七不思議をつくろう

真山マロウ

文字の大きさ
6 / 65
第一の不思議

絶対に譲らない

しおりを挟む
「だって、怖い思いなんかせずにトイレ行きたいじゃないですか」
 やがて福谷さんが呟く。
「小学生のとき、私の学校にも花子さんの噂がありました。本当に嫌だったんです。怖くて……」
 いつもの勢いが嘘のよう。弱々しくて、今にも消えいりそうだ。

「今回のは俺たちがつくるフィクションだ。なにも出てきやしない」
 返す志倉くんも、いくらかトーンダウン。私や義井くんも、自然と手をとめる。

「それでも嫌なんです。あんな思いをする人が増えるのは」
 福谷さんは、それっきり黙りこんでしまった。トイレとの因縁は相当根深いようだ。

 個人的、七不思議自体に微塵も思いいれがないから、気のすむようにしてもらえればいい。けど、他の人たちはどうなんだろう。

「トイレで開運ってなにするんだ?」
 唯一、食べるのをやめなかったマイペース人間、夏木くんが停滞をうち破る。虚をつかれたように視線をさまよわせた福谷さんが「掃除です」と答えると、
「なら、それでいいんじゃねえの。綺麗にするといいこと起こるとかで」

 義井くんと志倉くんが見かわす。
「そういや聞いたことあるかも。金運あがるとかって」
「だが、七不思議になるのか?」
「一応、不思議なことではありそうだよね」

 福谷さんと私も互いに頷く。
「怖くなさそうで、いいですね」
「うん、そうだね」

 満場一致により第一の七不思議は〈トイレ綺麗にする人、金運あがるらしい説〉に決定。どうやってプロモーションするか、というところまで話が及ぶ。

 従来どおりならクチコミで噂が広まる感じだけど、今ならSNS使うのがてっとり早そうだという流れになり、
「僕、中垣さんが紹介する形式がいいと思う」

 義井くんのとんでもない発言に、飲んでいた紅茶を吹きだしかけた。
「えっ、私? む、無理だよ!」
「大丈夫、中垣さんは認知度も好感度も高いから。僕なんて誰にも見向きされないし」

 自嘲気味にぼやいた義井くんに、志倉くんがのっかる。
「自慢じゃないが、好感度の低さには自信がある」

 最後の一個、チョコチップのをたいらげ、夏木くんも便乗。
「俺は人相が悪いからな」

 福谷さんは、うってかわった笑顔で小さく拍手。
「中垣さんは見目も愛らしいですから適任です」

 期待に満ちたみんなの目が私に迫る。四対一。圧倒的不利。普段なら押し負けてしまうところだけれど……。

「私、絶対に嫌だからっ!」
 ばしんと両手で机を叩き、立ちあがる。
 これだけは、なにがなんでも断固拒否させてもらう!
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?

三十六日間の忘れ物

香澄 翔
ライト文芸
三月六日。その日、僕は事故にあった――らしい。 そして三十六日間の記憶をなくしてしまった。 なくしてしまった記憶に、でも日常の記憶なんて少しくらい失っても何もないと思っていた。 記憶を失ったまま幼なじみの美優に告白され、僕は彼女に「はい」と答えた。 楽しい恋人関係が始まったそのとき。 僕は失った記憶の中で出会った少女のことを思いだす―― そして僕はその子に恋をしていたと…… 友希が出会った少女は今どこにいるのか。どうして友希は事故にあったのか。そもそも起きた事故とは何だったのか。 この作品は少しだけ不思議な一人の少年の切ない恋の物語です。 イラストはいもねこ様よりいただきました。ありがとうございます! 第5回ライト文芸大賞で奨励賞をいただきました。 応援してくださった皆様、そして選考してくださった編集部の方々、本当にありがとうございました。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…

しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。 高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。 数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。 そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…

ちょっと大人な物語はこちらです

神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な短編物語集です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

処理中です...