スター・スフィア-異世界冒険はお喋り宝石と共に-

黒河ハル

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第521話:胸ノ深淵

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「捉エテミロ! 『滅霊跳躍シャード・ステップ』!」

「なに…!?」

「レイト! その技は奇襲タイプの魔法です!
 死角に気をつけてください!」


 赤いイザークと戦闘を開始してから約十五分。

 なんとか紙一重の差で攻撃を捌いてきたが、ここにきて奴の動きが変わった。

 縦横無尽に、あらゆる角度から次々と攻撃を仕掛けてくるヒットアンドアウェイ戦法。

 攻め切れないならば、流れを変える…か。
 さすがイザーク。良い判断だ。


「憎イ…!」

 ガキンッ!

「鬱陶シイ…!」

 ガンッ!

「目障リナンダヨ…!」


 空中からの打撃ゆえに、一撃一撃は軽い。

 しかし攻撃のスピードが上がるにつれ、イザークの『口撃』もその頻度を増してきた。

 憎しみに満ちた言霊は、奴が秘めた純粋な想いとして、一挙手一投足にセーブされている。


「ナゼ、オ前ガ『ミア』ノ隣へ立テル!!」

「ぐっ!?」


 さらにイザークのスピードが上昇。
 ヤバい、捉えきれなくなってきたぞ…。


「ナゼ、『ミア』ハオ前ナンカヲ頼ル!!」

「がはっ!?」


 ついに奴の攻撃が俺の防御行動を貫通した。
 捌けなかった拳が、俺の右頬へ直撃する。


「マミヤくん!」

「レイト!」


 これ以上は危険と判断したのか、モネとイザークが俺の方へ走ってきた。


「やめろ! こっち来んじゃねえ!!!」

「「!?」」


 それを一喝して阻止する。
 これは俺の闘いだ…最後までやらせてくれよ。


「ドウシテ僕ハ…『レイト』ジャナインダ!!」

「ッッ…!」

「そんなの…当たり前だろうが!」

 バギッ!!!

 上から降ってきた『滅霊シャード』の拳を、額で受け止める。
 ツウ…と、おでこから血が滴ってきた。


「この世に零人さんが二人もいてたまるか!
 お前はミアを『零人』の皮を被って惚れさせたいのか!?」

「エッ…?」

「自分の好きな女の前で、少しでもカッコよく見せてやりたい気持ちは分かる。
 だが…てめぇが『イザークてめぇ』を殺すんじゃ、ミアはどこに惚れりゃ良いんだ!?」

「「…ッ!!」」

スポッ

 額に突き出してきた鉄拳に、素早く俺の右腕のガントレットを嵌め込む。
 一回ポッキリの大技だ…しくじるんじゃねえぞ、零人!


「コ、コレハ…!?」

「股に金〇マ付いてんなら、ミアと駆け落ちのひとつでもやってこいやぁぁぁ!!!」

 ドオォォンッ!!!

「ガフッッ!?」


 ガルド流護身術、『鬼神殺し』。

 敵の身体の一部を引っ掴み、筋肉ではなく惰性の力を用いて、地面へたたき落とす必殺技だ。

 そしてこの技のフィニッシュは、スタンした敵の顔面へ拳を振り下ろして初めて完遂する。

 動けなくなったイザークからガントレットを取り返し、再び盾モードを展開した。


「悪いな。この勝負、俺がもらった」

「レイト! 待ってくだ…」

 ドゴッ!!!


 ☆イザーク・バーミリオンsides☆


「………」

「…ナンノ、ツモリデスカ?」


 レイトが打ち下ろした右腕は、仰向けになった『僕』のすぐ横の床板を砕いていた。
 いま、レイトは…わざと外した。


「なに、お前の顔がもう『参った』って言ってたからな。
 敗者に鞭打つ真似はさすがにしねーよ」

「ケド、僕ハイザークノ偽物デス。
 今ココデ僕ヲ消サナケレバ再ビ彼ハ苦シム。
 アナタハ、ソレデモ良イト?」

「それは…〝お前ら〟が決めることだ。なっ?」


 レイトは横目で、黒い眼差しを僕に向けてきた。

 それだけで、僕は何をするべきか分かった。
 もう、僕は背かない。
 アイツと…しっかり向き合わなきゃ。


「イザークくん、大丈夫?」

「はい。ありがとうございます、モネさん」


 ここまで僕を支えてくれたモネさんにお礼を伝え、床でのびている『僕』の元へ足を運んだ。


「やあ、〝イザーク〟。さっきは凄い闘いだったね…」


 声を掛けて口下手に労うと、もう一人の僕はカッと目を見開き、こちらを睨みつけた。


「何ガ『凄イ』ダ。呑気ニシテイテ良イノカ?
 オ前、僕ガ誰カ、分カッテイルンダロウ?
 僕ハオ前ノ内ナル〝心〟、真ノ〝イザーク〟。
 僕ガ今マデクチニシテキタアノミットモナイ言動ハ、全テオ前ノ本心ナンダゾ」

「………」

「レイトガ憎クテ、憎クテ、タマラナイ…。
 ソンナ僕ヲ野放シニシテミロ…今度コソ、完全ニオ前ノ精神ヲ掌握シテヤル。
 何処マデ行コウガ、コノ僕カラハ逃ゲラレナイゾ!」

「君から逃げるつもりなんて、さらさらない!」

 ガシッ!

「ナッ…!?」


 彼の右手を握りしめた。

 赤く…おどろおどろしい、不気味な感触。
 けど、しっかり伝わってくる。
 彼は紛れもなく、『僕の一部』なんだと。


「あれ、ユニファ。イザーク普通に触れてんだけど?」

「そりゃあ相手が自分の半身だからなぁ~。
 魂と肉体はコインの表と裏、お互いが干渉できて当然なんだぜぃ」

「…俺、その幽霊業界のお触りルール覚えんの、ちょっと疲れてきたぜ」


 レイト達が何か話しているけど、今は彼だ。
 は、二度とさせるものか!


「君が最後に言っていた言葉は、僕の醜い部分が露出したものと思っていたけれど…今は違う。
 だって、僕は、ミアを僕に振り向かせたいんだから!!!」

「…!」

「ヒュウ♪ お~、ガキンチョが決めたなぁ~」

「茶化すなよ、ユニファ…」

「ふふっ、でも今のはカッコいいんじゃない?」


 …お客さんがいる前なのに、恥ずかしげもなくおもいきりぶちまけてしまった。

 すると『僕』は、俯きつつ…静かに口を動かした。


「ヨウヤク、認メタカ。イザーク、忘レルナ。
 胸ノ深淵ニ、常ニ『アニマ』ガ存在スルコトヲ。
 …ソシテ、コノ『力』ヲ得ラレタコト、最後マデ付キ合ッテクレタレイトニ感謝スルンダナ」

「へっ…?」

 ポウ…

 次の瞬間、彼は赤い霊力エーテル粒子と化し、風に吹き流されるが如く、僕の胸へとなだれ込んできた。

 こ、これは…!?


「わっ…! すっごい霊力エーテル量!」

「おいおい、こいつは…」

「にひひ! おめでとだぜぃ、イザーク。
 めでたく『幽焔リヴァイブ』の力を宿せたみたいだなぁ。
 ご先祖さまの魔法、大事に使ってくれよっ!」






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