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【3】言葉の有意味
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「自分なら、どうなるのでしょう? 人は誰しも自分が一番可愛いですから、他者あっての自分なのですが、つい他者をおもんぱかることを忘れます。俺は”言葉”が一番この世界で、誰でも人を攻撃でき、護ることのできる武器だと思ってます」
「言葉・・・」
「はい。言葉を知れば誰でも発言して送ることができる。それ故に、平気で他者を傷つけることができます。言葉の与える影響を知っている方は、その言動に重きを置きます。そして、相手の身になって、きちんと言葉を選ぶようになります」
「・・・いちいち言ったことなんて、そんな覚えてないですよ? それが普通じゃないんですか?」
「はい、それが普通です。なら、言ったことで、何か後悔、したことはありませんか?」
「っ、あ、あります・・・けど」
力強く、スマホを握りしめ、発せられるその声はとても震えていた。
「人はいつ死ぬか分かりません。年齢なんて関係無いんです。だから、毎日毎日を、後悔の無いように気持ちを言葉に伝えて過ごすんです。後悔も、霊が現世に留まる感情の要因の一つなんですから」
ハッと、三宅さんの表情が変わった。ようやく、きちんと目が合った。
「後悔・・・」
「話せるなら話して下さい。何も俺はアプリの使用方法を教えるだけにいるわけではありません。お話して頂けるなら、話を伺いますよ。聞くために、俺はここにいますから」
膝の上にあった拳がさらにぎゅっと、力強く握られた。
「・・・わ、私・・・、ずっとお姉ちゃんと、け、喧嘩してて」
どうやら、話してくれる気になってくれたらしい。
「はい」
「お、お姉ちゃんが、交通事故で亡くなったって、メールが来て、び、っくりして、今でも、信じられなくて。加害者がアルコール依存症の男で、酔っぱらって、お姉ちゃんを、こ、殺したんですよ」
車で”轢いた”、のではなく”殺した”。
言葉は気持ちに忠実だ。
「・・・お悔やみ申し上げます・・・」
「お姉ちゃんは殺されたんです。そんなの、許せますか? 飲酒運転で? そんなこと、しちゃいけない当たり前のルールなのに、まぁいいやの気持ちで殺されたお姉ちゃんは、お姉ちゃんはどうなるんですか!? そんな理不尽なこと、あります!?」
世の中、理不尽なことばかりだ。それに犯された人達の負の感情がこの世に”生きて”残る。
「あの男が憎い、許せない!」
「三宅さん・・・」
「えぇ、分かってます。恨んだって、お姉ちゃんが帰って来ないことぐらい。でもこの感情は抑えられないんです、【お姉ちゃんも怒ってる】、【恨んでる】、だから、だから私に【復讐させよう】と・・・」
俺の視野に、他者から放たれる言葉が”可視化”される。
それは、本当に”可哀想”。
この自身の現象、現状を受け入れ慣れた今こそ、こうやって相手の言葉の重みを第三者視点で緩和見ることが出来るが、本当に大変だった。
(・・・あぁ、なるほど)
悪意、嘘、特に”思い込み”のものの言葉は、赤黒く血垂れる。自分を縛ることながら、”他者”も縛り付ける。
例え、その他者が、この世に在らざるものだろうとも。
自分が”間違っている”と気が付かせなければ、人は自滅する。それは伝播し連鎖し、喰い殺す。
「三宅さん」
「はい」
俺は稲沢に目配せし、彼が先ほど別のスマホで撮影した映像を開示させた。
「すいません勝手ながら、先ほど撮らせて頂いたものです。貴方の後ろにいる女性が、その”お姉さん”ですか?」
「っ! は、はい! あああ姉です!」
三宅さんを撮った映像には、彼女の背後にぴったりと寄り添う、純白の綺麗な女性が映し出されていた。
「これを鑑定させて頂くと、貴方のお姉さんは恨み妬みの感情は一切ありません」
「!? 嘘っ!」
「その感情は三宅さん、貴方が勝手に”思い込み”、創り出し生み出した感情です。思い込みは、言わば自己暗示です。お姉ちゃんが可哀想、そこから始まり、加害者の事情を知り、絶対に恨んでるに違いないに”思い込んだ”んです。結果、今の貴方は、自分の感情をただお姉さんに押し付けているだけなんですよ」
「違う! 私は! お姉ちゃんからそう感じたもの! お姉ちゃんは泣いてた!」
三宅さんは霊と接触、できるようだ。
「そうですか、では、泣いていらした理由が、三宅さん。妹の貴方が怒り憎しみに苛まれ悪い方へばかり思考して、その思考がいずれ殺意になり、復讐としてその加害者の男を殺す。彼の家族も殺す。そんな起こり得る未来に嘆いてたとしたら?」
「・・・・・・え?」
「言いましたよね? 人は感情の生き物だと。その感情を制御するのが”理性”です。怒りと悲しみは表裏一体です。そのどちらの均衡が崩れ、理性を失った人が起こす行動は、犯罪です。お姉さんは妹の貴方に、そんな未来を導かないように、今、貴方の側に寄り添っているのですよ」
「・・・お、お姉ちゃんが・・・?」
「・・・貴方は、自分にお姉さんの恨み妬みの気持ちが流れ込んでくるから怖い。そう思い込んで、ここへお姉さんをどうにかして貰いたくて来た。違いますか?」
「・・・・・・そうです」
「お姉さんを除霊するつもりは初めから無かった」
「・・・はい」
「と、なると、俺は試されていたんですか?」
「! ち、ちが・・・、いえ、違く、ないですね。この剣菱神社の噂を聞いて・・・」
「噂、ですか」
「はい。霊と会話ができるって」
思わず鼻で笑ってしまった。
「ふふ、すいません。普通に聞くと頭のおかしい人がいる神社ですね」
「ふふ、そうですね。でも、何もない人はそう思うでしょう。そうじゃない人は、信じて縋りたい気持ちがある。その立場になって、初めて価値を知ったんです」
「・・・なるほど」
「なんでここの神社を知ったのもよく覚えてないんですけど、気が付いたら連絡してて」
「で、気が付いたらここに来ていた、と」
「・・・はい」
「普通でしたら可笑しな話です。でもこの世には科学では証明できないことが沢山あるというのは聞きますよね?」
「はい」
「では、今回のここへの導きが、お姉さんだったら?」
「えっ?」
「ふふ、実はですね。本当の依頼者は貴方ではなく」
俺は白く綺麗に輝く、お姉さんを見やった。
「貴方のお姉さん、三宅美月さんからなんですよ」
「言葉・・・」
「はい。言葉を知れば誰でも発言して送ることができる。それ故に、平気で他者を傷つけることができます。言葉の与える影響を知っている方は、その言動に重きを置きます。そして、相手の身になって、きちんと言葉を選ぶようになります」
「・・・いちいち言ったことなんて、そんな覚えてないですよ? それが普通じゃないんですか?」
「はい、それが普通です。なら、言ったことで、何か後悔、したことはありませんか?」
「っ、あ、あります・・・けど」
力強く、スマホを握りしめ、発せられるその声はとても震えていた。
「人はいつ死ぬか分かりません。年齢なんて関係無いんです。だから、毎日毎日を、後悔の無いように気持ちを言葉に伝えて過ごすんです。後悔も、霊が現世に留まる感情の要因の一つなんですから」
ハッと、三宅さんの表情が変わった。ようやく、きちんと目が合った。
「後悔・・・」
「話せるなら話して下さい。何も俺はアプリの使用方法を教えるだけにいるわけではありません。お話して頂けるなら、話を伺いますよ。聞くために、俺はここにいますから」
膝の上にあった拳がさらにぎゅっと、力強く握られた。
「・・・わ、私・・・、ずっとお姉ちゃんと、け、喧嘩してて」
どうやら、話してくれる気になってくれたらしい。
「はい」
「お、お姉ちゃんが、交通事故で亡くなったって、メールが来て、び、っくりして、今でも、信じられなくて。加害者がアルコール依存症の男で、酔っぱらって、お姉ちゃんを、こ、殺したんですよ」
車で”轢いた”、のではなく”殺した”。
言葉は気持ちに忠実だ。
「・・・お悔やみ申し上げます・・・」
「お姉ちゃんは殺されたんです。そんなの、許せますか? 飲酒運転で? そんなこと、しちゃいけない当たり前のルールなのに、まぁいいやの気持ちで殺されたお姉ちゃんは、お姉ちゃんはどうなるんですか!? そんな理不尽なこと、あります!?」
世の中、理不尽なことばかりだ。それに犯された人達の負の感情がこの世に”生きて”残る。
「あの男が憎い、許せない!」
「三宅さん・・・」
「えぇ、分かってます。恨んだって、お姉ちゃんが帰って来ないことぐらい。でもこの感情は抑えられないんです、【お姉ちゃんも怒ってる】、【恨んでる】、だから、だから私に【復讐させよう】と・・・」
俺の視野に、他者から放たれる言葉が”可視化”される。
それは、本当に”可哀想”。
この自身の現象、現状を受け入れ慣れた今こそ、こうやって相手の言葉の重みを第三者視点で緩和見ることが出来るが、本当に大変だった。
(・・・あぁ、なるほど)
悪意、嘘、特に”思い込み”のものの言葉は、赤黒く血垂れる。自分を縛ることながら、”他者”も縛り付ける。
例え、その他者が、この世に在らざるものだろうとも。
自分が”間違っている”と気が付かせなければ、人は自滅する。それは伝播し連鎖し、喰い殺す。
「三宅さん」
「はい」
俺は稲沢に目配せし、彼が先ほど別のスマホで撮影した映像を開示させた。
「すいません勝手ながら、先ほど撮らせて頂いたものです。貴方の後ろにいる女性が、その”お姉さん”ですか?」
「っ! は、はい! あああ姉です!」
三宅さんを撮った映像には、彼女の背後にぴったりと寄り添う、純白の綺麗な女性が映し出されていた。
「これを鑑定させて頂くと、貴方のお姉さんは恨み妬みの感情は一切ありません」
「!? 嘘っ!」
「その感情は三宅さん、貴方が勝手に”思い込み”、創り出し生み出した感情です。思い込みは、言わば自己暗示です。お姉ちゃんが可哀想、そこから始まり、加害者の事情を知り、絶対に恨んでるに違いないに”思い込んだ”んです。結果、今の貴方は、自分の感情をただお姉さんに押し付けているだけなんですよ」
「違う! 私は! お姉ちゃんからそう感じたもの! お姉ちゃんは泣いてた!」
三宅さんは霊と接触、できるようだ。
「そうですか、では、泣いていらした理由が、三宅さん。妹の貴方が怒り憎しみに苛まれ悪い方へばかり思考して、その思考がいずれ殺意になり、復讐としてその加害者の男を殺す。彼の家族も殺す。そんな起こり得る未来に嘆いてたとしたら?」
「・・・・・・え?」
「言いましたよね? 人は感情の生き物だと。その感情を制御するのが”理性”です。怒りと悲しみは表裏一体です。そのどちらの均衡が崩れ、理性を失った人が起こす行動は、犯罪です。お姉さんは妹の貴方に、そんな未来を導かないように、今、貴方の側に寄り添っているのですよ」
「・・・お、お姉ちゃんが・・・?」
「・・・貴方は、自分にお姉さんの恨み妬みの気持ちが流れ込んでくるから怖い。そう思い込んで、ここへお姉さんをどうにかして貰いたくて来た。違いますか?」
「・・・・・・そうです」
「お姉さんを除霊するつもりは初めから無かった」
「・・・はい」
「と、なると、俺は試されていたんですか?」
「! ち、ちが・・・、いえ、違く、ないですね。この剣菱神社の噂を聞いて・・・」
「噂、ですか」
「はい。霊と会話ができるって」
思わず鼻で笑ってしまった。
「ふふ、すいません。普通に聞くと頭のおかしい人がいる神社ですね」
「ふふ、そうですね。でも、何もない人はそう思うでしょう。そうじゃない人は、信じて縋りたい気持ちがある。その立場になって、初めて価値を知ったんです」
「・・・なるほど」
「なんでここの神社を知ったのもよく覚えてないんですけど、気が付いたら連絡してて」
「で、気が付いたらここに来ていた、と」
「・・・はい」
「普通でしたら可笑しな話です。でもこの世には科学では証明できないことが沢山あるというのは聞きますよね?」
「はい」
「では、今回のここへの導きが、お姉さんだったら?」
「えっ?」
「ふふ、実はですね。本当の依頼者は貴方ではなく」
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