七不思議をつくろう

真山マロウ

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第一の不思議

先行き不安

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「じゃあ、この中から七つ選ぼうか」
 二十個ほどの箇条書きを背にして向きなおる。着席する四人のうち頬杖の仏頂面と、ばちんと目があった。

「それよりも」
 声をあげたのは五組の男子、夏木なつきくん。素行が悪いとかじゃないけれど、きりりとした目元が少し近寄りがたい。七不思議とか興味なさそうなのに、どうして参加したんだろう。私みたく、くじ引きかな。

「とりあえず一個だけ、つくってみればいいんじゃねえの。あとのことは、それから考えれば」
「でも全体のバランスも大事だと思うから、最初に七つ決めたほうが」
 と義井くんが異議をとなえたものの、鋭い視線と声がそれを即座にさえぎる。
「素人五人のクオリティーなんて、たかが知れてんだろ」

 さながら蛇に睨まれた蛙。義井くんが黙ってしまった隙に、夏木くんがたたみかける。
「全部つくったあと理事長判断で却下されたらアホ臭え。だったら、まずは一個つくって見せてみりゃいい。出来具合に納得いかなかったら、やっぱいいやとか言いだしそうだろ、あの人」
 なるほど、うまくいけば残り六個はつくらずにすむのか。結局は理事長の一存だもんね。

「けど、せっかくこうして集まったんだから、ちゃんと作りたいっていうか……」
「べつに手え抜いたりしねえけど。やるからには、ちゃんとやる」
 弱々しい語調と、ぶっきらぼうな物言いのとりあわせ。義井くんが責められているふうに見えて重苦しい空気になる。ダメだ、ここは穏便に。さっさと進めて、さっさと終わらそう。

「折衷案でどうかな。ひとまず大まかに候補を七個決めて、そのうちの一個を形にしてみるってことで」
 思惑をひた隠し、どっちの意見も尊重しますよ、を前面にだす。二人とも変にごねたりもせず納得してくれて、ほっと一安心。だが、それもつかのま。
「トイレ系は絶対に入れましょう、開運のために!」

 新たに二組の女子、福谷ふくたにさんが起立。廊下ですれ違っただけでも目をひく、綺麗な顔立ちとモデル体型。てっきりクールビューティーな人だと思っていたのに。

「これからの時代、ポジティブでハッピーな要素が重要だと思うんです! そのために私、今回参加しました!」
 方向性は違うけど、義井くんと同じく立候補組らしい。

「えっと、みんなの意見もきいてみないと……」
「では多数決にしましょう! トイレがいい人、挙手してください!」

 まさかの強引なタイプだった。ていうか、そんだけ熱意あるならリーダーやってくんないかな、ほんと。
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