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第二の不思議
前向きに
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「この絵をスマホの壁紙にすると恋愛運アップと噂が……」
加工された自分の声。聞きなれなくて違和感しかないけど、おかげで私だと特定されずにいる。
公開した第二の七不思議も好評で、よせられたコメントには『彼氏ができた』『彼女ができた』『別れそうだったけど復縁できた』『生まれて初めて告白された』などなど。きわめつには隣のクラスの担任の結婚が決まったというのだから驚きだ。つくり話なのに、なんで効果でてるの。
作者不明で紹介している絵の真相は、江藤くんが花岡さんを描いたもの。妖精っぽい女の子が森でくつろいでいる、ファンタジックな作品だ。動画を公開したあとも出来に納得していない江藤くんが誰にも見られないよう朝早くこっそり登校して筆をいれているせいで「絵が変化してる」とオカルトちっくな噂がたち、さらに話題となった。その甲斐あってか美術部には入部希望者が数名。イラスト部から戻ってきた人もいたそうだ。
「このぶんなら存続できる。ありがとう」
お礼を言いにきてくれたときの江藤くんは「俺が絵を楽しんでくれている人がいるのが純粋に嬉しい」と、はにかんでいた。こないだ会った花岡さんも幸せオーラ全開。こっちまであったかい気持ちになる。
「末長くお幸せにね」
素直に祝福を口にする。江藤くんは、きまり悪そうに頭をかき、
「俺の都合で振りまわして本当にすまなかった。それと、絡むようになってから気づいたんだけど……あのゴスロリの正体、中垣か?」
「えっ! いや、それは……」
「誰にも言わない。約束する」
「……なんでわかったの?」
「目の表情っていうのか、そういうのは化粧してても隠しきれないよな」
ふと、夏木くんに言われたことが頭によぎった。
「もしかして私と花岡さんの目、似てたりする?」
「……そうだな。花岡も、たまに同じような目をする。人に傷ついて、人を怖がって、それでも人を嫌いきれないような」
図星。なぜ、わかってしまうの。何者なんだ、きみたちは。
「あたし、絵のこととかよくわかんないけど、これ好き。見てると、なんかほわほわする」
スマホを見る響子の声で、過去から呼びもどされる。
「栞里は設定してないの? 恋愛運アップだってよ」
「それより今は七不思議だからね。響子は?」
「あたしも興味ないかな、今は」
二人して笑いあう。
「さて、あと五個だ」
「まだまだ先は長いね」
「でも、まあ、こないだよりは……」
ちょっとだけ、やる気がでてきたかもしれない。
加工された自分の声。聞きなれなくて違和感しかないけど、おかげで私だと特定されずにいる。
公開した第二の七不思議も好評で、よせられたコメントには『彼氏ができた』『彼女ができた』『別れそうだったけど復縁できた』『生まれて初めて告白された』などなど。きわめつには隣のクラスの担任の結婚が決まったというのだから驚きだ。つくり話なのに、なんで効果でてるの。
作者不明で紹介している絵の真相は、江藤くんが花岡さんを描いたもの。妖精っぽい女の子が森でくつろいでいる、ファンタジックな作品だ。動画を公開したあとも出来に納得していない江藤くんが誰にも見られないよう朝早くこっそり登校して筆をいれているせいで「絵が変化してる」とオカルトちっくな噂がたち、さらに話題となった。その甲斐あってか美術部には入部希望者が数名。イラスト部から戻ってきた人もいたそうだ。
「このぶんなら存続できる。ありがとう」
お礼を言いにきてくれたときの江藤くんは「俺が絵を楽しんでくれている人がいるのが純粋に嬉しい」と、はにかんでいた。こないだ会った花岡さんも幸せオーラ全開。こっちまであったかい気持ちになる。
「末長くお幸せにね」
素直に祝福を口にする。江藤くんは、きまり悪そうに頭をかき、
「俺の都合で振りまわして本当にすまなかった。それと、絡むようになってから気づいたんだけど……あのゴスロリの正体、中垣か?」
「えっ! いや、それは……」
「誰にも言わない。約束する」
「……なんでわかったの?」
「目の表情っていうのか、そういうのは化粧してても隠しきれないよな」
ふと、夏木くんに言われたことが頭によぎった。
「もしかして私と花岡さんの目、似てたりする?」
「……そうだな。花岡も、たまに同じような目をする。人に傷ついて、人を怖がって、それでも人を嫌いきれないような」
図星。なぜ、わかってしまうの。何者なんだ、きみたちは。
「あたし、絵のこととかよくわかんないけど、これ好き。見てると、なんかほわほわする」
スマホを見る響子の声で、過去から呼びもどされる。
「栞里は設定してないの? 恋愛運アップだってよ」
「それより今は七不思議だからね。響子は?」
「あたしも興味ないかな、今は」
二人して笑いあう。
「さて、あと五個だ」
「まだまだ先は長いね」
「でも、まあ、こないだよりは……」
ちょっとだけ、やる気がでてきたかもしれない。
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