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第四の不思議
強メンタル一族
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「いろいろ考えてみたんだよね。たとえば〈理事長と仲よくなったらいいことある〉とか〈一週間くらい理事長に挨拶したらいいことある〉とか。あとは……あっ! この容姿を活かす七不思議とかどうだろね。僕、けっこう美形でしょ?」
天をあおぎ、勝手なことばかり並べたてる。さっきから真顔でなにを言ってるんだろう、この人は。
「整っているほうかもしれないですが」
中身はけっこう残念ですよ、と続けたい衝動を抑えこめたのは、私の気持ちをみんなが代弁してくれたから。
「中垣さん、いつもこんなの相手にしてたんですか」
辟易する福谷さんの隣、志倉くんも渋面。
「今まで押しつけて本当にすまなかった」
義井くんは「今度から僕も同行しようか」と気づかってくれる。
「わお、みんな遠慮ないね」
言いながらも理事長は喜色満面、全員分の紅茶をいれる。ベルガモットの香りがリラックス効果。今日のおやつ、パウンドケーキにもあいそうだ。
七不思議のよい案が浮かばず、さしいれの受けとりついでに本人をまじえて会議しようということになった。
理事長室に押しかけてみると、暇を持てあましていたらしく大歓迎。数々の無礼すらものともしない。
夏木くんからの「言われなれてるから平気だろ」という辛辣な相槌にさえも、
「うん。実際そのとおりだしね。いいの、これも僕の個性!」
強がりじゃなくそう言えるのは、あっぱれだ。
「この際〈理事長を見たら三歩さがる〉とかでいいんじゃねえの」
「えー、もっと縁起よさげなのがいいんだけど」
「じゃあ、理事長見て三歩さがったら開運する、で」
「我が甥っ子、僕に冷たい。反抗期?」
「まじで面倒くせえ」
身内同士のいざこざが展開されているあいだ室内を見る。理事長そのものを七不思議にからめるのが難しいならと探してはみるものの、落ちついた応接室といった感じで特徴もない。ほかになにか、と忙しく目を動かし、思いだす。
「そういえば理事長室の横、鏡ありましたよね」
部屋の外の壁には、木製フレームに細やかな意匠のほどこされた、大きな姿見が設置されていた。
「いいでしょ。僕の私物。特注品だよ。理事長たるもの常日頃から、ぴしっとキメないとね」
たしかに理事長は、季節によって素材やデザインはさまざまながら、いつ見てもきちんとした身なりで姿勢もいい。喋るほどに損するタイプだ。
視線を戻すと、向かいに座る夏木くんの瞳がきらめくのがわかった。次の七不思議が決定したのを確信した瞬間だった。
天をあおぎ、勝手なことばかり並べたてる。さっきから真顔でなにを言ってるんだろう、この人は。
「整っているほうかもしれないですが」
中身はけっこう残念ですよ、と続けたい衝動を抑えこめたのは、私の気持ちをみんなが代弁してくれたから。
「中垣さん、いつもこんなの相手にしてたんですか」
辟易する福谷さんの隣、志倉くんも渋面。
「今まで押しつけて本当にすまなかった」
義井くんは「今度から僕も同行しようか」と気づかってくれる。
「わお、みんな遠慮ないね」
言いながらも理事長は喜色満面、全員分の紅茶をいれる。ベルガモットの香りがリラックス効果。今日のおやつ、パウンドケーキにもあいそうだ。
七不思議のよい案が浮かばず、さしいれの受けとりついでに本人をまじえて会議しようということになった。
理事長室に押しかけてみると、暇を持てあましていたらしく大歓迎。数々の無礼すらものともしない。
夏木くんからの「言われなれてるから平気だろ」という辛辣な相槌にさえも、
「うん。実際そのとおりだしね。いいの、これも僕の個性!」
強がりじゃなくそう言えるのは、あっぱれだ。
「この際〈理事長を見たら三歩さがる〉とかでいいんじゃねえの」
「えー、もっと縁起よさげなのがいいんだけど」
「じゃあ、理事長見て三歩さがったら開運する、で」
「我が甥っ子、僕に冷たい。反抗期?」
「まじで面倒くせえ」
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「そういえば理事長室の横、鏡ありましたよね」
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「いいでしょ。僕の私物。特注品だよ。理事長たるもの常日頃から、ぴしっとキメないとね」
たしかに理事長は、季節によって素材やデザインはさまざまながら、いつ見てもきちんとした身なりで姿勢もいい。喋るほどに損するタイプだ。
視線を戻すと、向かいに座る夏木くんの瞳がきらめくのがわかった。次の七不思議が決定したのを確信した瞬間だった。
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