龍神咲磨の回顧録

白亜

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第一章 龍神誕生編

第9話 妖達が住むところ

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ひたすら歩くこと約1時間、瑠璃に導かれるように進んだ先には、小さな滝が流れていた。流れはとても穏やかだ。その下には浅い湖のようになっていた。水は透き通るように美しく、月が水面に映っていた。まるで異界にでも迷い込んだかのようだ…。実際異界なのだが。


(あの噂は本当だったんだ。)


咲磨は滝を見ながら思う。


瑠璃は、湖をスイスイと泳いでいく。


「えっここ通るの?」


見たところそれほど深くはないようだが、この季節、夜はまだ寒い。そんな中水に浸かるなど、明日風邪をひいてくれと言うようなもんだ。


瑠璃は来ないのか?というような目で見つめると、またスイスイと泳いでいく。


「ああー!もう!どうにでもなっちまえ!!」


咲磨は瑠璃の後を追い、湖の中へ入っていく。


深さは腰にかかるかどうかだった。


ザブザブと滝の近くまでいくと瑠璃はくるくると回った。


ほのかに瑠璃の瞳が光ったかと思うと、滝が二手に分かれる。奥には洞窟のようなものが見えた。


「ここを通るのか?」


瑠璃は肯定というように鳴いた。


滝壺がほとんどないので、そのまま進んでいくことができた。


怖いので瑠璃を片手に載せながら歩く。
途中から水はなくなっていった。


洞窟は50mくらいで光が見えてきた。


出口だ。





咲磨は飛び込んできた風景に目を疑った。



現れたのは先程よりもずっと大きい滝がいくつも連なっている光景だった。滝の一番上に城とも言うべき社が建っている。周囲は木々に覆われ、目の前には大きな鳥居が構えてある。


咲磨は直感的にわかった。


この場所は、人間の世界ではない、と。


肌で感じ取れるのだ。妖達が住むところだと。


咲磨はしばらく呆けていた。


瑠璃が咲磨の袖を引っ張ってくれたことではっと現実に戻る。



「よく来た。我が片割れよ。」


「……っ!?」
  

突然降ってきた声に咲磨は驚く。目の前に現れたのは、美しい銀髪に真紅の瞳をした20歳前半の男性だ。


「ふむ、そなたが天玲の後継か。なかなか面白い魂をしているな。」


その人は咲磨をジーと見つめる。絶世の美青年に見つめられるのだ、なんか気恥ずかしい。


「あの……」


「ああすまん。つい嬉しくてな。双玉の片割れがいなくなって実に500年と少し。その間我らは天玲は死んだものだと思っていた……。」


随分と古風な喋り方をするひとである。


なのに何故か懐かしい。これは、蒼の宝玉の感情なのか。


「貴方は一体……?」



「む?そうだな忘れておった。私は白龍双玉のあか、八雲だ。天玲とともにこの地を守っていた土地神である。」


「天玲の……、あっ俺は水宮咲磨です。」


慌てて咲磨も名乗る。


「さくま……。そうか咲磨か!良い名だ。」


何故か嬉しそうな八雲。それから咲磨の頭をグリグリ撫でる。


「えっ、ちょっと?」


咲磨は盛大に困惑する。突然八雲は語りだした。


「先も述べた通り、我々はこの500年、天玲はもう死んだものだと思っておった。蒼の宝玉も奴とともに消滅したのだと。しかし、そなたが現れた。そなたは我々の希望だ。……天玲の意志は宝玉の中で眠っておるだろう。だからそう難しい顔をするな。」


「……はい。ありがとうございます。」


そう思うと、救われた気分になる。友を喪ってこんな平然としていれるのが異常なのだ。


色々ありすぎて、泣くまでの感情がともなっていないだけなのだろう。


「さて、立ち話もなんだ、この周囲一帯を紹介しよう。それから、そなたのこれからの身の振り方もな。」



八雲がまず向かったのは、滝の上にある一際大きい社だった。聞くところによれば、そこは土地神の住居であり神使としての務めを行う領域でもある。



その道中は咲磨にとって驚きの連続だった。


というのも、まず社は滝の上にあるので滝を登らなければならない。普通にまわりこんで周囲の山から登っていけばいいのだが、八雲は咲磨をひょいと掴むとそのまま空を飛んだ。


「えええええええぇーー!!」


「こら、耳元で叫ぶな。驚くではないか。」



(いやいやいや、だって空飛んでるよ!まじで!え?重力無視してるけど大丈夫なの?)


咲磨の頭はパンク寸前だ。


上から見ると、景色はまた違った雰囲気を持つ。まるで地上の明かりが星のようだ。


(これ、落ちないよな。)


今の咲磨の状態は首根っこ掴まれて宙ぶらりんだ。バンジージャンプより心もとない。


幸い八雲はしっかりと咲磨を掴んでいる。どこにそんな力があるのだろう、と咲磨は不思議に思った。



ーーーー

あっという間の空の旅が終わり、若干疲れたような顔をしている咲磨を八雲が怪訝そうな顔で見ていた。


    
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