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第一章 龍神誕生編
第8話 怒りと決意
しおりを挟むさようなら、今まで本当にありがとう。
(天玲……?どういうことだよ……。)
目の前にいる天玲はいつも通り穏やかで、………少し悲しそうだった。
突然天玲の姿が光に包まれるーーー
だんだんと天玲の姿が薄くなっていく。
(待てよ、どこ行くんだよ!天玲!
天玲ーーーー!)
ーーーーーーーーーー
「天玲!!」
ガバッと起きると、空は真っ暗になっていた。
辺りを見回すと、まるで何もなかったかのように静寂に包まれている。
スマホを見ると、午後11時過ぎだった。
母さんや錬から大量の通知が来ている。
「これで帰ってきたら、めっちゃ怒られるよな。」
下手したら警察沙汰かもしれない。
そうなるくらいなら、と咲磨は友達の家に泊まることになった、と連絡を入れる。
ベタな言い訳だが、この際仕方ない。後で颯に頼んでみるとしよう。
いや、颯のところにはもう情報がいってるかもしれない。クラスメイトに頼むか。
周辺を捜したが天玲の姿がなかった。
「天玲ーー!」
呼んでも、来ない。まさかあの夢は本当だったのだろうか。
「そういえば俺、なんで生きてるんだ……?」
今更ながらに自分のおかれている状況に困惑する。
(俺、あのとき天玲を庇って……、それでどうなったんだ?)
考え込んでいたときだった。
『シュー』
気づくと目の前には白い蛇がいる。
いつも咲磨を天玲のところに連れて行ってくれる子だ。
天玲の話だと彼の眷属らしい。青い瞳は夜にも関わらず爛々と輝いている。
「なあ、天玲知らないか?」
蛇は体をくねらせて、輪っかを作る。
すると輪っかの穴が白く光って、画面のようなものに変わった。
この状態だけじゃ普通分からないはずなのに、咲磨は蛇の言わんとしていることが手にとるようにわかる。
「見せてくれるのか………?」
さっき起こったことを。
蛇は肯定というように鳴くと、咲磨が死んだあとのことを見せた。
ーーーーーーーーーーー
「天玲っ………、あのばかやろう……!」
どうやら自分は龍神になってしまったらしい。
そこに関しても怒っているが、今重要なのはそこじゃない。
「俺に断りもなしに死ぬなよっ…………。」
怒りに任せて力を使い切るなんて、神様がやることじゃない。正確には神様ではないのだが、咲磨にとっては同じようなものだ。
もちろんそうしなければ、咲磨はこの世にいないのだが……。
当の本人はそのへんのことをわかっているのか、ただひたすらに怒っている。
ひとしきり怒ったあと、落ち着いたのか、咲磨はゴロンと地面に転がる。
「人間に戻る方法は………ないっぽいよな。」
白い蛇がいつの間にか、腹の上に乗っていた。
咲磨はその頭を撫でながら、考える。
こうなったら、腹をくくるしかないだろう。
「確か天玲は、いつかは人間の世界と別れなくてはいけない、と言ってたっけ。」
いつかは、それは今じゃない。まだ時間はあるってことだ。
「俺は土地神になる。」
薄々はわかっていた。なんだかそうなる予感がしてた、と。なにせ500年見つからなかったんだ、1年で見つからなかったら、責任取って自分がなろうと思っていたかもしれない。
咲磨は1ヶ月の間で随分心変わりした。それは、人ならざるものと交友をもったためか、はたまた自分の魂がそれを望んでいるのか、真相は分からない。
しかし、最初に比べると、咲磨は龍神としてこの地の土地神になることに拒否の意思を持たなかった。
不思議なものだ。
それでも、咲磨は人間でいたいという気持ちもあった。こればかりは仕方ない。自分は数刻前まで人間だったのだから。人間でいたいと思うのは当然だろう。
「天玲の後継者として……。」
自分にできるか、正直めちゃくちゃ不安だ。けど今のところ自分にしか出来ないのなら、天玲のためにも頑張りたい。
咲磨はゆっくり起き上がると、白い蛇を手に載せた。
「俺は土地神になる。これからどうすればいい?」
咲磨はもう一度決意を口にした。
蛇の目が一際輝いた。体を腕に絡み付けるようにしている。
喜んでいるのだろうか
「そういえばお前の名前なんていうんだ。」
『シュー?』
もしかしてないのか。
「じゃあ俺がつけてもいいか?」
『しゅうー!』
喜んでいるようだ。
実はもう決めてある。
「じゃあーお前の名前は瑠璃だ。その瞳を見たときにすぐに思いついたんだ。」
蛇もとい瑠璃は、腕に巻き付く力を強めた。
よくよく顔を見ると、目がくりくりしている。
(可愛い。)
そこらにいる蛇とは比べ物にならないくらい瑠璃はきれいな蛇だった。
しばらく瑠璃を撫でていると、瑠璃は急にぴょんと地面に降りる。
「どうしたんだ?」
『シュルシュル』
「そうか!これからどうしたらいいか教えてくれるんだな。」
もう完全に瑠璃の言いたいことがわかっていた。おそらく、自分自身が妖化したからだろう。
瑠璃が言うことには、これから妖達が住んでいるところに行くそうだ。そこは天玲もずっと住んでいたそうだ。もう一つの宝玉を守っている龍神や、天玲のことをよく知る妖がそこにいるらしい。それは是が非でも行きたい。
幸いなことに明日は学校がない。多少無理をしても大丈夫だ。
「行こう。」
咲磨は妖の住むところを目指すべく、一歩踏み出した。
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