【完結】親

MIA

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〈プロローグ〉

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(あぁ。まただ。)

隣の部屋から聞こえてくる不快なノイズ。

子どもの泣き声。
大人の怒鳴り声。
何かが割れる音。
何かを殴りつける音。

一番心をざわつかせるのは。

女の笑い声。

聡〈サトシ〉はそっと耳をふさぐ。

(早く。早く、やめてくれ…。)

ふと音が止む。
耳から手を離し、様子を伺う。
すると、女の声が響く。

ーあぁ。本当に、産まなきゃ良かった。ー

それは、冷たく。
まるで機械のようだった。

(…助けなきゃ。殺されてしまう。)

そう本能が叫ぶ。

聡はただ。
呆然と隣の部屋へと続く壁を見つめていた。
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