龍神咲磨の回顧録

白亜

文字の大きさ
9 / 19
第一章 龍神誕生編

第8話 怒りと決意

しおりを挟む


さようなら、今まで本当にありがとう。


(天玲……?どういうことだよ……。)


目の前にいる天玲はいつも通り穏やかで、………少し悲しそうだった。


突然天玲の姿が光に包まれるーーー


だんだんと天玲の姿が薄くなっていく。


(待てよ、どこ行くんだよ!天玲!
天玲ーーーー!)




ーーーーーーーーーー


「天玲!!」


ガバッと起きると、空は真っ暗になっていた。


辺りを見回すと、まるで何もなかったかのように静寂に包まれている。


スマホを見ると、午後11時過ぎだった。


母さんや錬から大量の通知が来ている。


「これで帰ってきたら、めっちゃ怒られるよな。」


下手したら警察沙汰かもしれない。


そうなるくらいなら、と咲磨は友達の家に泊まることになった、と連絡を入れる。


ベタな言い訳だが、この際仕方ない。後で颯に頼んでみるとしよう。


いや、颯のところにはもう情報がいってるかもしれない。クラスメイトに頼むか。



周辺を捜したが天玲の姿がなかった。


「天玲ーー!」


呼んでも、来ない。まさかあの夢は本当だったのだろうか。



「そういえば俺、なんで生きてるんだ……?」


今更ながらに自分のおかれている状況に困惑する。


(俺、あのとき天玲を庇って……、それでどうなったんだ?)


考え込んでいたときだった。


『シュー』


気づくと目の前には白い蛇がいる。


いつも咲磨を天玲のところに連れて行ってくれる子だ。


天玲の話だと彼の眷属らしい。青い瞳は夜にも関わらず爛々と輝いている。



「なあ、天玲知らないか?」


蛇は体をくねらせて、輪っかを作る。


すると輪っかの穴が白く光って、画面のようなものに変わった。


この状態だけじゃ普通分からないはずなのに、咲磨は蛇の言わんとしていることが手にとるようにわかる。



「見せてくれるのか………?」

さっき起こったことを。


蛇は肯定というように鳴くと、咲磨が死んだあとのことを見せた。



ーーーーーーーーーーー




「天玲っ………、あのばかやろう……!」
 

どうやら自分は龍神になってしまったらしい。


そこに関しても怒っているが、今重要なのはそこじゃない。



「俺に断りもなしに死ぬなよっ…………。」



怒りに任せて力を使い切るなんて、神様がやることじゃない。正確には神様ではないのだが、咲磨にとっては同じようなものだ。


もちろんそうしなければ、咲磨はこの世にいないのだが……。


当の本人はそのへんのことをわかっているのか、ただひたすらに怒っている。





ひとしきり怒ったあと、落ち着いたのか、咲磨はゴロンと地面に転がる。


「人間に戻る方法は………ないっぽいよな。」


白い蛇がいつの間にか、腹の上に乗っていた。


咲磨はその頭を撫でながら、考える。


こうなったら、腹をくくるしかないだろう。


「確か天玲は、いつかは人間の世界と別れなくてはいけない、と言ってたっけ。」


いつかは、それは今じゃない。まだ時間はあるってことだ。



「俺は土地神になる。」



薄々はわかっていた。なんだかそうなる予感がしてた、と。なにせ500年見つからなかったんだ、1年で見つからなかったら、責任取って自分がなろうと思っていたかもしれない。


咲磨は1ヶ月の間で随分心変わりした。それは、人ならざるものと交友をもったためか、はたまた自分の魂がそれを望んでいるのか、真相は分からない。


しかし、最初に比べると、咲磨は龍神としてこの地の土地神になることに拒否の意思を持たなかった。



不思議なものだ。



それでも、咲磨は人間でいたいという気持ちもあった。こればかりは仕方ない。自分は数刻前まで人間だったのだから。人間でいたいと思うのは当然だろう。



「天玲の後継者として……。」


自分にできるか、正直めちゃくちゃ不安だ。けど今のところ自分にしか出来ないのなら、天玲のためにも頑張りたい。




咲磨はゆっくり起き上がると、白い蛇を手に載せた。



「俺は土地神になる。これからどうすればいい?」


咲磨はもう一度決意を口にした。


蛇の目が一際輝いた。体を腕に絡み付けるようにしている。


喜んでいるのだろうか


「そういえばお前の名前なんていうんだ。」


『シュー?』



もしかしてないのか。


「じゃあ俺がつけてもいいか?」


『しゅうー!』

喜んでいるようだ。


実はもう決めてある。


「じゃあーお前の名前は瑠璃るりだ。その瞳を見たときにすぐに思いついたんだ。」


蛇もとい瑠璃は、腕に巻き付く力を強めた。


よくよく顔を見ると、目がくりくりしている。


(可愛い。)


そこらにいる蛇とは比べ物にならないくらい瑠璃はきれいな蛇だった。


しばらく瑠璃を撫でていると、瑠璃は急にぴょんと地面に降りる。


「どうしたんだ?」


『シュルシュル』


「そうか!これからどうしたらいいか教えてくれるんだな。」


もう完全に瑠璃の言いたいことがわかっていた。おそらく、自分自身が妖化したからだろう。
 

瑠璃が言うことには、これから妖達が住んでいるところに行くそうだ。そこは天玲もずっと住んでいたそうだ。もう一つの宝玉を守っている龍神や、天玲のことをよく知る妖がそこにいるらしい。それは是が非でも行きたい。


幸いなことに明日は学校がない。多少無理をしても大丈夫だ。


「行こう。」


咲磨は妖の住むところを目指すべく、一歩踏み出した。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

後宮なりきり夫婦録

石田空
キャラ文芸
「月鈴、ちょっと嫁に来るか?」 「はあ……?」 雲仙国では、皇帝が三代続いて謎の昏睡状態に陥る事態が続いていた。 あまりにも不可解なために、新しい皇帝を立てる訳にもいかない国は、急遽皇帝の「影武者」として跡継ぎ騒動を防ぐために寺院に入れられていた皇子の空燕を呼び戻すことに決める。 空燕の国の声に応える条件は、同じく寺院で方士修行をしていた方士の月鈴を妃として後宮に入れること。 かくしてふたりは片や皇帝の影武者として、片や皇帝の偽りの愛妃として、後宮と言う名の魔窟に潜入捜査をすることとなった。 影武者夫婦は、後宮内で起こる事件の謎を解けるのか。そしてふたりの想いの行方はいったい。 サイトより転載になります。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話

登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?

敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される

clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。 状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。

あまりさんののっぴきならない事情

菱沼あゆ
キャラ文芸
 強引に見合い結婚させられそうになって家出し、憧れのカフェでバイトを始めた、あまり。  充実した日々を送っていた彼女の前に、驚くような美形の客、犬塚海里《いぬづか かいり》が現れた。 「何故、こんなところに居る? 南条あまり」 「……嫌な人と結婚させられそうになって、家を出たからです」 「それ、俺だろ」  そーですね……。  カフェ店員となったお嬢様、あまりと常連客となった元見合い相手、海里の日常。

処理中です...