40 / 65
第四の不思議
消化不良感
しおりを挟む
「七不思議の新作、変なおまけ付いてくるね」
スマホから目を離さずに響子が言う。画面で動く自分を横目、思わず笑みがこぼれる。
「そこはどうにもならなかったんだよね。場所が場所だし、相手も相手だし」
「ま、ゲーム性はあるよね。どんだけ上手くあしらえるか」
「関わってもいいんだけど」
「やだよ、ウザそう」
今回の七不思議〈理事長室の横にある鏡に全身をうつして自撮りすると美容運アップ〉をおこなう際、もれなく理事長が話しかけてくる。一度捕まると解放してもらえないので、参加する人は前回までに比べて少ない。
好調な再生回数に反して、コメント数は低調。だが、ダイエット成功した、肌ツヤが良くなった、猫背改善した、など苦難を乗りこえた猛者たちのコメントは読みごたえ抜群だ。
理事長は「これって僕にちなんでるのかな」と疑問をていしてきたが、
「一応、理事長の私物が主役ですし。あと、生徒たちと絡めるようになりませんでしたか」
「みんな挨拶はしてくれるけど、話かけようとすると蜘蛛の子散らすみたいになるよ」
「……恥ずかしがり屋が多いのかもですね」
「そっか、残念。でもまあ、生徒諸君の元気な姿が見られるから僕は楽しいよ。ありがとね、しおちゃん。みんなにもお礼言っといて」
なにはともあれ満足してくれたようだ、良しとしよう。
「中垣さん、呼ばれてるよ」
クラスの子が教えてくれる。ここ最近で昼休みに私を呼びだすのは一人しかいない。
「好評のようだな」
「ありがとう。お陰さまで」
非常階段から見える空は重苦しい灰色でも、心は晴ればれ。だから、
「あれは鏡をみることで己の現状を意識するようになり一定の効果がでたというのが真相だろう。美容運うんぬんと表現するのは適切じゃない」
といった身も蓋もない批判をされても、
「そうかもしれないね。でも、みんなにとっていい結果につながったのなら嬉しく思うよ」
と爽やかに返すことができるのだ。
鬼塚くんはなにか言いたげな様子だったけど、また泣かれたらたまらないとでも思ったのか中止の要求などせず、「異変があれば随時報告してくれ」だけ告げて戻った。
褒めてもらいたいとか賛同されたいとか、そんな気持ちはない。私たちのしていることをどう受けとめるかは、人それぞれ。なのに、どうしてモヤついてしまうんだろう。さっきまで、なんともなかったのに。
消化できない塊が、みぞおちあたりでうごめく。それでも、あと三個。進めていくしかない。
スマホから目を離さずに響子が言う。画面で動く自分を横目、思わず笑みがこぼれる。
「そこはどうにもならなかったんだよね。場所が場所だし、相手も相手だし」
「ま、ゲーム性はあるよね。どんだけ上手くあしらえるか」
「関わってもいいんだけど」
「やだよ、ウザそう」
今回の七不思議〈理事長室の横にある鏡に全身をうつして自撮りすると美容運アップ〉をおこなう際、もれなく理事長が話しかけてくる。一度捕まると解放してもらえないので、参加する人は前回までに比べて少ない。
好調な再生回数に反して、コメント数は低調。だが、ダイエット成功した、肌ツヤが良くなった、猫背改善した、など苦難を乗りこえた猛者たちのコメントは読みごたえ抜群だ。
理事長は「これって僕にちなんでるのかな」と疑問をていしてきたが、
「一応、理事長の私物が主役ですし。あと、生徒たちと絡めるようになりませんでしたか」
「みんな挨拶はしてくれるけど、話かけようとすると蜘蛛の子散らすみたいになるよ」
「……恥ずかしがり屋が多いのかもですね」
「そっか、残念。でもまあ、生徒諸君の元気な姿が見られるから僕は楽しいよ。ありがとね、しおちゃん。みんなにもお礼言っといて」
なにはともあれ満足してくれたようだ、良しとしよう。
「中垣さん、呼ばれてるよ」
クラスの子が教えてくれる。ここ最近で昼休みに私を呼びだすのは一人しかいない。
「好評のようだな」
「ありがとう。お陰さまで」
非常階段から見える空は重苦しい灰色でも、心は晴ればれ。だから、
「あれは鏡をみることで己の現状を意識するようになり一定の効果がでたというのが真相だろう。美容運うんぬんと表現するのは適切じゃない」
といった身も蓋もない批判をされても、
「そうかもしれないね。でも、みんなにとっていい結果につながったのなら嬉しく思うよ」
と爽やかに返すことができるのだ。
鬼塚くんはなにか言いたげな様子だったけど、また泣かれたらたまらないとでも思ったのか中止の要求などせず、「異変があれば随時報告してくれ」だけ告げて戻った。
褒めてもらいたいとか賛同されたいとか、そんな気持ちはない。私たちのしていることをどう受けとめるかは、人それぞれ。なのに、どうしてモヤついてしまうんだろう。さっきまで、なんともなかったのに。
消化できない塊が、みぞおちあたりでうごめく。それでも、あと三個。進めていくしかない。
0
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
三十六日間の忘れ物
香澄 翔
ライト文芸
三月六日。その日、僕は事故にあった――らしい。
そして三十六日間の記憶をなくしてしまった。
なくしてしまった記憶に、でも日常の記憶なんて少しくらい失っても何もないと思っていた。
記憶を失ったまま幼なじみの美優に告白され、僕は彼女に「はい」と答えた。
楽しい恋人関係が始まったそのとき。
僕は失った記憶の中で出会った少女のことを思いだす――
そして僕はその子に恋をしていたと……
友希が出会った少女は今どこにいるのか。どうして友希は事故にあったのか。そもそも起きた事故とは何だったのか。
この作品は少しだけ不思議な一人の少年の切ない恋の物語です。
イラストはいもねこ様よりいただきました。ありがとうございます!
第5回ライト文芸大賞で奨励賞をいただきました。
応援してくださった皆様、そして選考してくださった編集部の方々、本当にありがとうございました。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…
しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。
高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。
数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。
そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…
ちょっと大人な物語はこちらです
神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な短編物語集です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
俺様上司に今宵も激しく求められる。
美凪ましろ
恋愛
鉄面皮。無表情。一ミリも笑わない男。
蒔田一臣、あたしのひとつうえの上司。
ことあるごとに厳しくあたしを指導する、目の上のたんこぶみたいな男――だったはずが。
「おまえの顔、えっろい」
神様仏様どうしてあたしはこの男に今宵も激しく愛しこまれているのでしょう。
――2000年代初頭、IT系企業で懸命に働く新卒女子×厳しめの俺様男子との恋物語。
**2026.01.02start~2026.01.17end**
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる