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3days⑤
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わけもわからず走って、気がついたら森の中にいた。朝の空気が心地良く、むしろ少し寒いくらいだった。桜は大きな木の側で三角座りをした。そのうち、朝日が射し込んできて、眩しさに目が眩んだ。
目を覚ましたとき、零の姿がないことに気づいた。松田に伝えるべく診察室の扉をノックしようとしたら、二人の声が聞こえてきた。松田はレイに桜のことが好きなのかと問いかけ、その答えを聞いてしまった。
(俺とは、住む世界が違いますから)
嫌いと言われたわけじゃないのに、桜は大きなショックを受けた。そこへシラサカが乱入し、レイにキツい言葉を浴びせた。二人の争いを聞いているのが辛くなり、桜は割って入ったのである。
「桜、どこだ、どこにいる!?」
捜しに来たらしい零の声が、すぐ近くで聞こえた。
「言ったはずだ、ここにいる間は、俺の側にいろと」
零は記憶が戻っていた。これでもう接点は無くなる。
涙が溢れて、嗚咽が漏れた。堪えきれず、桜は泣いた。
それに、零さんが好きなのは、私じゃなく、優衣姉なんだよ。
「なんで泣いてんだよ、バカ」
ふわりと抱き上げられ、そのまま抱きしめられる。見つけてくれたことが嬉しくもあり、切なくもある。
「……零さん、記憶、戻りましたよね?」
「ああ。全部思い出したよ」
「だったら、サヨナラ、ですよね?」
零は黙った。鼓動が少しだけ早くなったような気がした。
「ずっと、言おうと思っていたことがあります。事件のとき、助けていただいて、ありがとうございました」
「君を助けたのは俺じゃなくナオだ。礼ならあいつに言えばいい」
「直人さんから聞きました。零さんが私を助けるために、色んな事をしてくれたと」
小さな舌打ちが聞こえて、零はよりいっそう強く桜を抱きしめた。
「それから、もう償いはいりません」
「どういう意味だ?」
「優衣姉は、零さんを恨んだりなんかしていません。自分を責めるのは、終わりにしてください」
「だけど、俺は」
「あなたが前に進まなければ、優衣姉も救われないから」
いつまでも優衣を想ってくれるのは有り難いけれど、そのせいで零は前を向くことが出来ないでいる。そしてこれは、父にも言えることである。
そっか、お父さんと零さんって、似てるんだ。
「私が優衣姉の代わりになったのは、あなたが記憶を失っていたから。だからもう、私は……!?」
ふいに拘束が解かれ、顎に手をかけられ、強引に顔を上げさせられる。至近距離に不機嫌な零の顔があった。涙でぐちゃぐちゃの、みっともない顔を見られたくなくて桜が横を向こうとすれば、すぐ制された。
「なぜ俺を見ない?」
「そんなの、恥ずかしいからに決まって」
言葉の途中で唇を塞がれた。長い時間だったのか、あっという間だったのか、それでも零の唇が桜に触れたことだけは嘘じゃない。
「今日一日、俺の恋人になってよ」
「え、コイビト? ええっ!?」
あまりのことに、桜は後退り、なんでもないところで転びそうになったところを、零に抱き止められた。
「どうして、私と? 私はもう優衣姉の代わりは」
「優衣の代わりなんかじゃない。俺が、桜といたいだけ」
これは夢だろうか。こんなことがあっていいんだろうか。
「夏休みは今日までだから。明日から、俺はまた別の世界で生きる」
現実を突きつけられ、桜は我に返った。そして、傷つくことを承知でこんな言葉を吐き出した。
「零さんは、私をどう思っているんですか?」
「それ、答えなきゃなんねえの?」
質問を質問で返され、桜はむっとした。
「出来れば、答えてほしいです」
「じゃあ、言わない」
「だったら、恋人なんか出来ません!」
「それなら恋人ごっこでいいや。答えは最後にちゃんと言うからさ」
そう言うと、零が笑った。年上なのに、屈託のないその笑顔が可愛いらしくて、桜はまた彼を好きになってしまった。
目を覚ましたとき、零の姿がないことに気づいた。松田に伝えるべく診察室の扉をノックしようとしたら、二人の声が聞こえてきた。松田はレイに桜のことが好きなのかと問いかけ、その答えを聞いてしまった。
(俺とは、住む世界が違いますから)
嫌いと言われたわけじゃないのに、桜は大きなショックを受けた。そこへシラサカが乱入し、レイにキツい言葉を浴びせた。二人の争いを聞いているのが辛くなり、桜は割って入ったのである。
「桜、どこだ、どこにいる!?」
捜しに来たらしい零の声が、すぐ近くで聞こえた。
「言ったはずだ、ここにいる間は、俺の側にいろと」
零は記憶が戻っていた。これでもう接点は無くなる。
涙が溢れて、嗚咽が漏れた。堪えきれず、桜は泣いた。
それに、零さんが好きなのは、私じゃなく、優衣姉なんだよ。
「なんで泣いてんだよ、バカ」
ふわりと抱き上げられ、そのまま抱きしめられる。見つけてくれたことが嬉しくもあり、切なくもある。
「……零さん、記憶、戻りましたよね?」
「ああ。全部思い出したよ」
「だったら、サヨナラ、ですよね?」
零は黙った。鼓動が少しだけ早くなったような気がした。
「ずっと、言おうと思っていたことがあります。事件のとき、助けていただいて、ありがとうございました」
「君を助けたのは俺じゃなくナオだ。礼ならあいつに言えばいい」
「直人さんから聞きました。零さんが私を助けるために、色んな事をしてくれたと」
小さな舌打ちが聞こえて、零はよりいっそう強く桜を抱きしめた。
「それから、もう償いはいりません」
「どういう意味だ?」
「優衣姉は、零さんを恨んだりなんかしていません。自分を責めるのは、終わりにしてください」
「だけど、俺は」
「あなたが前に進まなければ、優衣姉も救われないから」
いつまでも優衣を想ってくれるのは有り難いけれど、そのせいで零は前を向くことが出来ないでいる。そしてこれは、父にも言えることである。
そっか、お父さんと零さんって、似てるんだ。
「私が優衣姉の代わりになったのは、あなたが記憶を失っていたから。だからもう、私は……!?」
ふいに拘束が解かれ、顎に手をかけられ、強引に顔を上げさせられる。至近距離に不機嫌な零の顔があった。涙でぐちゃぐちゃの、みっともない顔を見られたくなくて桜が横を向こうとすれば、すぐ制された。
「なぜ俺を見ない?」
「そんなの、恥ずかしいからに決まって」
言葉の途中で唇を塞がれた。長い時間だったのか、あっという間だったのか、それでも零の唇が桜に触れたことだけは嘘じゃない。
「今日一日、俺の恋人になってよ」
「え、コイビト? ええっ!?」
あまりのことに、桜は後退り、なんでもないところで転びそうになったところを、零に抱き止められた。
「どうして、私と? 私はもう優衣姉の代わりは」
「優衣の代わりなんかじゃない。俺が、桜といたいだけ」
これは夢だろうか。こんなことがあっていいんだろうか。
「夏休みは今日までだから。明日から、俺はまた別の世界で生きる」
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「零さんは、私をどう思っているんですか?」
「それ、答えなきゃなんねえの?」
質問を質問で返され、桜はむっとした。
「出来れば、答えてほしいです」
「じゃあ、言わない」
「だったら、恋人なんか出来ません!」
「それなら恋人ごっこでいいや。答えは最後にちゃんと言うからさ」
そう言うと、零が笑った。年上なのに、屈託のないその笑顔が可愛いらしくて、桜はまた彼を好きになってしまった。
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