白亜城の麗しき錬金術師

土岐ゆうば(金湯叶)

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33:アヒムという男

「あの子は悪魔の子よ。人間じゃないわ。天使のような見た目をして、人を誑かして、私の人生を滅茶苦茶にしたのよ」

母親がヒステリックに叫んだ。

「あんな子が私のお腹から産まれたなんて信じられない。知っていますか、あの子はわずか三歳で自分の父親を誑かしたんですよ」

母親はアヒムに似た双眸をして訴えた。

「あの人もあの人でどうかしているんです。あの子の言うことならなんでも聞いて、私にくれなかった愛情まで与えたんですよ」

彼女の言葉は愛に飢えた女の虚言なのか、それとも事実なのか誰にも判別がつかない。

「教育ということでやっとあの人から引き離せたと思ったら、先生まで誘惑して成績を偽造しているんです」

母親は据わった瞳で、聞きもしないことまでペラペラと喋る。

「それほど賢いならばと国王陛下にさしだしたんです。すぐにボロを出して、あの人もあの子が悪魔だと知ると思ったのに」

アヒムは母親が思うよりも、ずっと長く城にいて研究活動をしていた。だが結局は金の錬成ができずに、追い出されたのだ。また、夫を誑かされるのはたまったものではない母親は、アヒムを家からも追い出した。

「穢らわしいあの子は、自分の叔父と、あの人の弟を誘惑して……ああ、口にするのも恐ろしい」

使用人に聞けば、仲のよい叔父と甥の触れ合いと言う者もいれば、一線を越えた過度なスキンシップだったと言うものもいた。

真実はわからない。

母親の話も幻と現が交じり合っていて信憑性に欠ける。

ただわかることは、叔父という人物が鍵になるということだ。

「お話をありがとうございました、ファーベルク夫人」

これ以上の会話は無意味だとオスヴァルトは話を切り上げた。

件の叔父はすでにこの世におらず、彼の法律上の妻がいて、話を聞くことができた。

「あの子は美しく、そして聡明な子どもだった。それ故に孤独で愛を欲した。それをあたえたのが自分だったと言っていました」

自分の妻に語るほどに叔父はアヒムに目をかけていたようだ。

「あの人の性的趣向を私は埋めることができないのです。私は形だけの妻であり、よき友でした」

叔父は同性愛者だったようだ。貴族の次男とは言え、血族を増やすためにも結婚しなければいけず彼女と結婚したらしい。

「そのアヒムという少年と性的関係を持っていたかはわかりませんが、父親によく似ていて美しいと語っていましたから、そういった対象ではあったのでしょう」

叔父の初恋は実の兄、アヒムの父親だったらしい。この家系はなんともねじ曲がった性を持っているようだ。

「あの人の歪んだ愛情は甘美で中毒性のある危険なものなんです。今までいろんな人がいましたが、あの人が話しをしてくれたのはアヒム少年だけなんです。それだけ特別で、最初の狂愛だったのでしょうね」

そう語る叔父の妻という人間はいつまでもその喪服を脱ぐことはなかった。

叔父という存在は、アヒムの孤独を埋め、愛情を与え、勉学の師でもあった。

彼がアヒムに与えた影響は計り知れないものだろう。もしかしたら、あの暗い瞳はアヒム自身も気づかない彼の本質なのかもしれない。



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