32 / 69
さよなら全回転
④
しおりを挟む
同じ頃、某所にて。
「そこまでして柳を生かしたいってか。健気なお嬢様だね、全く」
浅田家に密かに取り付けた盗聴器によって、レイは麻百合と花梨の会話を聞いていた。
「おまえも大概悪趣味だな。そのお嬢様とやらは、今日明日の命なんだろ。そっとしといてやれよ」
レイの向かいに佇む男は、長身でくっきりとした目鼻立ちをしていた。髪は茶色で瞳の色は青、年の頃は三十代半ば位。本人曰わくクォーターだという話だった。
「今日明日の命だから、てめえを呼んだんだよ、シラサカ」
「俺が言うのもなんだけどさ、これはマキの仕事じゃねえのかよ」
「マキは柳と鉢合わせたら絶対バラすって言ってんだよ。だから、仕方なくおまえを呼んだんだよ」
仕方なくのところに、わざとアクセントをつけるレイ。
「ふーん、仕方なくねえ。おまえが誰かに執着するなんて初めてじゃねえ? けど、相手は男だろ」
シラサカと呼ばれた男はからかうように言って、笑った。
「妙な誤解すんじゃねえ。おまえの耳にも入ってんだろ、これはボス直々の依頼で極秘案件だ。使えるものはなんでも使えと言われている。今回は金は一円も払わねえからな」
「人を金の亡者みたいに言うなよ。現状マキが使えないんなら仕方ねえか。特別に手を貸してやるよ」
「勝手に動くなよ。俺の指示に従え。それから、遅刻は一切認めねえからな。二十四時間待機で頼む」
「はいはい。レイ君の言うとおりにしますよ」
シラサカは口笛を吹きながら、軽やかな足取りで去っていった。
「後はおまえが使い物になるかだぞ、柳。さっさとポンコツから卒業しろよな」
パソコンが何台か置かれた机の横に、一枚の写真がピンで留められていた。そこに映っているのは学生姿で仏頂面の柳だった。
「そこまでして柳を生かしたいってか。健気なお嬢様だね、全く」
浅田家に密かに取り付けた盗聴器によって、レイは麻百合と花梨の会話を聞いていた。
「おまえも大概悪趣味だな。そのお嬢様とやらは、今日明日の命なんだろ。そっとしといてやれよ」
レイの向かいに佇む男は、長身でくっきりとした目鼻立ちをしていた。髪は茶色で瞳の色は青、年の頃は三十代半ば位。本人曰わくクォーターだという話だった。
「今日明日の命だから、てめえを呼んだんだよ、シラサカ」
「俺が言うのもなんだけどさ、これはマキの仕事じゃねえのかよ」
「マキは柳と鉢合わせたら絶対バラすって言ってんだよ。だから、仕方なくおまえを呼んだんだよ」
仕方なくのところに、わざとアクセントをつけるレイ。
「ふーん、仕方なくねえ。おまえが誰かに執着するなんて初めてじゃねえ? けど、相手は男だろ」
シラサカと呼ばれた男はからかうように言って、笑った。
「妙な誤解すんじゃねえ。おまえの耳にも入ってんだろ、これはボス直々の依頼で極秘案件だ。使えるものはなんでも使えと言われている。今回は金は一円も払わねえからな」
「人を金の亡者みたいに言うなよ。現状マキが使えないんなら仕方ねえか。特別に手を貸してやるよ」
「勝手に動くなよ。俺の指示に従え。それから、遅刻は一切認めねえからな。二十四時間待機で頼む」
「はいはい。レイ君の言うとおりにしますよ」
シラサカは口笛を吹きながら、軽やかな足取りで去っていった。
「後はおまえが使い物になるかだぞ、柳。さっさとポンコツから卒業しろよな」
パソコンが何台か置かれた机の横に、一枚の写真がピンで留められていた。そこに映っているのは学生姿で仏頂面の柳だった。
0
あなたにおすすめの小説
「がっかりです」——その一言で終わる夫婦が、王宮にはある
柴田はつみ
恋愛
妃の席を踏みにじったのは令嬢——けれど妃の心を折ったのは、夫のたった一言だった
王太子妃リディアの唯一の安らぎは、王太子アーヴィンと交わす午後の茶会。だが新しく王宮に出入りする伯爵令嬢ミレーユは、妃の席に先に座り、殿下を私的に呼び、距離感のない振る舞いを重ねる。
リディアは王宮の礼節としてその場で正す——正しいはずだった。けれど夫は「リディア、そこまで言わなくても……」と、妃を止めた。
「わかりました。あなたには、がっかりです」
微笑んで去ったその日から、夫婦の茶会は終わる。沈黙の王宮で、言葉を失った王太子は、初めて“追う”ことを選ぶが——遅すぎた。
🥕おしどり夫婦として12年間の結婚生活を過ごしてきたが一波乱あり、妻は夫を誰かに譲りたくなるのだった。
設楽理沙
ライト文芸
2026.1.4 73話見直した際、瑛士の台詞《本音/懺悔》を加筆しました。😇
☘ 累計ポイント/ 200万pt 超えました。ありがとうございます。
―― 備忘録 ――
第8回ライト文芸大賞では大賞2位ではじまり2位で終了。 最高 57,392 pt
〃 24h/pt-1位ではじまり2位で終了。 最高 89,034 pt
◇ ◇ ◇ ◇
紳士的でいつだって私や私の両親にやさしくしてくれる
素敵な旦那さま・・だと思ってきたのに。
隠された夫の一面を知った日から、眞奈の苦悩が
始まる。
苦しくて、悲しくてもののすごく惨めで・・
消えてしまいたいと思う眞奈は小さな子供のように
大きな声で泣いた。
泣きながらも、よろけながらも、気がつけば
大地をしっかりと踏みしめていた。
そう、立ち止まってなんていられない。
☆-★-☆-★+☆-★-☆-★+☆-★-☆-★
2025.4.19☑~
夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い
青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。
神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。
もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。
生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。
過去世と同じ轍を踏みたくない……
さようなら、私の初恋
しょくぱん
恋愛
「さよなら、私の初恋。……もう、全部お返しします」
物心ついた時から、彼だけが世界のすべてだった。 幼馴染の騎士団長・レオンに捧げた、十数年の純粋な初恋。 彼が「無敵」でいられたのは、アリアが無自覚に与え続けた『治癒の加護』があったから。
だが婚約直前、アリアは知ってしまう。 彼にとって自分は、仲間内で競い合う「賭けの対象」でしかなかったことを。
「あんな女、落とすまでのゲームだよ」
つまらない妃と呼ばれた日
柴田はつみ
恋愛
公爵令嬢リーシャは政略結婚で王妃に迎えられる。だが国王レオニスの隣には、幼馴染のセレスが“当然”のように立っていた。祝宴の夜、リーシャは国王が「つまらない妃だ」と語る声を聞いてしまい、心を閉ざす。
舞踏会で差し出された手を取らず、王弟アドリアンの助けで踊ったことで、噂は一気に燃え上がる――「王妃は王弟と」「国王の本命は幼馴染」と。
さらに宰相は儀礼と世論を操り、王妃を孤立させる策略を進める。監視の影、届かない贈り物、すり替えられた言葉、そして“白薔薇の香”が事件現場に残る冤罪の罠。
リーシャは微笑を鎧に「今日から、王の隣に立たない」と決めるが、距離を取るほど誤解は確定し、王宮は二人を引き裂いていく。
――つまらない妃とは、いったい誰が作ったのか。真実が露わになった時、失われた“隣”は戻るのか。
遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。
沼野 花
恋愛
【3月中――完結!】
積み上がった伏線の回収目前!!
夫にも子どもにも、私は選ばれなかった。
長年の裏切りを抱え、離縁状を置いて家を出た――。
待っていたのは、凍てつく絶望。
けれど同時に、それは残酷な運命の扉が開く瞬間でもあった。
「夫は愛人と生きればいい。
今さら縋られても、裏切ったあなたを許す力など残っていない」
それでも私は誓う――
「子どもたちの心だけは、必ず取り戻す」
歪で、完全な幸福――それとも、破滅。
“石”に翻弄された者たちの、狂おしい物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる