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第二章 滅妖師編
第16話 闇
しおりを挟む放課後咲磨は幻影の郷へ足を運んだ。
そして今日あったことを八雲に話した。
八雲は難しい顔でそれを聞いていた。
「ふむ、滅妖師か……。」
「知ってるの?」
「ああ、だが話を聞くところ、此度の件はその綾峯大和という少年の独断だろう。」
「どうしてわかるの?」
「そもそも滅妖師というのは人に害を及ぼした妖を調伏する者たちだ。害を加えぬものには手出しをしない。これは昔、我らと向こうで定められた掟だ。」
「じゃあ、全ての妖を調伏するっていうのは滅妖師の本意じゃないんだ。」
咲磨はホッと胸をなでおろした。綾峯のような考えの集団だったら流石に怖いと思ったからだ。
「ああ。滅妖師とて妖を使って妖を調伏したりする者もいる。また、妖を友として接する滅妖師もな。私も滅妖師の知り合いがいた。だがそやつは、むやみに妖を殺さない、妖をも慈しむやつだったな。」
八雲はどこか懐かしげに目を細めていた。過去形なのはもうその人がこの世にいないからだろうか。
訊くのもはばかられるので咲磨は黙っていた。
「それで綾峯大和という少年だが……
おそらく今頃綾峯の当主にしぼられているだろう。」
「当主?」
咲磨はこの現代において当主という単語が出てくることに驚きだ。
「確か今の当主の名は綾峯和清だったか。一度会ったことがあってな、いかにも滅妖師と妖の協約を律儀に守る堅ぶつであったわ。」
そんなやつが掟を破った身内を野放しにはしまい?と八雲は言う。
なるほど、確かにそうだと咲磨は思った。
「だがそうだな、またやつがそなたを狙うかもしれん。当分のうちは此奴をともに連れて行け。」
そう言って差し出されたのは一匹の蛇。この青い瞳、まさか……
「もしかして瑠璃か!」
「しゅー!」
「名と刻むことは妖にとって存在を固定すること。此奴はもともと天玲の式神であったが、名を授けたゆえ、今はそなたについておる。天玲の最期の贈り物だろう。」
「……そっか。うん、これからよろしくな!’瑠璃’」
「シュー!」
八雲は咲磨と瑠璃の頭をくしゃっと撫でる。
咲磨は少し照れながらもされるがままにした。なにか大事なことを伝え忘れているような………
「あっそうだ!なんか綾峯に結界がどうのとか言われたんだけど俺なんかしたのか?」
咲磨が突然声を上げたので、八雲は少しびっくりした顔をしている。
「ああ、それは龍神の力だ。咲磨の魂 に宿る生来の力と龍神の妖力が混ざりあい、無意識に発動したのだろう。その力はやがて一つの力と成り、やがて一つの自然となる。」
「???」
半分以上何を言ってるのかわからない。ぽかんとしていると、八雲は口の端を緩め、さっきよりわかりやすい言葉で言った。
「つまりはそなたにも龍神の力が使えるようになったということだ。」
「まじで!?」
咲磨は驚き半分嬉しさ半分という感じだ。まあそうだろう。咲磨はまだ16歳。いくらかの中2の時期を過ぎたとはいえまだまだ子ども。ラノベで聞くような魔法ではないにしろ同じような力を現実世界でできるようになるのは素直に嬉しいことだった。
八雲は少し悪戯っぽい顔で言った。
「なんだ、今までで一番良い笑顔ではないか。」
八雲にからかわれて咲磨は赤面する。
「まあ良い。そうだな、力の発現は喜ばしいことだ。それに綾峯大和の動向も気になる。近いうちに力の使い方を教えよう。」
「本当!?ありがとう八雲さん!」
咲磨は八雲のいう一番良い笑顔で返事した。
◆◆◆◆◆◆◆◆
時を同じく
閑静な住宅街が並ぶ中に一際大きな屋敷がある。
日本風に造られたその屋敷は厳かな雰囲気を保ち、中に入るとその空気までもが緊張の糸を張り巡らせたかような心地になる。
その一角、庭の池に住む鯉も今は空気を読んでいるのか、一際張り詰めた空気の中に二つの人影が対座している。
一人は綾峯大和。もう一人は滅妖師御三家が1つ綾峯家当主、綾峯和清だ。
和清が静かに口を開く。
「大和よ。お主何をしでかしたかわかっているな?」
「……はい。」
「お主が手を出したのは土地神じゃ。しかも妖たちにとって至宝とも言える方。500年耐え忍びやっと現れた大切なお方じゃ。」
「………」
大和はきつく拳を握りしめた。その様子に和清はため息を漏らす。
「大和、お主は賢いと思っておった。血が繋がっていなくても儂はお主を当主補佐として任命しようと思っておった。」
そしてゆくゆくは当主にも、と。
大和はそれを静かに聞いていた。当主、確かに響きはいいが大和は元々それを辞退する気でいた。だから特段なんとも思わない。
当主なんてどうでもいいと思えるほどの深い深い闇。そして腹に残る爪痕のような古傷。この傷跡はあの夜のことを鮮明に思い出させる。それが大和に忘れるな、と強く訴えるようにうずく。
大和は落ち着いた声色で言った。
「この度はご迷惑をかけて申し訳ありません。当主補佐のことも白紙にしていただいて構いません。かの土地神を攻撃したのは私の独断行動。どうか私を除籍処分としてください。」
大和は頭を垂れる。
和清はわかっていた。この少年を絶対に放してはいけない。大和は自分を綾峯家から追放してくれと頼んでいるのだろうが、そんなことをしてしまえば、彼を縛る鎖が切れてしまう。誰の許しを乞うこともなく、手当り次第に妖を調伏してしまう。
それほどまでに綾峯大和の、否、結月大和の闇は深い。
その過去を知っているからこそ、妖を憎むなと言うこともできない。
ままならぬものだ、と和清は顔をしかめた。
「お主はしばらく謹慎とする。期間は儂が良いというまで。それまでは妖を調伏することはもちろん、妖を傷つけることも許さん。」
「っ何故です!僕は……!」
「黙れ!これは当主としての命令だ。異論は認めん。」
和清はそう言うと部屋から出ていく。
そこには歯を食いしばっている大和だけが残されていた。
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