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3days⑦
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今日一日だけの零との恋人ごっこは、思いのほか楽しいものだった。
診療所から更に山奥にあるレストランは、隠れ家的な雰囲気で食事も美味しかった。車に乗って浴衣を買いに行って、道中、たくさん話をした。零がなぜこんな仕事しているのか、幼なじみだというマキ(男性)との繋がり、零の本当の名前まで教えてくれた。こんな話を聞いてよかったのかとたずねれば、
(別にいい。桜になら、何されてもいいから)
などと真顔で言われ、逆に桜が照れてしまった。これでは恋人ごっこではなく、本当の恋人のようだと言っても、零は気持ちを打ち明けてはくれなかった。
からかわれてるのかな、私。
ずっと手を握ってくれて、桜が視線を向ければ、零は屈託なく笑う。そのたびに桜はドキドキして、ますます零が好きになってしまう。
どうしよう、今日一日だけなんて嫌だよ。
零の本当の恋人になりたい。ずっと側にいたい。どうすれば、この願いは叶うのだろうか。
「シラサカの情報網すげえな。ほとんど人がいない花火が見えるスポット、最高じゃん」
零の声で桜は我に返る。シラサカが調べたらしいここには、人はほとんどおらず、いてもカップルが数組程度なので、周りを気にしていない。
「本当ですね。あ、花火上がりましたよ」
零と花火を見られるなんて思いもしなかった。嬉しさと特別な時間が終わる寂しさの狭間で、桜は揺れていた。
「俺は、君とはつきあえないから」
真夏の夜空に、大輪の花が咲いては消えていく。その儚い輝きを見つめながら、零が言った。
「どうして、ですか?」
「君を危険な目に遭わせたくないからだよ」
「私なら大丈夫ですから!?」
「磯田に拉致されて怖かっただろ。あんな思い、もう二度としたくないだろ」
確かにあの日以降、桜は男の人に触れられるのが怖くなっていたが、今は零やシラサカに触れられても怖くなくなった。
「やっぱり、私は優衣姉の代わりなんですか?」
「だから、違うって言ったじゃん」
「だったら、どうして!?」
そのとき、一段と大きな花火が打ち上がり、夜空をキラキラにする。
「君を大切に思っているから。優衣みたいにしたくないから」
嫌だ、終わりたくない。
桜は首を横に振った、何度も何度も。おかげで髪飾りが地面に落ちてしまったけれど、そんなことも気にならなかった。
「頼むから、泣かないでくれ」
零が落ちた髪飾りを拾って、桜に差し出す。困らせたいわけじゃないのに、涙が止まらなくなっていた。
「辛い別れにしたくない。俺は、君のことが好きだから」
数発の花火が打ち上がり、空が明るくなった。桜はまた首を横に振った。
好きなのに、どうしてサヨナラするの?
「嘘じゃないよ。俺の本当の気持ち、最後に言うって言っただろ」
零は桜の唇に触れた後、奥深くまで侵入してきた。苦しくて、切ないのに気持ちいい。こんなキスは初めてだった。
「笑ってくれよ、君の笑顔を覚えていたいんだ」
涙を拭うように、零の唇が頬に触れる。止めなくてはと思うのに、その優しさに胸が詰まる。その唇は瞼に触れ、鼻先にも触れた。やがて首筋に触れ、甘い印をつけた。こうして、目に見える範囲の場所にキスをし終えると、零は桜を抱きしめた。夜の闇と静寂が空を支配するまで。
「終わっちゃいましたね、花火」
「そうだな」
「帰りましょうか」
「ああ」
桜は零と手を繋いで歩いた。気を抜いたら涙が出そうになるから、わざと明るく振る舞った。
「零さん、お願いがあります。私のこと、忘れないでください。ずっとずっと、覚えててください!」
「わかった。その代わり、君は俺のこと忘れて、幸せになってほしい」
桜は嘘をついた。必死に笑顔を作り、わかりましたと返事をした。
そこからは二人とも無言だった。診療所に辿り着くと、零が病室まで送ってくれた。おやすみと声をかけられ、おやすみなさいと返した。
それが最後だった。眠れない夜を過ごし、夜明けと共に外へ出てみれば、零もシラサカもいなくなっていたから。
診療所から更に山奥にあるレストランは、隠れ家的な雰囲気で食事も美味しかった。車に乗って浴衣を買いに行って、道中、たくさん話をした。零がなぜこんな仕事しているのか、幼なじみだというマキ(男性)との繋がり、零の本当の名前まで教えてくれた。こんな話を聞いてよかったのかとたずねれば、
(別にいい。桜になら、何されてもいいから)
などと真顔で言われ、逆に桜が照れてしまった。これでは恋人ごっこではなく、本当の恋人のようだと言っても、零は気持ちを打ち明けてはくれなかった。
からかわれてるのかな、私。
ずっと手を握ってくれて、桜が視線を向ければ、零は屈託なく笑う。そのたびに桜はドキドキして、ますます零が好きになってしまう。
どうしよう、今日一日だけなんて嫌だよ。
零の本当の恋人になりたい。ずっと側にいたい。どうすれば、この願いは叶うのだろうか。
「シラサカの情報網すげえな。ほとんど人がいない花火が見えるスポット、最高じゃん」
零の声で桜は我に返る。シラサカが調べたらしいここには、人はほとんどおらず、いてもカップルが数組程度なので、周りを気にしていない。
「本当ですね。あ、花火上がりましたよ」
零と花火を見られるなんて思いもしなかった。嬉しさと特別な時間が終わる寂しさの狭間で、桜は揺れていた。
「俺は、君とはつきあえないから」
真夏の夜空に、大輪の花が咲いては消えていく。その儚い輝きを見つめながら、零が言った。
「どうして、ですか?」
「君を危険な目に遭わせたくないからだよ」
「私なら大丈夫ですから!?」
「磯田に拉致されて怖かっただろ。あんな思い、もう二度としたくないだろ」
確かにあの日以降、桜は男の人に触れられるのが怖くなっていたが、今は零やシラサカに触れられても怖くなくなった。
「やっぱり、私は優衣姉の代わりなんですか?」
「だから、違うって言ったじゃん」
「だったら、どうして!?」
そのとき、一段と大きな花火が打ち上がり、夜空をキラキラにする。
「君を大切に思っているから。優衣みたいにしたくないから」
嫌だ、終わりたくない。
桜は首を横に振った、何度も何度も。おかげで髪飾りが地面に落ちてしまったけれど、そんなことも気にならなかった。
「頼むから、泣かないでくれ」
零が落ちた髪飾りを拾って、桜に差し出す。困らせたいわけじゃないのに、涙が止まらなくなっていた。
「辛い別れにしたくない。俺は、君のことが好きだから」
数発の花火が打ち上がり、空が明るくなった。桜はまた首を横に振った。
好きなのに、どうしてサヨナラするの?
「嘘じゃないよ。俺の本当の気持ち、最後に言うって言っただろ」
零は桜の唇に触れた後、奥深くまで侵入してきた。苦しくて、切ないのに気持ちいい。こんなキスは初めてだった。
「笑ってくれよ、君の笑顔を覚えていたいんだ」
涙を拭うように、零の唇が頬に触れる。止めなくてはと思うのに、その優しさに胸が詰まる。その唇は瞼に触れ、鼻先にも触れた。やがて首筋に触れ、甘い印をつけた。こうして、目に見える範囲の場所にキスをし終えると、零は桜を抱きしめた。夜の闇と静寂が空を支配するまで。
「終わっちゃいましたね、花火」
「そうだな」
「帰りましょうか」
「ああ」
桜は零と手を繋いで歩いた。気を抜いたら涙が出そうになるから、わざと明るく振る舞った。
「零さん、お願いがあります。私のこと、忘れないでください。ずっとずっと、覚えててください!」
「わかった。その代わり、君は俺のこと忘れて、幸せになってほしい」
桜は嘘をついた。必死に笑顔を作り、わかりましたと返事をした。
そこからは二人とも無言だった。診療所に辿り着くと、零が病室まで送ってくれた。おやすみと声をかけられ、おやすみなさいと返した。
それが最後だった。眠れない夜を過ごし、夜明けと共に外へ出てみれば、零もシラサカもいなくなっていたから。
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