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荒れた俺が叫ぶ声
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学校を出る頃には日が落ち、空を深いオレンジ色に染めていた。
車の中でずっと口を閉ざしたままの親父。
その表情を見ても、何を考えているのかがわからないほどに真剣な眼差しで前を見ている。
親父は真っ直ぐに家には帰らず、暗くなりかけた頃には俺たちは人気のない海へと来ていた。
口を開くこともなく親父は車から降りると浜辺の方へ歩いていく。
俺に顎でこっちに来い。
そう伝えられ、渋々と車から降りて親父の後へと続く。
波の音だけが耳に響くほど静かな空気の中。
突然。
親父の怒鳴り声と拳が飛んできた。
「このバカヤロウが!!!」
その拳は見事俺の頬に入り、強烈な痛みと共に俺の体は砂浜に倒れ込む。
「…な…」
「立てよ!てめーはこうでもしなきゃわかんねぇってことだろ!」
ここにきて、今まで読めなかった親父の感情が流れ込む。
その目には炎が揺らぎ、ギラついたそれは俺の目を真っ直ぐに射貫く。
親父は声を荒らげて叫ぶ。
「言い訳も謝罪もいらねぇ!今はお前の上辺だけの言葉なんか意味がねぇ!男だろ、拳で答えてこいや!!」
その貫禄に気圧される。
怖い、親父に対して始めてそう感じた。
「立て!人に迷惑かけるほどに、てめーには伝えたい何かがあんだろうが!!」
その言葉に今度は心が射貫かれる。
伝えたい何か?
そんなもの、何もない。
だけど。
俺の心は確かにその言葉に反応していた。
何もないけど…。
何かがある。
そう相反する声が俺の内側に流れ込む。
「てめーの番だ!全力で殴りかかってこいよ!」
その挑発に、気付けば俺の体は動いていた。
「痛てぇな!思いっきり殴りつけやがって!それが親父のやることかよ!!」
俺の拳が親父の頬を打ち付ける。
避けることもせず、怯むこともなく。
親父は俺の拳を受けいれた。
「弱ぇな。てめーの中にある何かはこんなもんかよ。」
再び親父の拳で吹き飛ばされる俺の体。
「親父に何がわかんだよ!わかった口聞くんじゃねぇよ!!」
俺は反撃で殴り掛かる。
またしても微動だにしないその体。
「わかんねぇな!お前らガキンチョ共の考えてる事なんかよ!くだらねぇ事して、周りに迷惑かけて、その上。そこに何の訴えもねぇんだからなぁ!」
殴られた頬の痛みよりも、その言葉の方が痛む。
チクチクと刺すような痛みを無視し、俺は親父の目を睨みつける。
「でもよ。てめーは俺と母ちゃんの子だ!そんな奴が人様巻き込んでやらかすんだ!そこに何もねぇわけねぇだろう?!出せよ!そん中にあるモヤモヤしたもん。全部受け止めてやるから!!!」
まるで稲妻のように、親父の言葉が俺の心臓を貫いた。
思わず叫ぶ。
「くだらねぇのは自分でもわかってんだよ!つまんねぇのも、スッキリしねぇのも!でもどうして良いかわかんねぇ!自分でも何がしたいのか…全然わかんねぇんだよ!」
親父と俺。
いつだって比較されてきた。
大人たちは俺をみてるんじゃない、俺の後ろの親父を見てた。
最初から俺を決めつけて。
どうせ。
そうやって押し付けて。
それなら。
俺が何を言おうが、何をしようが結局関係ないじゃないか。
俺は。
俺なのに。
車の中でずっと口を閉ざしたままの親父。
その表情を見ても、何を考えているのかがわからないほどに真剣な眼差しで前を見ている。
親父は真っ直ぐに家には帰らず、暗くなりかけた頃には俺たちは人気のない海へと来ていた。
口を開くこともなく親父は車から降りると浜辺の方へ歩いていく。
俺に顎でこっちに来い。
そう伝えられ、渋々と車から降りて親父の後へと続く。
波の音だけが耳に響くほど静かな空気の中。
突然。
親父の怒鳴り声と拳が飛んできた。
「このバカヤロウが!!!」
その拳は見事俺の頬に入り、強烈な痛みと共に俺の体は砂浜に倒れ込む。
「…な…」
「立てよ!てめーはこうでもしなきゃわかんねぇってことだろ!」
ここにきて、今まで読めなかった親父の感情が流れ込む。
その目には炎が揺らぎ、ギラついたそれは俺の目を真っ直ぐに射貫く。
親父は声を荒らげて叫ぶ。
「言い訳も謝罪もいらねぇ!今はお前の上辺だけの言葉なんか意味がねぇ!男だろ、拳で答えてこいや!!」
その貫禄に気圧される。
怖い、親父に対して始めてそう感じた。
「立て!人に迷惑かけるほどに、てめーには伝えたい何かがあんだろうが!!」
その言葉に今度は心が射貫かれる。
伝えたい何か?
そんなもの、何もない。
だけど。
俺の心は確かにその言葉に反応していた。
何もないけど…。
何かがある。
そう相反する声が俺の内側に流れ込む。
「てめーの番だ!全力で殴りかかってこいよ!」
その挑発に、気付けば俺の体は動いていた。
「痛てぇな!思いっきり殴りつけやがって!それが親父のやることかよ!!」
俺の拳が親父の頬を打ち付ける。
避けることもせず、怯むこともなく。
親父は俺の拳を受けいれた。
「弱ぇな。てめーの中にある何かはこんなもんかよ。」
再び親父の拳で吹き飛ばされる俺の体。
「親父に何がわかんだよ!わかった口聞くんじゃねぇよ!!」
俺は反撃で殴り掛かる。
またしても微動だにしないその体。
「わかんねぇな!お前らガキンチョ共の考えてる事なんかよ!くだらねぇ事して、周りに迷惑かけて、その上。そこに何の訴えもねぇんだからなぁ!」
殴られた頬の痛みよりも、その言葉の方が痛む。
チクチクと刺すような痛みを無視し、俺は親父の目を睨みつける。
「でもよ。てめーは俺と母ちゃんの子だ!そんな奴が人様巻き込んでやらかすんだ!そこに何もねぇわけねぇだろう?!出せよ!そん中にあるモヤモヤしたもん。全部受け止めてやるから!!!」
まるで稲妻のように、親父の言葉が俺の心臓を貫いた。
思わず叫ぶ。
「くだらねぇのは自分でもわかってんだよ!つまんねぇのも、スッキリしねぇのも!でもどうして良いかわかんねぇ!自分でも何がしたいのか…全然わかんねぇんだよ!」
親父と俺。
いつだって比較されてきた。
大人たちは俺をみてるんじゃない、俺の後ろの親父を見てた。
最初から俺を決めつけて。
どうせ。
そうやって押し付けて。
それなら。
俺が何を言おうが、何をしようが結局関係ないじゃないか。
俺は。
俺なのに。
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