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第五の不思議
衝撃
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梅雨になり、湿気に悩まされる日が続く。髪質のせいで、どれだけブローしても簡単には言うことをきいてくれないり格闘のすえ編みこんでまとめるから、今時期は予定の電車に乗りおくれることも。余裕をもって出発するようにしているので、遅刻したりはないけれど。
この日も一本遅い電車での登校になった。しとしと雨をやりすごし、億劫に教室にはいる。と、たちまち違和感。いつものように挨拶しても、みんなどこかよそよそしい。
理由は、すぐに判明した。
「おはよ、栞里」
自分の机の前で微動だにできずにいたら、背後から響子の声がした。
「どしたの」
無反応な私の横にならび視線をおとす。響子の体が小さく震えたのがわかった。天板に塗りつけられた真っ赤な絵の具。蓋のないチューブも三本、乱暴に置かれている。
「大丈夫、たぶんこれ水彩。早く消そ」
雑巾をとった響子に連れられ教室をでる。
「あたし消してくるから、ちょっと休んでなよ」
手洗い場にむかうと見おぼえの姿が五つあった。全員が同じ被害にあっていた。
「許せません! 犯人を見つけだして制裁をくわえます、必ず!」
「だめだよ。相手が誰だろうと話しあおう、穏便に」
「だが、文句のひとつでも言ってやりたいところだな。消すのも一苦労だ」
三人がくちぐちに言う。響子が教室に行ってくれているあいだ、黙って聞く。
「ターゲットが僕たちってことは七不思議が原因だよね、たぶん」
「十中八九そうだろうな。なにかしら恨みにでも思ったんだろう」
「私たち悪いことなにもしてません! って、夏木くんは腹たたないんですか!」
雑巾を洗っていた横顔に矛先がむく。
「べつに。ご苦労なこったとは思うけどな」
「どういうことですか」
「目撃者がいないってことは、昨日めちゃくちゃ居残ったか、今日めちゃくちゃ早く来たってことだろ。暇すぎねえか、そいつ」
あいかわらずの平常運転。こんなときでさえ怒っていないし、傷ついてもいない。私たちだけがショックを受けているみたいなのが無性に悔しくて、夏木くんの本音がどこにあるのか試すようなことを言ってしまう。
「それだけ強く恨んでるってことじゃないの」
ざあざあと水音が響く。義井くんたちも静まりかえる。
「かもな」
それだけ答えて、夏木くんは蛇口をしめた。廊下をいく生徒たちのざわめきが、遠のくように感じる。
私は怖い。誰かの悪意の的になんて一瞬だってなりたくない。なのに、どうしてこの人は平気でいられるんだろう。
この日も一本遅い電車での登校になった。しとしと雨をやりすごし、億劫に教室にはいる。と、たちまち違和感。いつものように挨拶しても、みんなどこかよそよそしい。
理由は、すぐに判明した。
「おはよ、栞里」
自分の机の前で微動だにできずにいたら、背後から響子の声がした。
「どしたの」
無反応な私の横にならび視線をおとす。響子の体が小さく震えたのがわかった。天板に塗りつけられた真っ赤な絵の具。蓋のないチューブも三本、乱暴に置かれている。
「大丈夫、たぶんこれ水彩。早く消そ」
雑巾をとった響子に連れられ教室をでる。
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手洗い場にむかうと見おぼえの姿が五つあった。全員が同じ被害にあっていた。
「許せません! 犯人を見つけだして制裁をくわえます、必ず!」
「だめだよ。相手が誰だろうと話しあおう、穏便に」
「だが、文句のひとつでも言ってやりたいところだな。消すのも一苦労だ」
三人がくちぐちに言う。響子が教室に行ってくれているあいだ、黙って聞く。
「ターゲットが僕たちってことは七不思議が原因だよね、たぶん」
「十中八九そうだろうな。なにかしら恨みにでも思ったんだろう」
「私たち悪いことなにもしてません! って、夏木くんは腹たたないんですか!」
雑巾を洗っていた横顔に矛先がむく。
「べつに。ご苦労なこったとは思うけどな」
「どういうことですか」
「目撃者がいないってことは、昨日めちゃくちゃ居残ったか、今日めちゃくちゃ早く来たってことだろ。暇すぎねえか、そいつ」
あいかわらずの平常運転。こんなときでさえ怒っていないし、傷ついてもいない。私たちだけがショックを受けているみたいなのが無性に悔しくて、夏木くんの本音がどこにあるのか試すようなことを言ってしまう。
「それだけ強く恨んでるってことじゃないの」
ざあざあと水音が響く。義井くんたちも静まりかえる。
「かもな」
それだけ答えて、夏木くんは蛇口をしめた。廊下をいく生徒たちのざわめきが、遠のくように感じる。
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