124 / 131
第十一章
第十四話
しおりを挟む
「たくさんの想いが排出されて、最後に心の湖底に白く澄んで残ったのは、最初に抱いていた誓い」
――ただただ純粋に、この人だけはどうしても、なんとしても助けたいという想い
「すべてはそこから始まっていたのに、貴方様と共に時を過ごすほどにそれは自身の欲にまみれた感情に汚され、穢されていった」
――その先は望んではいけないと、
――こんな自分はこの世にいてはいけないと、
――貴方様のためだけに罪深い私は生きているのだと、
――貴方様を愛し、愛されるたびに忘れてしまっていた。
――いつも桐秋から愛をもらうたび、至上の喜びを身にいっぱい、感じていた。
――桐秋が自分といると幸せになれると告げてくれた時、人生で一番心が震えた。
しかし、自分がいなければ、自分さえいなければ、桐秋はもっともっと幸せになれていたのではないかという罪悪感もやはり四六時中身体にまとわりついて離れなかった。
――桐秋の姿の向こうにそう訴えるもう一人の自分がいる。
桐秋と共に季節を感じるたび、桐秋に愛されるたび、いつも迫ってくる。
桐秋に愛されることで目を逸らし向き合ってこなかったもの、自分の罪を自覚した時から己を己たらしめたもの、それがその折になって、真正面に現れたのだ。
「その出来事で私は初心を再確認することが出来ました。
そして、桐秋様の桜病を治療するため、自分の血を利用してもらうことを決心したのです。
私は南山教授に幼い頃に桜病を克服したことを話し、自身に桐秋様の桜病に対する抗体がある可能性をお伝えしました。
南山教授も初めのうちは私の言葉を疑っておられました。
それはそうでしょう、桜病は成人病とされていたのですから。
しかし、あまりにも必死な私の形相と桐秋様の切迫した容体を前に、苦悩しながらも私の血から血清を抽出してくださることを約束してくださいました」
女は俯き、顔は見えない。
「それから、私の体液を貴方様の体に入れることによっておこる副作用がないか確認するため、私は貴方様に肌をさらしました。
そしてそれをより確実なものにするため、わざと指に傷をつけ、貴方様が見咎めるようにも仕向けた。
優しい貴方様なら、苦言を呈しながらも私の血を優しくなめとってくださることが分かっていたから。
ふふ、ほんとうにそうなりましたね。
あまりにも貴方様が、私が想像したとおりの行動をなさるから、私は・・・」
言葉にならない嗚咽が漏れる。
「一夜明け、貴方様になんの副作用も起きないことを確認し、私の役目は終わりました」
――ただただ純粋に、この人だけはどうしても、なんとしても助けたいという想い
「すべてはそこから始まっていたのに、貴方様と共に時を過ごすほどにそれは自身の欲にまみれた感情に汚され、穢されていった」
――その先は望んではいけないと、
――こんな自分はこの世にいてはいけないと、
――貴方様のためだけに罪深い私は生きているのだと、
――貴方様を愛し、愛されるたびに忘れてしまっていた。
――いつも桐秋から愛をもらうたび、至上の喜びを身にいっぱい、感じていた。
――桐秋が自分といると幸せになれると告げてくれた時、人生で一番心が震えた。
しかし、自分がいなければ、自分さえいなければ、桐秋はもっともっと幸せになれていたのではないかという罪悪感もやはり四六時中身体にまとわりついて離れなかった。
――桐秋の姿の向こうにそう訴えるもう一人の自分がいる。
桐秋と共に季節を感じるたび、桐秋に愛されるたび、いつも迫ってくる。
桐秋に愛されることで目を逸らし向き合ってこなかったもの、自分の罪を自覚した時から己を己たらしめたもの、それがその折になって、真正面に現れたのだ。
「その出来事で私は初心を再確認することが出来ました。
そして、桐秋様の桜病を治療するため、自分の血を利用してもらうことを決心したのです。
私は南山教授に幼い頃に桜病を克服したことを話し、自身に桐秋様の桜病に対する抗体がある可能性をお伝えしました。
南山教授も初めのうちは私の言葉を疑っておられました。
それはそうでしょう、桜病は成人病とされていたのですから。
しかし、あまりにも必死な私の形相と桐秋様の切迫した容体を前に、苦悩しながらも私の血から血清を抽出してくださることを約束してくださいました」
女は俯き、顔は見えない。
「それから、私の体液を貴方様の体に入れることによっておこる副作用がないか確認するため、私は貴方様に肌をさらしました。
そしてそれをより確実なものにするため、わざと指に傷をつけ、貴方様が見咎めるようにも仕向けた。
優しい貴方様なら、苦言を呈しながらも私の血を優しくなめとってくださることが分かっていたから。
ふふ、ほんとうにそうなりましたね。
あまりにも貴方様が、私が想像したとおりの行動をなさるから、私は・・・」
言葉にならない嗚咽が漏れる。
「一夜明け、貴方様になんの副作用も起きないことを確認し、私の役目は終わりました」
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
冷徹公爵の誤解された花嫁
柴田はつみ
恋愛
片思いしていた冷徹公爵から求婚された令嬢。幸せの絶頂にあった彼女を打ち砕いたのは、舞踏会で耳にした「地味女…」という言葉だった。望まれぬ花嫁としての結婚に、彼女は一年だけ妻を務めた後、離縁する決意を固める。
冷たくも美しい公爵。誤解とすれ違いを繰り返す日々の中、令嬢は揺れる心を抑え込もうとするが――。
一年後、彼女が選ぶのは別れか、それとも永遠の契約か。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
届かぬ温もり
HARUKA
恋愛
夫には忘れられない人がいた。それを知りながら、私は彼のそばにいたかった。愛することで自分を捨て、夫の隣にいることを選んだ私。だけど、その恋に答えはなかった。すべてを失いかけた私が選んだのは、彼から離れ、自分自身の人生を取り戻す道だった·····
◆◇◆◇◆◇◆
読んでくださり感謝いたします。
すべてフィクションです。不快に思われた方は読むのを止めて下さい。
ゆっくり更新していきます。
誤字脱字も見つけ次第直していきます。
よろしくお願いします。
15年目のホンネ ~今も愛していると言えますか?~
深冬 芽以
恋愛
交際2年、結婚15年の柚葉《ゆずは》と和輝《かずき》。
2人の子供に恵まれて、どこにでもある普通の家族の普通の毎日を過ごしていた。
愚痴は言い切れないほどあるけれど、それなりに幸せ……のはずだった。
「その時計、気に入ってるのね」
「ああ、初ボーナスで買ったから思い出深くて」
『お揃いで』ね?
夫は知らない。
私が知っていることを。
結婚指輪はしないのに、その時計はつけるのね?
私の名前は呼ばないのに、あの女の名前は呼ぶのね?
今も私を好きですか?
後悔していませんか?
私は今もあなたが好きです。
だから、ずっと、後悔しているの……。
妻になり、強くなった。
母になり、逞しくなった。
だけど、傷つかないわけじゃない。
思い出さなければ良かったのに
田沢みん
恋愛
「お前の29歳の誕生日には絶対に帰って来るから」そう言い残して3年後、彼は私の誕生日に帰って来た。
大事なことを忘れたまま。
*本編完結済。不定期で番外編を更新中です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる