七不思議をつくろう

真山マロウ

文字の大きさ
上 下
60 / 65
第六の不思議

あとひとつ

しおりを挟む
「今回は、ちょっとグラついた」
「参加してくれていいんだよ」
「そこまで勉強熱心じゃないんだな。うちの親も成績、無関心だし」
 そう笑って、響子がコメント欄を読みあげる。

「えーと……『英語の成績あがった』『歴史小説にハマって日本史に興味でた』『出会いがありました。恋の勉強頑張ります』って最後のなに。のろけかね」

 第六の不思議は〈図書室で借りた本を丁寧にとり扱って返却したら勉強運アップ〉で、山本さんとコラボ。夏木くんのクラスの図書委員が、彼女と同じ悩みを友人に相談していたのを覚えていて、それで思いついたそうだ。

 まったく興味のないものを借りることは少なく、借りたからには読んでみようとなるのが人情だったようで、自然と知識が身につくというのが真相だろうとは思うけど。

「なんにしろ、いい方向に転んだんなら良かったよ」
 それに尽きる、と満足していたら、ひさびさに鬼塚くんからの呼びだし。またインチキ臭いと怒られるのかな。

「まったく懲りないな」
 先制攻撃をくらうけど、以前ほどの迫力はない。図書委員会としてもメリットがあったから、おおめに見てくれているのかも。

「ところで、木島と揉めていると聞いたが」
「大丈夫だよ。それも独自の情報網? すごいね、生徒会。なんでそこまで生徒のために尽くすの」
「生徒のために動くのが生徒会だ」
「でも、生徒会のメンバーも生徒でしょ。自分たちのことも大切にしたほうがいいよ」

 あてつけじゃなく思った。とくに鬼塚くんは生徒第一みたいなところがある。

「問題ない。それよりも七不思議、あと一つだろう。ここまできたら俺たちも、できるかぎり協力しよう」

 クエスチョンマークが頭を埋めつくす。

「応援してくれるってこと?」
「止めたところで、やめないんだろう。だったら最後まで思いきり、やりきれ」

 トラブルの対処は任せろとまで言ってくれた。敵だと思っていたら味方だった。胸に溢れたのは罪悪感より、言葉にならない熱さ。
 鬼塚くんは、やっぱり生徒第一だ。

 放課後、図書室に寄る。何度もお礼を言ってくれた山本さんは「絶対、秘密守ります」とゴスロリの正体を他言しないと約束してくれた。

 今度こそ信じたい。決意あらたに廊下をすすむ。と、木島さんと遭遇。待ちぶせされていたっぽい。

「今回も好評みたいだね」
「……どうも」
「次がラストだよね。頑張って」

 笑顔が怖い。敵か味方かわからない。それでも、あと一個。なんとしても、やり遂げてみせる。
しおりを挟む

処理中です...