キミとネコと暮らしたい ~不器用なキミと、淫らな僕に愛されて~【完結】

降矢菖蒲

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三章:不器用なキミと、淫らな僕に愛されて

18.もう一人の僕からも愛されて(★)

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「あっ! ゼフ、や……めっ……」

後ろから容赦なく突かれる。
視界が上下に揺れて、僕の体はみるみる内に沈んでいく。

「あっ、あっ、あっ、あ゛っ!!」

遂にはうつ伏せの状態に。
それでもゼフの猛攻は止まず、激しく的確に急所を突いてくる。

どうして君がそこを……?
僕は本当に君とも……?
いや、そんなはずはない。

「やめ、るんだ! 君には――」
「なぁ、俺とのことも忘れちゃったのか?」
「っ! 君は……」

甲冑姿の大柄な男性。
青みがかった黒髪に、瑠璃色の瞳をしている。
間違いない。アーサー・フォーサイス。
僕の親友で、ハーヴィー様のご子息だ。

彼も亡くなったはず。
半年前に、僕のせいで。

「ん゛んぅ……!」
「こんなふうに慰めてくれただろ? なぁ……?」

口の中にペニスを押し込んでくる。
限界まで開かされて、口端からはボタボタと唾液が零れ落ちていく。

「思い出してくれよ、ビル。忘れたなんて、そんな寂しいこと言うなって」
「んん゛っ! んっんっ!!」

僕の髪を掴んで、腰を前後に動かす。
喉の奥まで入りかけて、反射的にえずいた。
けれど、止まらない。
アーサーは悲し気な表情のまま、腰を振り続けている。

「へへっ……よ~し。受け取れよ、俺らの愛をた~っぷりとな♡」
「んん゛! んんんん!!!」

上と下で同時に弾ける。
彼らの熱が、僕の中に広がっていく。

「ガハ……ッ……ゴホっ……」

激しく咳き込みながら、口の中の子種を吐き出す。
黒い床に白濁した体液が広がっていった。

この床、よく見たらガラスで出来ているのか。
向こうにあるのは……黒い水?
静かに波打つ湖面が、果てしなく広がっている。
真っ黒で底が見えない。

本当に不思議な場所だ。
死んだはずの二人が現れたり……ここは一体……?

「っ!」

そうだ。思い出した。ここは僕の潜在意識の中だ。
つまりは、ゼフもアーサーも幻。
ウィルだ。彼が仕掛けてきてるんだ。

「思い出したか?」

ゼフの幻が囁きかけてくる。
腹が立ってきた。これは死者への冒涜だ。

「ウィル、いるんでしょ? いい加減にして。僕はもう騙されないよ」
「騙す? はっ、何言ってんだ? さっきのは、ぜ~んぶお前の記憶の再現だよ」

ゼフの姿が変わっていく。
白いチュニックに、オリーブのパンツ。
垂れ目に、萌黄色の瞳、そして分厚い下唇。

僕だ。僕とまったく同じ姿をしている。
彼は僕の分身なのだと、否応なしに痛感した。

気付けば、アーサーの幻も消えている。
残ったのは僕とウィルだけだ。

「バカ言わないで。僕は絶対に、ゼフともアーサーともしてない。だって、彼らには――」
「愛する人がいたから」
「っ! ……知ってたの」
「俺はお前のことなら何でも知ってるよ。お前が忘れたことまで、全部な」

ウィルが圧し掛かってくる。
髪に顔を埋めて、耳元でちゅっとキスをしてきた。
僕は堪らず肩を竦めた。
抵抗したいけど……っ、ダメだ。体が動かない。

「どっちも『道ならぬ恋』にのめり込んでたよな。会いたい時に会えなくて、フラストレーションを溜めに溜めまくってた。だから、……ははっ、笑えるぐらいチョロかった。ぶつぶつ言い訳しながら、お前を抱いた。何度も、何度も」
「あり得ない。僕が誘ったところで、鼻で嗤われるだけだよ」
「何だそれ? 自虐か?」

ある意味そうかも。
それだけ彼らは夢中で、必死だった。

僕はそんな彼らをずっと見てきた。
だから、知ってる。断言出来るんだ。

「ゼフもアーサーも、すべてを背負う覚悟でいた。もしもの時には、地位も名誉もすべて捨てる覚悟でいたんだ。そんな人達が、僕なんかの誘いに乗るはずがない」
「自信満々だな。証拠もねえくせに」
「うん。ないよ。でも、それでも僕は信じてる」

ウィルと視線を交わす。
鼻と鼻が触れ合うほどの至近距離で。

僕と同じ萌黄色の瞳が、すーっと細くなる。
嘲笑されるのかと思った。
けど、浮かんできた笑みは思いのほか爽やかで。

「ははっ! 流石に無理筋だったか」
「……やっぱ、嘘だったんだ?」
「ああ。アイツ等とは寝てねえ。全部、あのオッサンが初めてだよ」
「そっ、そう! 良かった……」

ほっと胸を撫でおろす。
安心したら涙が出てきた。
ウィルに気付かれないように、それとなく目元を拭う。

「そんなにコイツがいいわけ?」

立ち上がるウィル。
その隣にレイ殿が現れた。
いや、レイ殿の幻か。

黒髪の坊主頭で、馴染みの黒の皮装束姿。
灰色がかった黒い瞳は、真っ直ぐに僕を見つめていた。
幻だと分かっていてもドキドキする。
困るな。ウィルの前なのに。

小さく咳払いをして立ち上がる。
いつの間にか、ズボンも穿かされてた。
すっかり元通りだ。
行為の痕跡も僅かも残っていない。
ほんと不思議な空間だな。

「んだよ。勿体ぶってねえで、さっさと答えろよ」
「……うん。レイ殿がいい。一緒に生きたいと思ってる。どんな形でもいいから」
「ふーん。じゃあ、コイツが死んだら?」

想像しかけて、慌てて消し去った。
弱気になるな。気を強く持て。

「させないよ。僕が絶対に守る」
「全員死んだぞ」
「……っ」
「一人も守れなかったじゃねえか」

足元にゼフとアーサーの死体が現れる。
彼らを皮切りに、他の仲間の死体も。
その中には、護衛任務で一緒になったジルさん、モリーさんのものもあった。

「……確かに守れなかった。けど、今度は――っ!」

魔物だ。例の人型の魔物。
レイ殿の後ろで構えている。
助けに行きたいのに、体が動かない。どうして!?
動け、動け、動け……!!!!

「ごふっ……はっ……」
「レイ殿!!!!!!!!!」

レイ殿の胸を、魔物の腕が貫いた。
真っ赤な血がレイ殿の口から吹き出す。

「あっ……、あっ……ああぁあああ!!! 」

堪らず叫んだ。
落ち着け。あれは幻だ。
レイ殿は生きてる。生きてるんだ。

必死にそう言い聞かせる。
なのに、涙が止まらなくて。

「分かっただろ? お前じゃレイは守れない。みすみす死なすだけだ」
「違う。今のも君が……っ、君が、僕の動きを止めたんでしょ?」
「あの魔物はお前の『希死願望』を具現化したものだ。お前は未来レイじゃなくて、死を望んだ。だから、動けなかったんだよ」
「違う……っ、違う!!!」

子供のように泣き叫ぶ。
そうしたら――。

「っ!」

不意に抱き締められた。ぎゅっと正面から。
訳が分からずウィルの方に目を向けると、一層強く抱き締められる。

「分かっただろ? お前はもう限界なんだよ」
「そんなことない。僕はまだ――」
「お前が呼んだから、俺はここにいるんだぜ」
「えっ……?」
「殺してくれって、そう言っただろ?」

確かに僕は願った。
『誰か、誰か僕を……殺して』と。

「……僕を殺して、君が僕になるってこと?」
「いいや。俺も一緒に逝くよ」
「どうして?」
「愛してるから」
「っ! でも、君は僕の――」
「ははっ……おかしいよな。自分で自分に恋するなんて。でもさ、俺は本気なんだ。お前のためなら、俺は……」

押し倒された。
見上げれば、萌黄色の瞳がゆっくりと近付いてくる。
酷く真剣に、それでいてどこか懇願するような目をしていた。

彼は本気だ。そう思えた。
だけど……唇が触れ合うその直前で、僕は顔を逸らしてしまう。

「つれねえな」
「……ごめん」

ウィルは微苦笑を浮かべて、僕の額に口付けた。
慈愛に満ちたキスだった。
おでこをそっと撫でるような、そんなキスで。

「あっ……」

沈んでいく。ガラスの床を破って反対側へ。
真っ黒で、やわらかな水に包まれていく。

気持ちいい。心が安らぐ。
たぶん、この先には僕がずっと求めていた世界が。
何ものにも縛られることのない……そんな世界が広がっているんだろう。
だけど――。

レイ殿の笑顔が頭を過る。
呆れ半分に、片側の口角だけを持ち上げて笑うあの笑顔が。
その眼差しは泣きたくなるぐらい穏やかで、心地よくて。

――貴方と生きたい。これから先もずっと。

「っ、ごめん……」
「怖いか? 大丈夫だ。俺がいる――」
「まだ、逝けない」
「……は?」
「君の言う通り、僕はもう限界なのかもしれない。……でも、最後にもう一度だけ。もう一度だけ、頑張らせてほしい。初めてなんだ。初めて……守って生きたいと思える人に出会えた。だから……っ」

直後、強引に引っ張られた。
目を開けると、そこには黒い皮の装束が。
見上げれば豊かな顎髭と、怒りを湛えた黒い瞳があった。


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