頂けて何よりです」
案内された席に腰を下ろす。
「僕、アップルパイが大好きなんです! わぁ、ヨーグルトにフルーツ・・・あぁ、幸せだぁ」
「ふ」
レディアンに笑われた。
「すいませんね庶民で」
「いや、可愛いなぁと思っただけだよ」
「すぐそういうことを言う・・・。食べます! いっただっきまぁす!」
焼きたてアップルパイの美味しさと温かさが、心に凄く染みた。
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