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第四の不思議
こんなふうになるなんて
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「理事長、自分の七不思議めちゃくちゃ楽しみにしてた」
教室に戻って、おやつタイム。今日はフルーツ大福。旬の果物を中心に五種類が二個ずつ。ネット記事で特集されてたのを見て、羨ましく思っていたお店のだ。まさかここで食べることができるなんて。さっきまでのイライラが相殺された。
「でも、どんなのにすればいいのか見当つきませんよ」
マスクメロンのを味わいつつ福谷さんが言う。
「理事長っていう制約をナシにできませんかね。夏木くん親戚ですよね、交渉してください」
「どうこうできる相手じゃねえよ。七不思議自体、何度もやめさせようとしたけど聞く耳もたなかったし」
「ええっ、知りませんでした! なんでそんなことするんですか! 七不思議は絶対やめたくないです!」
「ダルいだろ、おっさんのワガママに付きあうの。あいつ、生徒をなんだと思ってんだ」
私は同感しかないけど、福谷さんは違ったようだ。
「ダルくないです。私、好きです、皆さんとの七不思議づくり。こうして美味なおやつも食べれますし」
義井くんも大きく頷く。
「わかる。僕も毎日充実してる。理事長には感謝しかないよ」
「それ絶対本人に言うなよ。調子のるから」
「言いはしないけど。でも、こうしてお菓子もさしいれてもらって、ありがたいよね」
「むこうが勝手にやってことだから気にしなくていい」
「気にするって。いいとこのお店のでしょ、これも」
「さあ、知らね」
私が選んだのは桃。ほとばしるジューシーさを満喫しながら思いだす。
「たしか一箱、五千円以上したような」
全員の動きがストップ。志倉くんが呟き、義井くんが焦る。
「安く見積もっても一個あたり五百円か」
「ど、どうしよう、食べちゃったよ」
福谷さんは「値段を聞いて美味度がアップしました! 次はマンゴーのもらっていいですか!」と嬉しそう。夏木くんは心なしか、じっくり味わっているように見える。
「これで断るのは気がひけるから、ほかに候補がなければ理事長ので進めてみようよ」
義井くんの言うとおり、対価分の働きはしておいたほうがよさそうだ。
「じゃあ夏木くん、いつもみたく閃いてください」
二個めをたいらげた福谷さんが、むちゃぶり。
「なんも思いつかねえ」
「そんなこと言わず頑張ってください、閃きマン」
「変な呼び方すんなよ」
作戦会議のはずが、いつのまにか脱線。わいわいと雑談になる。最近はこんな時間が楽しくて、できればもうしばらく続いてほしい。だからこそ……。
教室に戻って、おやつタイム。今日はフルーツ大福。旬の果物を中心に五種類が二個ずつ。ネット記事で特集されてたのを見て、羨ましく思っていたお店のだ。まさかここで食べることができるなんて。さっきまでのイライラが相殺された。
「でも、どんなのにすればいいのか見当つきませんよ」
マスクメロンのを味わいつつ福谷さんが言う。
「理事長っていう制約をナシにできませんかね。夏木くん親戚ですよね、交渉してください」
「どうこうできる相手じゃねえよ。七不思議自体、何度もやめさせようとしたけど聞く耳もたなかったし」
「ええっ、知りませんでした! なんでそんなことするんですか! 七不思議は絶対やめたくないです!」
「ダルいだろ、おっさんのワガママに付きあうの。あいつ、生徒をなんだと思ってんだ」
私は同感しかないけど、福谷さんは違ったようだ。
「ダルくないです。私、好きです、皆さんとの七不思議づくり。こうして美味なおやつも食べれますし」
義井くんも大きく頷く。
「わかる。僕も毎日充実してる。理事長には感謝しかないよ」
「それ絶対本人に言うなよ。調子のるから」
「言いはしないけど。でも、こうしてお菓子もさしいれてもらって、ありがたいよね」
「むこうが勝手にやってことだから気にしなくていい」
「気にするって。いいとこのお店のでしょ、これも」
「さあ、知らね」
私が選んだのは桃。ほとばしるジューシーさを満喫しながら思いだす。
「たしか一箱、五千円以上したような」
全員の動きがストップ。志倉くんが呟き、義井くんが焦る。
「安く見積もっても一個あたり五百円か」
「ど、どうしよう、食べちゃったよ」
福谷さんは「値段を聞いて美味度がアップしました! 次はマンゴーのもらっていいですか!」と嬉しそう。夏木くんは心なしか、じっくり味わっているように見える。
「これで断るのは気がひけるから、ほかに候補がなければ理事長ので進めてみようよ」
義井くんの言うとおり、対価分の働きはしておいたほうがよさそうだ。
「じゃあ夏木くん、いつもみたく閃いてください」
二個めをたいらげた福谷さんが、むちゃぶり。
「なんも思いつかねえ」
「そんなこと言わず頑張ってください、閃きマン」
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