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第六の不思議
妙なところで
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「ま、いいや。そういうことにしといたげる」
木島さんが答える。顔が見えないせいもあって、どんな感情で言っているのか判別できないけど、どこか棘がある。志倉くんも感じとったみたいだ。
「ひっかかる言い方だな」
「そう? とくに意味はないけど。そっちこそ、やけに突っかかるね。恩を仇で返さないでよ。誰のおかげで動画編集できてるの」
一瞬、会話がとぎれる。遠くグラウンドから運動部の音。かすかに吹奏楽部のメロディーが重なる。
「感謝はしている」
志倉くんが、うめくように返した。
「だったら、中垣さんのこと説得してよ。絶対お互いのためになるって」
「だから何度も言っているだろう。無理じいをするな。そういう強引なところが」
「はいはい、そういうとこが嫌いだから別れたってことね」
うん? 別れた? もしかして、この二人つきあってたの? これは修羅場なの?
よし、なにも見なかったことにしよう。早くここから離れてしまおう。そう思って、ふり向いて、わあっと悲鳴がでてしまった。
「誰!」と木島さんの声。足音。やばい、逃げないと。でも、これは……。
「なにをやっているんだ、こんなところで」
背後では志倉くんが、あきれたようにため息。正面には、私とぶつかって倒れこんだ義井くんと、福谷さん、夏木くん。はからずも全員集合。気まずいなんてもんじゃない。
「た、たまたま通りかかっただけで」
きかれてもいないのに言い訳をするから、よけいに変な空気になる。
「大丈夫。たいした話してないから。じゃあ中垣さん、例の件よろしくね」
これでもかというほどの笑顔で、木島さんが去っていく。
「だからもう断っただろ! おい! 聞いているのか!」
完全無視された志倉くんが、もう一度ため息。私たちに向きなおした。
「さて、どういうことだか説明してもらおうか」
一同、顔を見あわせる。義井くんが代表して事情を話す。
「僕ら、七不思議の一時休止の報告をした理事長室の帰りで。偶然、中垣さんを見かけて声かけようとしたら、かけづらい状況になったというか」
「そうです、不可抗力です」
と福谷さんが割ってはいる。
「ところで、木島さんは元カノさんですか。いろいろ聞きたいです」
「だめだよ、そんな下世話な」
「義井くんは気にならないですか」
「そりゃまあ、ならないこともないけども」
「動画編集がどうこうって聞こえました。もしや七不思議の、木島さんがやってたんですか?」
誤解をときたい、と志倉くんが言った。
木島さんが答える。顔が見えないせいもあって、どんな感情で言っているのか判別できないけど、どこか棘がある。志倉くんも感じとったみたいだ。
「ひっかかる言い方だな」
「そう? とくに意味はないけど。そっちこそ、やけに突っかかるね。恩を仇で返さないでよ。誰のおかげで動画編集できてるの」
一瞬、会話がとぎれる。遠くグラウンドから運動部の音。かすかに吹奏楽部のメロディーが重なる。
「感謝はしている」
志倉くんが、うめくように返した。
「だったら、中垣さんのこと説得してよ。絶対お互いのためになるって」
「だから何度も言っているだろう。無理じいをするな。そういう強引なところが」
「はいはい、そういうとこが嫌いだから別れたってことね」
うん? 別れた? もしかして、この二人つきあってたの? これは修羅場なの?
よし、なにも見なかったことにしよう。早くここから離れてしまおう。そう思って、ふり向いて、わあっと悲鳴がでてしまった。
「誰!」と木島さんの声。足音。やばい、逃げないと。でも、これは……。
「なにをやっているんだ、こんなところで」
背後では志倉くんが、あきれたようにため息。正面には、私とぶつかって倒れこんだ義井くんと、福谷さん、夏木くん。はからずも全員集合。気まずいなんてもんじゃない。
「た、たまたま通りかかっただけで」
きかれてもいないのに言い訳をするから、よけいに変な空気になる。
「大丈夫。たいした話してないから。じゃあ中垣さん、例の件よろしくね」
これでもかというほどの笑顔で、木島さんが去っていく。
「だからもう断っただろ! おい! 聞いているのか!」
完全無視された志倉くんが、もう一度ため息。私たちに向きなおした。
「さて、どういうことだか説明してもらおうか」
一同、顔を見あわせる。義井くんが代表して事情を話す。
「僕ら、七不思議の一時休止の報告をした理事長室の帰りで。偶然、中垣さんを見かけて声かけようとしたら、かけづらい状況になったというか」
「そうです、不可抗力です」
と福谷さんが割ってはいる。
「ところで、木島さんは元カノさんですか。いろいろ聞きたいです」
「だめだよ、そんな下世話な」
「義井くんは気にならないですか」
「そりゃまあ、ならないこともないけども」
「動画編集がどうこうって聞こえました。もしや七不思議の、木島さんがやってたんですか?」
誤解をときたい、と志倉くんが言った。
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