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第二章 滅妖師編
第15話 滅妖師の少年
しおりを挟む「え……?」
「だがら君、妖でしょ。」
どうやって切り抜けよう。咲磨はじっと綾峯大和を見る。彼の目は確信が宿っていた。しかも、綾峯大和は妖の存在を知っている。何ら関わりのあるのかもしれない。
「なんだよ、それ。妖って?そんなのいるわけ無いだろ。」
咲磨はしらばっくれた。相手が何者かわからない以上、へたに暴露するのは危険だ。八雲さんに指示を仰がないと。
「さっきのボール。」
綾峯大和がポツリと言う。
「え?」
「さっき夏木くんのボールが顔に当たったとき痛くないって思ったでしょ。」
「……!」
「普通にばれるよ。君、自分で無意識に結界をはったんだから。」
「……は?」
綾峯はポケットから札のようなものを取り出した。
「流転開花、縛!」
突然なにか言ったかと思うとそれを投げつける。
「うぐっ!」
(なんだこれ、手足が痺れる。体が動かない……!)
「僕の家は代々滅妖師という職業に就いているんだ。」
「滅妖師……?」
「簡単に言うと、妖を祓うものだよ。」
咲磨は凍りついた。つまり八雲さんや郷の皆の命を脅かす者と言うことだ。
「お前の目的は…?」
「もちろん妖を根絶することだ。」
「なんで……!」
「なんで?そんなの妖が危険だからに決まってるじゃん。あいつらは平気で嘘をついて人間を傷つける。」
「そうじゃない妖だっている!」
「さあ、どうだろうね。あいつらの本心なんてわかりたくもないよ。」
目の前にいる少年は、驚くほど冷たい表情をしていた。
「ところで君、今自白したね。」
「なっ!」
「でも君は間違いなく人間だった。ということは、この休みの間に何かが起きたんだね。」
咲磨は綾峯が怖く感じた。そこまでばれているなんて考えもしなかったからだ。
(とりあえず、八雲さんに報告しないと)
咲磨は拘束を解こうとする。すると拘束は縛る力を増していった。
(はずれろ!はずれろ!)
「無駄だよ。それは解こうとすればするほど、強くなっていく。大人しくしてよ。人間になる方法を一緒に考えよう。」
綾峯はどこか必死に言っていた。まるで咲磨を失いたくないかのように。
その表情がなぜか見たことがある気がして咲磨は困惑した。だが、咲磨にも意地がある。
正直、人間に戻るという言葉に惹かれたのは事実だ。あと数年で家族や颯と別れるのはつらい。
けれど、咲磨を受け入れてくれた妖たちのために、ひとりで500年も土地を守り続けてくれた八雲さんのために、そして何より天玲のために、咲磨は自分で決めた!
咲磨は真っ直ぐに綾峯を見すえる。
「お前が妖になんの恨みがあるか知らないけど、俺は自分でこの道を選んだ!だから俺は戦う!妖たちを守るために!この地を守るために!」
「……っ!?君はまさか土地」
綾峯が言い終わる前に咲磨の体が光りだす。
バチバチッ!と音がなると綾峯が仕掛けた縛が解かれた。
「解けた!」
なぜかは分からないが今は好都合だ。
綾峯はひどく驚いた顔をしていた。それに違和感は持ったが今は気にしている暇はない。
咲磨はすぐに走り出す。とりあえずここから離れなければ。
「待て!どこへ行く!?」
綾峯もすぐ後を追ってきた。
またあの金縛りみたいなものに捕まるわけにはいかない。
先程はなぜか解けたが、次またそんな奇跡が起こるかわこらない。幸い今は授業中。クラスメイトのところに戻れば、綾峯大和も手を出しては来ないはずだ。
しかし綾峯は見かけによらず足が速かった。どこにそんな脚力が!これでは追いつかれてしまう……!
角を曲がると誰かとぶつかった。
「おい咲磨、目大丈夫か?」
天の助けとばかりに颯がいた。
(ああ、良かった……)
咲磨のホッとした顔に颯は不思議そうな顔をしている。
(颯がいるしさすがに綾峯も手出しはしないはずだ)
とりあえず颯に向き直った。
「目は大丈夫だよ。颯こそこんなところで何してんだ?」
「ああ、お前の戻りが遅いからなにかあったんじゃないかと思ってよ。」
「そっか、心配してくれてサンキュな。ほら行こうぜ。」
咲磨はいそいそと颯を体育館へ引っ張る。颯は胡乱げながらもついてきてくれた。
(やばいやつに目をつけられたな……。よりによってクラスメイトに……。しかもペアワーク一緒だし。)
咲磨は今後の対策を練るために八雲のところへ行くことにした。
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