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第三章・不可解な想いのめぐる先
俺とマユリスとアイツとカイン
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「大丈夫かい? だいぶ落ち着けた?」
情けない……。
俺はマリユスの感情に揺さぶられて、ずいぶんと泣きじゃくってしまったのだ。
くっ。不覚。本当に恥ずかしい。穴があったら入りたい!
「だ、大丈夫だ。……もう、なんともない」
そうは言ってみるも、俺の……どうやら魂の奥に刻まれているらしいマリユスの想いってやつが、突然暴走してしまうんだから、なんともなくはない。
天寺は俺に、
『マリユス様の夢と、僕からの言葉で……前世がある『のかもしれない』って思っているところだろう?』
そう言った。
確かにそれも一理ある。思い込みってやつだ。
でも、本当にそれだけか?
「……ごめんね、雪斗」
「えっ……なんだよ、急に」
片付かない部屋の中、俺を椅子に座らせて、俺の前にしゃがみこんで俺を見上げていた天寺が、ふいに謝ってきた。
顔を見ると、なぜだか今度は天寺が泣きそうな顔をしていて、俺は瞳を揺らす。
な、なんでそんな顔してんだよっ。
「いや、考えてみれば……あまりにもたくさんの情報が雪斗を襲ってるんだろなぁ…って。僕とは違って、雪斗にはマリユス様の記憶がないのに……」
だから、お前がそれらを教えてくれていたんじゃないのか。違うのか?
「……まったく。僕はいつもこうだ」
これまで、強引に俺の心に侵入しようと試みていた天寺らしくない言葉だった。
見れば、少し困ったように眉を寄せて、俺を見上げていた。
俺は、それを見つめられなくて、また思わず瞳をそらしてしまう。
「君にまた出会えたことを喜ばないといけないのに、カインの気持ちが強すぎて……心が急いてしまうんだろうね」
「え……?」
なんだって? ちょっとさっきの言葉、意味がわからない。
俺、というマリユスの生まれ変わり? に会えて嬉しいってことじゃないのか? いや、それなら、カインの気持ちが強くて当たり前。心が急いて当たり前なんじゃないのか?
あ、カインがマリユスをとても愛していた、という話を聞いたからそう思うわけなんだけど。
さっきのセリフだと、前半と後半じゃ……うーん、なんていうか……うまく言えないけど、別々の心、想いって感じがする……。
まだ俺の知らない何か事情があるってのか?
「ごめんね、雪斗」
天寺がもう一度謝ってきた。
だから、謝るなっての。俺が泣いたのは、お前のせい……もあるかもしれないけど、そればかりじゃないんだから。
俺はどうしたものかと困ってしまって、話を変えようと試みる。
まあ、あれだ。
もう俺としては、前世があって生まれ変わり説は認めざるを得ないものだと思い始めてる。
どう考えたって、不思議なことが多すぎるからだ。合致する点もな。
だから、俺がマリユスという人間の生まれ変わりだってことは認める。
認めたところで、じゃあ、カインの生まれ変わりの天寺と、……その……結ばれましょう、と言われてもそれは無理だ。
いくら、俺が三十になったら死んでしまうから、それを回避するために結ばれろと言われても、無理なものは無理だ。
なんせ俺はまともに恋愛をしたことがない。童貞じゃあないが、やっぱりあれだ。気持ちを通じ合わせてから関係を持ちたいと思ってる。
女みたいな考え方だって? ほっとけ。
て……ちょっと待て。
ふと。俺はとあることに気付いてしまった。
天寺のやつ……ていうか、これまでのカインの生まれ変わりの連中は、本当に一度もマリユスの生まれ変わりと結ばれたことがないのか?
天寺の話だと、そういう風にとれるんだけど……。
「な、なぁ。聞きたいことがあるんだけど」
「……ん? なんだい?」
俺は、このふとわいた疑問を天寺にぶつけてみることにした。気になって仕方ないからだ。
「これまで、あんたは何回も生まれ変わってきたって言ってたよな。そのたびにマリユスの生まれ変わりを見つけてきたって」
「……ああ、そうだよ。見つけられない時も、もちろんあった。……あ……僕が犬や猫に生まれ変わってしまった時もあったね」
ふふ、と笑いながらそう言う天寺に、俺はポカンと口を開く。
「い、犬や猫!? そ、その時もこうやって、マリユスの生まれ変わりを探していたのか?」
まさか。犬や猫に生まれ変わって、そんな意思が働くのか?
「あ……いや。犬や猫は、寿命がせいぜい十年と少しだろう? たいていはカインの記憶を思い出さないまま、死んでいったよ」
「えっ!?」
ちょ、ちょっと待ってくれ。またわからない発言が出てきたぞ?
天寺のやつ、カインの記憶を全部持ってるって言わなかったか?
さっきの言い方だと、まるで最初は知らなかったってとれるんだけど。
知るまでの年齢になるまで、犬や猫だと寿命が足りないって………違うか?
あ、頭がぐるぐるする。
泣いた後だからか?
いや、違う。さっきからよくわからない疑問がてんこもりだからだ。
これまで結ばれた人がいなかったのかどうか。そして今度は、カインの記憶を最初から持っていなかったのかどうか、だ。
「あ、天寺。聞いてもいいか?」
「……ん? なんだい?」
話の腰を折られたことに別段腹を立てている様子もなく、天寺は柔らかい笑みを俺に向けた。
「あのさ……天寺は、……その、カインの記憶を全部持っているんだろ?」
「うん。そうだね」
「じゃあ、その記憶は……生まれた時からあったのか? それとも……」
「……いい質問だね」
俺はまず、カインの記憶がいつからあったものなのか聞くことにした。すると、俺の言葉を遮るようにして、天寺がにこりと笑んでそう言った。
そして。
「僕の……カインの記憶がすべて僕の中に目覚めるのは、僕が二十一歳の時なんだ。それまでは、まったくといっていいほど、カインの記憶は持っていないんだ」
「え………俺、てっきり……ずっと持ってるのかと…。……じゃあ、なんで、その年なんだ?」
わかんねえ。
マリユスの記憶をまったくもって思い出さない……いや、厳密には夢で何度も見ているんだけど、それが前世だなんてわかるわけがない俺と、二十一歳になったら突然カインの記憶を思い出す天寺。
いったいどういうことなんだ?
「それはね……」
そして――俺は衝撃の事実を知るんだ。
「それはね、雪斗。……カインがその歳で、殺されてしまったから、だよ」
「えっ!?」
俺は驚いて目を見開いた……。
つづく
情けない……。
俺はマリユスの感情に揺さぶられて、ずいぶんと泣きじゃくってしまったのだ。
くっ。不覚。本当に恥ずかしい。穴があったら入りたい!
「だ、大丈夫だ。……もう、なんともない」
そうは言ってみるも、俺の……どうやら魂の奥に刻まれているらしいマリユスの想いってやつが、突然暴走してしまうんだから、なんともなくはない。
天寺は俺に、
『マリユス様の夢と、僕からの言葉で……前世がある『のかもしれない』って思っているところだろう?』
そう言った。
確かにそれも一理ある。思い込みってやつだ。
でも、本当にそれだけか?
「……ごめんね、雪斗」
「えっ……なんだよ、急に」
片付かない部屋の中、俺を椅子に座らせて、俺の前にしゃがみこんで俺を見上げていた天寺が、ふいに謝ってきた。
顔を見ると、なぜだか今度は天寺が泣きそうな顔をしていて、俺は瞳を揺らす。
な、なんでそんな顔してんだよっ。
「いや、考えてみれば……あまりにもたくさんの情報が雪斗を襲ってるんだろなぁ…って。僕とは違って、雪斗にはマリユス様の記憶がないのに……」
だから、お前がそれらを教えてくれていたんじゃないのか。違うのか?
「……まったく。僕はいつもこうだ」
これまで、強引に俺の心に侵入しようと試みていた天寺らしくない言葉だった。
見れば、少し困ったように眉を寄せて、俺を見上げていた。
俺は、それを見つめられなくて、また思わず瞳をそらしてしまう。
「君にまた出会えたことを喜ばないといけないのに、カインの気持ちが強すぎて……心が急いてしまうんだろうね」
「え……?」
なんだって? ちょっとさっきの言葉、意味がわからない。
俺、というマリユスの生まれ変わり? に会えて嬉しいってことじゃないのか? いや、それなら、カインの気持ちが強くて当たり前。心が急いて当たり前なんじゃないのか?
あ、カインがマリユスをとても愛していた、という話を聞いたからそう思うわけなんだけど。
さっきのセリフだと、前半と後半じゃ……うーん、なんていうか……うまく言えないけど、別々の心、想いって感じがする……。
まだ俺の知らない何か事情があるってのか?
「ごめんね、雪斗」
天寺がもう一度謝ってきた。
だから、謝るなっての。俺が泣いたのは、お前のせい……もあるかもしれないけど、そればかりじゃないんだから。
俺はどうしたものかと困ってしまって、話を変えようと試みる。
まあ、あれだ。
もう俺としては、前世があって生まれ変わり説は認めざるを得ないものだと思い始めてる。
どう考えたって、不思議なことが多すぎるからだ。合致する点もな。
だから、俺がマリユスという人間の生まれ変わりだってことは認める。
認めたところで、じゃあ、カインの生まれ変わりの天寺と、……その……結ばれましょう、と言われてもそれは無理だ。
いくら、俺が三十になったら死んでしまうから、それを回避するために結ばれろと言われても、無理なものは無理だ。
なんせ俺はまともに恋愛をしたことがない。童貞じゃあないが、やっぱりあれだ。気持ちを通じ合わせてから関係を持ちたいと思ってる。
女みたいな考え方だって? ほっとけ。
て……ちょっと待て。
ふと。俺はとあることに気付いてしまった。
天寺のやつ……ていうか、これまでのカインの生まれ変わりの連中は、本当に一度もマリユスの生まれ変わりと結ばれたことがないのか?
天寺の話だと、そういう風にとれるんだけど……。
「な、なぁ。聞きたいことがあるんだけど」
「……ん? なんだい?」
俺は、このふとわいた疑問を天寺にぶつけてみることにした。気になって仕方ないからだ。
「これまで、あんたは何回も生まれ変わってきたって言ってたよな。そのたびにマリユスの生まれ変わりを見つけてきたって」
「……ああ、そうだよ。見つけられない時も、もちろんあった。……あ……僕が犬や猫に生まれ変わってしまった時もあったね」
ふふ、と笑いながらそう言う天寺に、俺はポカンと口を開く。
「い、犬や猫!? そ、その時もこうやって、マリユスの生まれ変わりを探していたのか?」
まさか。犬や猫に生まれ変わって、そんな意思が働くのか?
「あ……いや。犬や猫は、寿命がせいぜい十年と少しだろう? たいていはカインの記憶を思い出さないまま、死んでいったよ」
「えっ!?」
ちょ、ちょっと待ってくれ。またわからない発言が出てきたぞ?
天寺のやつ、カインの記憶を全部持ってるって言わなかったか?
さっきの言い方だと、まるで最初は知らなかったってとれるんだけど。
知るまでの年齢になるまで、犬や猫だと寿命が足りないって………違うか?
あ、頭がぐるぐるする。
泣いた後だからか?
いや、違う。さっきからよくわからない疑問がてんこもりだからだ。
これまで結ばれた人がいなかったのかどうか。そして今度は、カインの記憶を最初から持っていなかったのかどうか、だ。
「あ、天寺。聞いてもいいか?」
「……ん? なんだい?」
話の腰を折られたことに別段腹を立てている様子もなく、天寺は柔らかい笑みを俺に向けた。
「あのさ……天寺は、……その、カインの記憶を全部持っているんだろ?」
「うん。そうだね」
「じゃあ、その記憶は……生まれた時からあったのか? それとも……」
「……いい質問だね」
俺はまず、カインの記憶がいつからあったものなのか聞くことにした。すると、俺の言葉を遮るようにして、天寺がにこりと笑んでそう言った。
そして。
「僕の……カインの記憶がすべて僕の中に目覚めるのは、僕が二十一歳の時なんだ。それまでは、まったくといっていいほど、カインの記憶は持っていないんだ」
「え………俺、てっきり……ずっと持ってるのかと…。……じゃあ、なんで、その年なんだ?」
わかんねえ。
マリユスの記憶をまったくもって思い出さない……いや、厳密には夢で何度も見ているんだけど、それが前世だなんてわかるわけがない俺と、二十一歳になったら突然カインの記憶を思い出す天寺。
いったいどういうことなんだ?
「それはね……」
そして――俺は衝撃の事実を知るんだ。
「それはね、雪斗。……カインがその歳で、殺されてしまったから、だよ」
「えっ!?」
俺は驚いて目を見開いた……。
つづく
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