七不思議をつくろう

真山マロウ

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第七の不思議

よかれと思って

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 時として現実は予想をはるかに超える。つくづくそう思った。

「喧嘩だ!」
 誰かの声がして、昼休みのまったりタイムが一気にふっとんだ。廊下が騒がしい。

「だってさ」と、響子がスマホで情報チェック。
「やばいね。栞里は行ったほうがよさそう」

 二人して教室をでる。近づくにつれ、聞き覚えのある声が届く。
「やりくちが卑怯なんですよ!」
「こっちは親切心で言ってあげたんでしょ!」

 やじ馬をかき分ける。福谷さんと香西さんがバトル真っ只中。両者、掴みかからんばかりだ。

「なんの騒ぎだ!」
 そこに目の覚めるような一喝。鬼塚くんの登場だ。こういうとき誰より頼もしい。

「事情を聞かせてもらおうか」
 渦中の二人を連行しようとしているところ、咄嗟に福谷さんの腕をつかむ。
「こっちで聞いておくから」
「任せた」の一言が返ってくる。信用してくれたのが、ただ嬉しかった。

 福谷さんは、興奮さめやらないながらも話してくれた。

「ゴスロリ、了承なくても記事にさせるって言いだしやがったんです、木島さんが困ってるから。でも、それじゃあ中垣さんはどうなるっていうんですか!」

 つまり香西さんは木島さんのため、福谷さんは私のために喧嘩になったのだ。

「ごめんね、巻きこんで」
「謝らないでください。私が我慢できなかっただけです」
「でも、手をだすのは我慢してくれたよね。ありがとう」
「お礼も結構ですよ。なんたって約束ですから」

 福谷さんは、さも当然といわんばかりに笑った。だからまだ私は、人間ごと嫌いにならずにすむ。

 放課後、鬼塚くんに報告にいく。香西さんの言い分は福谷さんと合致。良くも悪くも裏表がない人なんだろう。

「香西には言いきかせておいた。友人のためとはいえ褒められたことじゃないからな。新聞部の動向は生徒会としても注視しておく」
「ありがとう、助かるよ。あの、余計なお世話だろうけど……昔、夏木くんとなんかあった?」

 友人のため、と言ったときの鬼塚くんの声の響きが、いつもと違ったように感じた。ただ、その程度のことだったけれど。

「あいつが、なにか言っていたのか」
「私が勝手に、そうなのかなと思っただけで……」

 過去最高に気まずい空気。最悪だ、やらかした。言わなきゃよかった。

「俺が夏木を傷つけたことがある。それだけだ」
 常に無表情だった鬼塚くんの頬が、ぴくりと動く。

 不用意に踏みこんでしまったことを悔いた。私は私を信用してくれた人を、軽薄な好奇心で傷つけてしまった。
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