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第538話:伏した二人
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☆フレデリカ・シュバルツァーsides☆
「いやぁ、あんがとなぁデカいエルフっ子。
幽霊なんかのあたしを連れてってくれて」
「だっ…! わざわざ幽霊って口にしないでよ!
考えないようにしてるんだから!」
「おっ、そんなデカいナリして怖がりかぁ?
にひひ、可愛いところあるじゃないかぁ」
「さっきからデカいデカいって、失礼ね!
私にはフレデリカって名前がちゃんとあんの!」
演説に向かうレイト達と別れ、別行動を開始した私たち。
ミアがお世話になっているシュガーさんのお家は、ここからそれほど遠くない位置にある。
レイトから預かった霊器が、私の手元で青く光っている。
本人曰く、隣でユラユラと浮いているユニファの『霊魂』っていうコアが入ってるとか。
急いでたからつい預かったけど、オバケ嫌いの私からしたら、こんなのたまったもんじゃないわ…。
「………」
…それはそれとして、エリザベスったら向かってから全然喋らないわね。
よっぽどミアのことが心配なんだわ。
二人とも親友なんだし、当然よね。
「…ご先祖様。ひとつ、質問がございます」
と思ったら、いきなり口を開いた。
相変わらず読めない子だわ。
「ん、なんでぃ? あ、『ユニファ』でいいぜぃ」
「いえ結構です。それよりも、あなた様はどこまで把握されていらっしゃるのですか?」
…? 質問の意図が分からないわ。
この子、何のことを言ってるのかしら?
「あたしは知ってることしか知らねえぜぃ。
まあ、生前の記憶は薄れつつあっけどなぁ。
そういうアンタこそ、いったいあたしのどこが気に食わないんでぃ?」
「…………」
質問を返されたエリザベスは押し黙った。
ちょ…なによこの二人? こんな仲が悪かったの?
「アンタたち、おんなじ顔して喧嘩しないでよ。
今はミアの安否を確認することが先でしょ?」
「…はい。申し訳ございません」
「なら、とっととシュガーの家に急ごうぜぃ~」
☆☆☆
「ごめんください、ごめんください、エリザベスです。
どなたか中にいらっしゃいませんか?」
シュガー宅、玄関前。
戸をノックして何度もエリザベスが呼びかけるも、家の中から応答はなかった。
どうやら鍵は掛かってるみたいだけど…やっぱり、なにか変ね。
「下がってエリザベス。私に任せて、蹴破るわ」
「シュバルツァー様…」
エリザベスの肩を引いて、右脚を構える。
もしただ寝ていただけならそれで良い。
だけど、万が一のことが起きていたなら…
「よし、突入するわよ!」
「あ、ちょい待ちエル…」
ドゴッ!!!
ユニファが何か言ってきたが、間に合わずに戸を壊してしまった。
「あーあ…あたしなら扉をすり抜けて、中の様子見て来れたのに~」
「は!? それもっと早く言いなさいよ!
派手に壊しちゃったじゃない…」
「過ぎたことです。参りましょう」
エリザベスを先頭に、シュガーさん一家のお宅へお邪魔する。
木製の廊下に飾られた綺麗なお花、まめな清掃が細かい所まで行き届いていることが分かる間取り。
とくに、前に来た時と別段変わりは…
「スン…血の匂い…? ミ、ミア!!!」
「あっ!? ちょっとどこ行くの!?」
エリザベスが何かに気づく。
彼女が急いで駆け込んだその部屋は、前に私たちが接待されたところだ。
そこには…
「こ、これは…! ナターシャ姉さん!」
「……エリ、ザベス…?」
身体中のいたるところから血を流した男女が、倒れこむように床へ伏していた。
ひ、ひどい怪我…!
それに、部屋の中も家具が散乱しており、何かと争ったような痕跡まであった。
「ナ、ナターシャ姉さん、いったいここで何があったのですか!?」
「…あ、あの子が…ヴェロ、ニカ、が…」
ナターシャさんは血に濡れた手を、赤ちゃんを寝かせている子育て籠へと伸ばす。
しかし…その中には、ヴェロニカちゃんは居なく、柔らかいタオルが数枚敷き詰めてあるのみだった。
「うーん、こっちのあんちゃんは意識を完全に失っちまってるみたいだなぁ。
…しかもこの家に、滅霊の気配を仄かに感じる。
あたしは他の部屋を見てくるから、しばらくコイツを頼んだぜぃフレデリカ」
「あっ、ユニファ!?」
ユニファはそう言い残し、壁へ吸い込まれるように姿を消した。
ああもう! みんな勝手なんだから!
「エリザベス、この男の人がもしかしてナターシャさんの?」
「はい…イゴール兄さん、ナターシャ姉さんの夫です」
「夫婦そろって誰かに襲われたってこと…!?」
い、嫌な予感がする。
というのもヴェロニカちゃんの他に、ミアの姿も見えない。
あの子たち、どこ行ったのよ!?
「グス、タフ…よ…! あいつが…私たちを…!」
「「!!!」」
朦朧とした意識の中、ナターシャさんが怒りを混じえた震えた声で、その名を口にした。
たしか、レイト達がお社で遭遇したって言っていた例の…!?
「教えてください、ナターシャ姉さん!
奴が何をしてきたのですか!?」
「つ、造っていた、す…水晶玉…!
アレを、奪って…ヴェロニカと…ミア、を…」
「水晶玉…!? それは、もしやご先祖様の!?」
「エリザベス! 詳しい話はあとにしなさい!
今はこの二人を急いで助けなくちゃ!」
「いやぁ、あんがとなぁデカいエルフっ子。
幽霊なんかのあたしを連れてってくれて」
「だっ…! わざわざ幽霊って口にしないでよ!
考えないようにしてるんだから!」
「おっ、そんなデカいナリして怖がりかぁ?
にひひ、可愛いところあるじゃないかぁ」
「さっきからデカいデカいって、失礼ね!
私にはフレデリカって名前がちゃんとあんの!」
演説に向かうレイト達と別れ、別行動を開始した私たち。
ミアがお世話になっているシュガーさんのお家は、ここからそれほど遠くない位置にある。
レイトから預かった霊器が、私の手元で青く光っている。
本人曰く、隣でユラユラと浮いているユニファの『霊魂』っていうコアが入ってるとか。
急いでたからつい預かったけど、オバケ嫌いの私からしたら、こんなのたまったもんじゃないわ…。
「………」
…それはそれとして、エリザベスったら向かってから全然喋らないわね。
よっぽどミアのことが心配なんだわ。
二人とも親友なんだし、当然よね。
「…ご先祖様。ひとつ、質問がございます」
と思ったら、いきなり口を開いた。
相変わらず読めない子だわ。
「ん、なんでぃ? あ、『ユニファ』でいいぜぃ」
「いえ結構です。それよりも、あなた様はどこまで把握されていらっしゃるのですか?」
…? 質問の意図が分からないわ。
この子、何のことを言ってるのかしら?
「あたしは知ってることしか知らねえぜぃ。
まあ、生前の記憶は薄れつつあっけどなぁ。
そういうアンタこそ、いったいあたしのどこが気に食わないんでぃ?」
「…………」
質問を返されたエリザベスは押し黙った。
ちょ…なによこの二人? こんな仲が悪かったの?
「アンタたち、おんなじ顔して喧嘩しないでよ。
今はミアの安否を確認することが先でしょ?」
「…はい。申し訳ございません」
「なら、とっととシュガーの家に急ごうぜぃ~」
☆☆☆
「ごめんください、ごめんください、エリザベスです。
どなたか中にいらっしゃいませんか?」
シュガー宅、玄関前。
戸をノックして何度もエリザベスが呼びかけるも、家の中から応答はなかった。
どうやら鍵は掛かってるみたいだけど…やっぱり、なにか変ね。
「下がってエリザベス。私に任せて、蹴破るわ」
「シュバルツァー様…」
エリザベスの肩を引いて、右脚を構える。
もしただ寝ていただけならそれで良い。
だけど、万が一のことが起きていたなら…
「よし、突入するわよ!」
「あ、ちょい待ちエル…」
ドゴッ!!!
ユニファが何か言ってきたが、間に合わずに戸を壊してしまった。
「あーあ…あたしなら扉をすり抜けて、中の様子見て来れたのに~」
「は!? それもっと早く言いなさいよ!
派手に壊しちゃったじゃない…」
「過ぎたことです。参りましょう」
エリザベスを先頭に、シュガーさん一家のお宅へお邪魔する。
木製の廊下に飾られた綺麗なお花、まめな清掃が細かい所まで行き届いていることが分かる間取り。
とくに、前に来た時と別段変わりは…
「スン…血の匂い…? ミ、ミア!!!」
「あっ!? ちょっとどこ行くの!?」
エリザベスが何かに気づく。
彼女が急いで駆け込んだその部屋は、前に私たちが接待されたところだ。
そこには…
「こ、これは…! ナターシャ姉さん!」
「……エリ、ザベス…?」
身体中のいたるところから血を流した男女が、倒れこむように床へ伏していた。
ひ、ひどい怪我…!
それに、部屋の中も家具が散乱しており、何かと争ったような痕跡まであった。
「ナ、ナターシャ姉さん、いったいここで何があったのですか!?」
「…あ、あの子が…ヴェロ、ニカ、が…」
ナターシャさんは血に濡れた手を、赤ちゃんを寝かせている子育て籠へと伸ばす。
しかし…その中には、ヴェロニカちゃんは居なく、柔らかいタオルが数枚敷き詰めてあるのみだった。
「うーん、こっちのあんちゃんは意識を完全に失っちまってるみたいだなぁ。
…しかもこの家に、滅霊の気配を仄かに感じる。
あたしは他の部屋を見てくるから、しばらくコイツを頼んだぜぃフレデリカ」
「あっ、ユニファ!?」
ユニファはそう言い残し、壁へ吸い込まれるように姿を消した。
ああもう! みんな勝手なんだから!
「エリザベス、この男の人がもしかしてナターシャさんの?」
「はい…イゴール兄さん、ナターシャ姉さんの夫です」
「夫婦そろって誰かに襲われたってこと…!?」
い、嫌な予感がする。
というのもヴェロニカちゃんの他に、ミアの姿も見えない。
あの子たち、どこ行ったのよ!?
「グス、タフ…よ…! あいつが…私たちを…!」
「「!!!」」
朦朧とした意識の中、ナターシャさんが怒りを混じえた震えた声で、その名を口にした。
たしか、レイト達がお社で遭遇したって言っていた例の…!?
「教えてください、ナターシャ姉さん!
奴が何をしてきたのですか!?」
「つ、造っていた、す…水晶玉…!
アレを、奪って…ヴェロニカと…ミア、を…」
「水晶玉…!? それは、もしやご先祖様の!?」
「エリザベス! 詳しい話はあとにしなさい!
今はこの二人を急いで助けなくちゃ!」
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