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9 : 邂逅
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「猊下?」
水面に浮いていると、見知った顔があった。
カルロだ。
自分の今のあられもない姿を思い出して、あわてて体を起こして、隠すように腕で自分を抱き締めた。
「大丈夫ですか!」
「え、ええ。もちろん」
水に濡れた服は、ぴったりと体に密着し、胸の勃起した飾りを主張する。
はりつめた下肢を隠すように、小川に体を沈めた。
「あの、そのような所にいては風邪をひいてしまいます」
カルロは頬を赤く染めて顔を背けた。
こんな乱れた姿をみられたことへの羞恥と恐怖があった。
「猊下、ひとまず川から出ましょう。お手を」
カルロは視線をそらしながら手をさしのばす。だが、その手をとることを躊躇ってしまう。
結局、自力で水からでると、カルロは聖騎士の白いマントを被せてくれた。
アメデアは何を言えばいいのかわからずに、立ち尽くしていた。
「……どうしてここに」
「猊下の様子が気になったので。それよりもお加減が悪そうですが、えっと、お手伝いをしましょうか」
きっとカルロは善意からその言葉をかけたはずだ。
しかし、アメデアは数歩後ずさった。
性的な目で見られ、怯えたのだ。
今までなかったわけではないが、すでに性的搾取の対象である年齢を越え、リュアオスに純潔を誓ったために、あからさまな視線を受けることはなかった。
この体をリュアオス以外に触れることを想像すると吐き気さえ感じる。
「いや、あの。そういうつもりじゃ」
カルロが口ごもりながら何かを言おうとしていたが、アメデアの耳には入ってこない。
「アメデア!」
ふと目の前が眩しく輝き、腕を引かれる。そのまま、抱き締められる。
聞きなれた声とその体温は顔を見なくてもわかる。
「リュアオスさま」
安心したのもつかの間、リュアオスはアメデアの口をふさいだ。唇をこじあけ、舌を入れる。
「ん……んんっ」
なんども角度をかえて、口腔を舌で蹂躙する。
呼吸の仕方も忘れ、すっかり腰もぬけた。アメデアはすがるようにリュアオスにしがみつく。
「おい、そこの」
リュアオスはアメデアを隠すように抱きしめながら、カルロを睨んだ。
「とっとと失せろ」
突如現れた男とキスをして抱きしめあっているアメデアを見て、動転していたカルロは我に返る。
「お、俺は猊下の護衛騎士です」
カルロは真っ直ぐに見つめ返して言った。
彼の心意気は素晴らしいが、今日は暇を出しており、護衛は断っていた。だから、今のカルロは独断で勝手についてきたただの男でしかないのだ。
「つかえる神に刃向かうのか」
リュアオスは冷ややかな瞳を向けた。
尋常ではない圧力がカルロにのしかかる。植物の蔦がカルロに襲いかかろうとしていた。
「リュアオスさまっ! だめです。お願いです。愚かな私が悪いのです。どうか彼の失言に対してお目こぼしを」
アメデアはリュアオスの服にすがりつく指を震わせながら懇願した。
そのどこか怯えたような姿に胸をいため、カルロへの攻撃意欲が削がれた。
「聖騎士カルロ、命令です。今見たことは忘れ、すぐにここから立ち去りなさい」
アメデアの命令にカルロはぐっと言葉をこらえて、一礼して走り去った。
カルロもなんとなく気づいていた。突如あらわれた者が人ならざるものであると。
あの時のアメデアの艶やかな姿と先程の水に濡れたアメデアの姿が重なり、醜く歪んだ。
水面に浮いていると、見知った顔があった。
カルロだ。
自分の今のあられもない姿を思い出して、あわてて体を起こして、隠すように腕で自分を抱き締めた。
「大丈夫ですか!」
「え、ええ。もちろん」
水に濡れた服は、ぴったりと体に密着し、胸の勃起した飾りを主張する。
はりつめた下肢を隠すように、小川に体を沈めた。
「あの、そのような所にいては風邪をひいてしまいます」
カルロは頬を赤く染めて顔を背けた。
こんな乱れた姿をみられたことへの羞恥と恐怖があった。
「猊下、ひとまず川から出ましょう。お手を」
カルロは視線をそらしながら手をさしのばす。だが、その手をとることを躊躇ってしまう。
結局、自力で水からでると、カルロは聖騎士の白いマントを被せてくれた。
アメデアは何を言えばいいのかわからずに、立ち尽くしていた。
「……どうしてここに」
「猊下の様子が気になったので。それよりもお加減が悪そうですが、えっと、お手伝いをしましょうか」
きっとカルロは善意からその言葉をかけたはずだ。
しかし、アメデアは数歩後ずさった。
性的な目で見られ、怯えたのだ。
今までなかったわけではないが、すでに性的搾取の対象である年齢を越え、リュアオスに純潔を誓ったために、あからさまな視線を受けることはなかった。
この体をリュアオス以外に触れることを想像すると吐き気さえ感じる。
「いや、あの。そういうつもりじゃ」
カルロが口ごもりながら何かを言おうとしていたが、アメデアの耳には入ってこない。
「アメデア!」
ふと目の前が眩しく輝き、腕を引かれる。そのまま、抱き締められる。
聞きなれた声とその体温は顔を見なくてもわかる。
「リュアオスさま」
安心したのもつかの間、リュアオスはアメデアの口をふさいだ。唇をこじあけ、舌を入れる。
「ん……んんっ」
なんども角度をかえて、口腔を舌で蹂躙する。
呼吸の仕方も忘れ、すっかり腰もぬけた。アメデアはすがるようにリュアオスにしがみつく。
「おい、そこの」
リュアオスはアメデアを隠すように抱きしめながら、カルロを睨んだ。
「とっとと失せろ」
突如現れた男とキスをして抱きしめあっているアメデアを見て、動転していたカルロは我に返る。
「お、俺は猊下の護衛騎士です」
カルロは真っ直ぐに見つめ返して言った。
彼の心意気は素晴らしいが、今日は暇を出しており、護衛は断っていた。だから、今のカルロは独断で勝手についてきたただの男でしかないのだ。
「つかえる神に刃向かうのか」
リュアオスは冷ややかな瞳を向けた。
尋常ではない圧力がカルロにのしかかる。植物の蔦がカルロに襲いかかろうとしていた。
「リュアオスさまっ! だめです。お願いです。愚かな私が悪いのです。どうか彼の失言に対してお目こぼしを」
アメデアはリュアオスの服にすがりつく指を震わせながら懇願した。
そのどこか怯えたような姿に胸をいため、カルロへの攻撃意欲が削がれた。
「聖騎士カルロ、命令です。今見たことは忘れ、すぐにここから立ち去りなさい」
アメデアの命令にカルロはぐっと言葉をこらえて、一礼して走り去った。
カルロもなんとなく気づいていた。突如あらわれた者が人ならざるものであると。
あの時のアメデアの艶やかな姿と先程の水に濡れたアメデアの姿が重なり、醜く歪んだ。
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