22 / 23
奇跡の結末③
しおりを挟む
仕事に没頭していれば、余計な事を考えずに済む。書類の山があっという間に片づいていく。やはり他人に任せるより、自分でやった方が早い。
「どういうことだよ」
桜井のところへ行ったはずのシラサカが、レイの側で仁王立ちになる。
「おかえり。終わったんなら、もう好きにしていいぞ」
「桜ちゃん、おまえにフラれたって言ってたぞ」
この様子では、シラサカは桜と話をしたようである。レイは何もなかったかのように、パソコンに向かう。
「おまえはハナムラの情報屋のリーダーだろ」
「そうだ。だからこそ、これ以上、関わらせるわけには──」
「おまえは八年前と同じ、無力なガキのままなのか?」
キーボードを叩く手が止まった。たまらずレイはシラサカを見た。
「それなりの地位も信頼も築いている。ボスでさえ、おまえには一目置いてんだぞ」
「何が言いたい」
レイは苛立った。胸がジクジクと傷んで、溜まっていた膿が流れ出してくる。
「今のおまえには力がある。あのときのようなことにはならない」
レイは立ち上がり、逃げようとしたが、行く手を塞いだのはマキだった。
「マキ、そこをどけ」
「桜ちゃんと過ごした時間、無かったことに出来るのか?」
シラサカに問われ、レイは記憶を無くしていた三日間のことを思い起こした。自分が何者かわからず、不安で仕方なかった。そんなレイに手を差し伸べて笑ってくれたのは桜だった。
「最初は、彼女に優衣ちゃんを重ねていたかもしれない。だが、最後は違ったはずだ」
「うるさい、黙れ」
レイは俯き、唇を噛みしめ、心の奥で叫んだ。
もう二度とあんな目に遭いたくない。これ以上、傷つきたくねえんだよ。
「いつまで引きずってんのさ、らしくもない」
両手がレイの両頬を叩く。衝撃に顔を上げれば、マキがまっすぐ自分を見つめていた。
「傷つくのが嫌なら、そうならないよう、護ればいいだけじゃん!」
心を見透かされたことに、レイは動揺した。いや、こうなることがわかっていたから、マキには話せなかった。弱い自分を見せたくなかったから。
「ナオは帰ったけど、レイが来るまでひとりで待ってるって。早く行ってあげなよ」
なんで来てんだよ、バカじゃねえの。
苛立ちと嬉しさが入り混じって、レイはすぐさま駆け出した。
「どういうことだよ」
桜井のところへ行ったはずのシラサカが、レイの側で仁王立ちになる。
「おかえり。終わったんなら、もう好きにしていいぞ」
「桜ちゃん、おまえにフラれたって言ってたぞ」
この様子では、シラサカは桜と話をしたようである。レイは何もなかったかのように、パソコンに向かう。
「おまえはハナムラの情報屋のリーダーだろ」
「そうだ。だからこそ、これ以上、関わらせるわけには──」
「おまえは八年前と同じ、無力なガキのままなのか?」
キーボードを叩く手が止まった。たまらずレイはシラサカを見た。
「それなりの地位も信頼も築いている。ボスでさえ、おまえには一目置いてんだぞ」
「何が言いたい」
レイは苛立った。胸がジクジクと傷んで、溜まっていた膿が流れ出してくる。
「今のおまえには力がある。あのときのようなことにはならない」
レイは立ち上がり、逃げようとしたが、行く手を塞いだのはマキだった。
「マキ、そこをどけ」
「桜ちゃんと過ごした時間、無かったことに出来るのか?」
シラサカに問われ、レイは記憶を無くしていた三日間のことを思い起こした。自分が何者かわからず、不安で仕方なかった。そんなレイに手を差し伸べて笑ってくれたのは桜だった。
「最初は、彼女に優衣ちゃんを重ねていたかもしれない。だが、最後は違ったはずだ」
「うるさい、黙れ」
レイは俯き、唇を噛みしめ、心の奥で叫んだ。
もう二度とあんな目に遭いたくない。これ以上、傷つきたくねえんだよ。
「いつまで引きずってんのさ、らしくもない」
両手がレイの両頬を叩く。衝撃に顔を上げれば、マキがまっすぐ自分を見つめていた。
「傷つくのが嫌なら、そうならないよう、護ればいいだけじゃん!」
心を見透かされたことに、レイは動揺した。いや、こうなることがわかっていたから、マキには話せなかった。弱い自分を見せたくなかったから。
「ナオは帰ったけど、レイが来るまでひとりで待ってるって。早く行ってあげなよ」
なんで来てんだよ、バカじゃねえの。
苛立ちと嬉しさが入り混じって、レイはすぐさま駆け出した。
0
あなたにおすすめの小説
あなたの片想いを聞いてしまった夜
柴田はつみ
恋愛
「『好きな人がいる』——その一言で、私の世界は音を失った。」
公爵令嬢リリアーヌの初恋は、隣家の若き公爵アレクシスだった。
政務や領地行事で顔を合わせるたび、言葉少なな彼の沈黙さえ、彼女には優しさに聞こえた。——毎日会える。それだけで十分幸せだと信じていた。
しかしある日、回廊の陰で聞いてしまう。
「好きな人がいる。……片想いなんだ」
名前は出ない。だから、リリアーヌの胸は残酷に結論を作る。自分ではないのだ、と。
婚約破棄のあと、あなたのことだけ思い出せない
柴田はつみ
恋愛
伯爵令嬢セシリアは、王宮の舞踏会で王太子レイヴンから公開の場で婚約破棄を言い渡され、その場で倒れた。
目覚めた彼女は、礼儀も常識も覚えているのに――ただ一つ、レイヴンだけを思い出せない。
「あなたは、どなたですか?」
その一言に、彼の瞳は壊れた。
けれどレイヴンは何も語らず、セシリアを遠ざける。彼女を守るために、あの日婚約を捨てたのだと告げられないまま。
セシリアは過去を断ち切り、王宮の侍女として新しい生活を始める。
優しく手を差し伸べる護衛騎士アデルと心を通わせていくほど、レイヴンの胸は嫉妬と後悔で焼けていった。
――守るために捨てたはずなのに。忘れられたまま、他の男に笑う彼女を見ていられない。
一方、王宮では“偽聖女”の陰謀と、セシリアの血に眠る秘密が動き出す。
記憶を取り戻せば、彼女は狙われる。取り戻さなければ、二人は永遠に届かない。
これは、忘れてしまった令嬢と、忘れられてなお愛を捨てられない王太子が、もう一度“選び直す”恋の物語。
愛人を選んだ夫を捨てたら、元婚約者の公爵に捕まりました
由香
恋愛
伯爵夫人リュシエンヌは、夫が公然と愛人を囲う結婚生活を送っていた。
尽くしても感謝されず、妻としての役割だけを求められる日々。
けれど彼女は、泣きわめくことも縋ることもなく、静かに離婚を選ぶ。
そうして“捨てられた妻”になったはずの彼女の前に現れたのは、かつて婚約していた元婚約者――冷静沈着で有能な公爵セドリックだった。
再会とともに始まるのは、彼女の価値を正しく理解し、決して手放さない男による溺愛の日々。
一方、彼女を失った元夫は、妻が担っていたすべてを失い、社会的にも転落していく。
“尽くすだけの妻”から、“選ばれ、守られる女性”へ。
静かに離婚しただけなのに、
なぜか元婚約者の公爵に捕まりました。
遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。
沼野 花
恋愛
私は、夫にも子供にも選ばれなかった。
その事実だけを抱え、離縁を突きつけ、家を出た。
そこで待っていたのは、最悪の出来事――
けれど同時に、人生の扉がひらく瞬間でもあった。
夫は愛人と共に好きに生きればいい。
今さら「本当に愛していたのは君だ」と言われても、裏切ったあなたを許すことはできない。
でも、子供たちの心だけは、必ず取り戻す。
妻にも母にもなれなかった伯爵夫人イネス。
過去を悔いながらも、愛を手に入れることを決めた彼女が辿り着いた先には――
マチ恋 ―君に捧げるLove song― 一夜の相手はスーパースター。誰にも言えない秘密の恋。【完結】
remo
恋愛
あなたにとっては遊びでも、私にとっては、…奇跡の夜だった。
地味で平凡で取り柄のない私に起きた一夜のキセキ。
水村ゆい、23歳、シングルマザー。
誰にも言えないけど、愛息子の父親は、
今人気絶頂バンドのボーカルなんです。
初めての恋。奇跡の恋。離れ離れの恋。不倫の恋。一途な恋。最後の恋。
待っている…
人生で、一度だけの恋。
【完結】ありがとうございました‼︎
短編【シークレットベビー】契約結婚の初夜の後でいきなり離縁されたのでお腹の子はひとりで立派に育てます 〜銀の仮面の侯爵と秘密の愛し子〜
美咲アリス
恋愛
レティシアは義母と妹からのいじめから逃げるために契約結婚をする。結婚相手は醜い傷跡を銀の仮面で隠した侯爵のクラウスだ。「どんなに恐ろしいお方かしら⋯⋯」震えながら初夜をむかえるがクラウスは想像以上に甘い初体験を与えてくれた。「私たち、うまくやっていけるかもしれないわ」小さな希望を持つレティシア。だけどなぜかいきなり離縁をされてしまって⋯⋯?
片想い婚〜今日、姉の婚約者と結婚します〜
橘しづき
恋愛
姉には幼い頃から婚約者がいた。両家が決めた相手だった。お互いの家の繁栄のための結婚だという。
私はその彼に、幼い頃からずっと恋心を抱いていた。叶わぬ恋に辟易し、秘めた想いは誰に言わず、二人の結婚式にのぞんだ。
だが当日、姉は結婚式に来なかった。 パニックに陥る両親たち、悲しげな愛しい人。そこで自分の口から声が出た。
「私が……蒼一さんと結婚します」
姉の身代わりに結婚した咲良。好きな人と夫婦になれるも、心も体も通じ合えない片想い。
記憶喪失の婚約者は私を侍女だと思ってる
きまま
恋愛
王家に仕える名門ラングフォード家の令嬢セレナは王太子サフィルと婚約を結んだばかりだった。
穏やかで優しい彼との未来を疑いもしなかった。
——あの日までは。
突如として王都を揺るがした
「王太子サフィル、重傷」の報せ。
駆けつけた医務室でセレナを待っていたのは、彼女を“知らない”婚約者の姿だった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる